ヨーロッパにおいて3万ユーロ(約400万円)以下で人気のコンパクトモデルはこれだ。実用性と快適性を兼ね備えたコンパクトクラス。3万ユーロ(約400万円)以下の代表的な5台を紹介する。
日常生活の必需品コンパクトクラス
2人以上の乗員と毎週の買い物に十分なスペースを提供し、同時に街中でも駐車可能なクルマ、それがコンパクトクラスだ。また、燃料をあまり消費せず、いくつかのアメニティを搭載していることもありがたい。このクラスでは代表的な5ドアモデルのほか、ステーションワゴンも人気がある。その一方で、セダンモデルはやや苦戦を強いられている。
1)アウディA3: 外見はスポーティ、中身は快適
アウディのコンパクトモデル「A3」は、外見はスポーティで、5ドアのスポーツバックとして、室内は十分な広さと快適さを備えている。だが、シートヒーターや実用的な分割式リアシート(40:20:40の比率)は、追加料金が必要だ。
追加料金を払う価値があるのは、4ウェイ ランバーサポート(270ユーロ=約3万6千円)だ。デジタルメーターと10.1インチのセンターディスプレイは標準装備されている。インフォテインメントは、明快な構成と考え抜かれたメニューナビゲーションで好感が持てる。アシスタンスシステムは、模範的な緊急ブレーキ、回避走行、車線逸脱警報などのエレクトロニクスデバイスを標準装備している。
2)快適性とハイテクを備えたメルセデスAクラス
全長4.53mのメルセデス最小のクルマは、快適性、ハイテク機能、包括的なアシスタンスシステムなど、メルセデスの通常の美点を印象づけることを目的としている。28,394ユーロ(約378万円)のベーシックな「Aクラス」では、デジタルメーターと同レベルのタッチディスプレイは7インチと小さいため印象が薄いが、バックグラウンドでMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエキスペリエンス)システムというソフトウェアが働いている。これには常に音声コントロールと、手書き入力も可能なタッチパッドが付属している。
また、マルチファンクションスポーツステアリングホイール、コンフォートサスペンション、クルーズコントロールなどのアメニティも標準装備されている。残念ながら、標準装備はスチール製ホイールとハロゲンヘッドライトのみで、LEDヘッドライトは988ユーロ(約13万円)の追加料金が発生する。
3)VWゴルフ: かってないほどのデジタル化
「ゴルフ」は事実上、コンパクトセグメントの代名詞となっている。現在販売中の8代目で、VWはそのベストセラーをこれまで以上にデジタル化した。できるだけボタンを少なくすることがモットーで、音量や空調もタッチや音声で調整できるようになっている。もちろん、デジタルコックピットも標準装備されていることは言うまでもない。
3万ユーロ(約400万円)を切る価格で提供されるのはエントリーモデルの「Life」のみだが、LEDヘッドライト、電子式ディファレンシャルロック、非常に快適なコンフォートシート、フロント&リアパーキングセンサーがすでに装備されている。ゴルフのベース価格は28,500ユーロ(約379万円)で、現状ではプレミアムメーカーと肩を並べるレベルだ。少なくとも、1.5TSIエンジンからは130馬力を得ることができる。よりパワフルな150馬力のガソリンエンジンや、DSGを希望する場合は110馬力のマイルドハイブリッドでも400万円を上回ってしまう。
4)オペル アストラ: 新型はまだヒナギクのように新鮮だ
「アストラ」は事実上、このセグメントのベテランの一台である。先代の「カデット」を含めると、すでに11代目となる。しかも、2022年1月に市場投入を迎えたばかりの新鮮さだ。角張った新しい外観に加え、インテリアにも驚かされる。コックピットはエレガントでモダンな印象だ。スピードメーターとインフォテインメントのディスプレイは、他の多くの競合モデルと異なり、常に10インチだ。
LEDヘッドライトも常時搭載し、自動ハザードブレーキ、眠気覚まし、交通標識認識機能を備えた前面衝突警報システムも搭載している。ベース価格: 22,465ユーロ(約298万円)。最上位の「アルティメット」を除けば、他のバリエーションはすべて3万ユーロ(約400万円)価格限界の範囲内だ。内燃機関は、130馬力のディーゼルエンジンと110馬力または130馬力のガソリンエンジンが定番だ。プラグインハイブリッド(180馬力、35,800ユーロ=約476万円から)も、エコリベート(環境助成金)を差し引けば400万円以下という今回の設定をしたまわる。
5)プジョー308: インテリアに3つのスクリーンを設置
「アストラ」のプラットフォームのフランスの兄弟モデルは、リュッセルスハイムの同僚と、とりわけエンジンや2つの標準的な10インチディスプレイを共有している。しかし、ビジュアル面では、内外に共通点がない。「308」はもちろん、獰猛な顔つきの牙のデイタイムランニングライトとLEDヘッドライトを標準装備した、現行のプジョーデザインを採用している。
内部では、中央の画面の下に3つ目のディスプレイが追加されている。デジタルホームボタンとフリーアサイン可能な5つのタッチサーフェスを搭載している。しかし、ボリュームやクライメートコントロールのボタンは残っている。最低でも24,950ユーロ(約332万円)と、フランス車は少し高めの価格設定になっている。したがって、予算内に収まるのは、最も低いトリムレベルのアクティブパックとアリュールの2種類だけだ。基本的な装備は「アストラ」とほぼ同じだが、「308」には必ずアルミホイールが装着され、オートエアコンも2ゾーンの機能が標準化されている。
なんだかんだ言ってもヨーロッパで人気なのは、相変わらずこのセグメントの自動車なのかな、と感じた5台のモデルたちの紹介記事である。なぜかBMW 1シリーズがないことと、せっかくなのでマツダ3も仲間に入れてほしかったよう気もすることと、5台の紹介記事だけで、いつものような順位が記されていないことが残念である。
そこで個人的に、自分ならどれを400万円で選ぶかを考えてみたのだが、この5台の中からならば・・・、「フォルクスワーゲン ゴルフ」か「プジョー308」のどちらか、を選ぶことになると思う。
「フォルクスワーゲン ゴルフ」を選ぶということはなんともつまらないというか、いつもの定食屋で、相変わらずいつものメニューを選ぶようでなんとも面白みはないが、おそらく間違いがないことと、長く付き合えそうなのが「ゴルフ」だし、実用車という観点からならば、一番でしゃばらない「ゴルフ」のような存在が大切なのではないだろうか。
一方で、「プジョー308」は大変気になるし、やはり自動車の「華」という部分では、「フォルクスワーゲンゴルフ」よりもずっと魅了的ではあるが、あの特徴的なコックピットは好き嫌いがわかれるだろう(私自身は、まったく問題なく受け入れるけれど)。
今回、実は「オペル アストラ」も大変気になってはいるのだが、まだ日本市場には正式導入されていないので、ちょっと評価を保留とした。写真を見ただけでもスタイリッシュで作りもよさそうなことがわかるし、日本導入の際にはぜひいち早く乗ってみたいものである。
Text: Katharina Berndt
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de