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令和の「魅力的なワゴン」は欧州にあり!! 超熟成文化の実力発揮 ゴルフヴァリアント&メガーヌワゴン試乗

 「栄枯盛衰」隆盛と衰退が交互にめまぐるしく訪れるさまを表す言葉だが、クルマでも人気隆盛となるボディタイプがあれば、人気が下降するボディタイプもある。

 現在、国産問わず輸入車でもSUVが人気である一方で、国産車ではステーションワゴンが人気薄となっている。現在、国産車ではコンパクトサイズではホンダシャトル。ミドルサイズではトヨタカローラツーリング、スバルレヴォーグ。ラージサイズではマツダ6ワゴンのわずか4車種に留まっている。

 その一方で、輸入車では様々なブランドからステーションワゴンが販売され、一向に人気は衰えてはいない。そうつまり、国産ステーションワゴンだけがひとり負け状態となっているのだ。

 そこで今回は輸入車のステーションワゴンの中から、2021年に登場した注目度の高いVWゴルフヴァリアントとルノーメガーヌスポーツツアラーに試乗できたので、ステーションワゴンの魅力の再確認しつつ、徹底比較してみたい。

文、写真/萩原文博

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300万円台で欧州ステーションワゴンの広大な荷室と高い走行性能が手に入る

ゴルフヴァリアントの走行シーン

 2021年7月に導入されたVWゴルフヴァリアントの新車価格は305万6000円~389万5000円。2021年8月に日本市場に導入されたルノーメガーヌスポーツツアラーインテンスの新車価格は330万円だ。

 同じボディサイズの国産ステーションワゴンと価格を比べてみると、カローラツーリングの新車価格は201万3000円~299万7500円。スバルレヴォーグは310万2000円~477万4000円。

 カローラツーリングは若干安めだが、レヴォーグはアイサイトXを装着しないGT-Hがほぼ同じ価格帯となっている。つまりミドルサイズステーションワゴンで言うと、国産車より輸入車が高いという一般常識は通用しないのだ。これが、国産ステーションワゴンの衰退の要因の一つと言えるだろう。

 それでは、VWゴルフヴァリアントから紹介しよう。第8世代のゴルフをベースとしたゴルフヴァリアントのボディサイズは、全長4,640mm×全幅1,790mm×全高1,485mmとなっている。先代モデルと比べると、全長は65mm拡大しているが、全幅は10mm小さくなっているのが特徴だ。

 ステーションワゴン最大のセールスポイントとなるラゲッジスペースは、5人乗車時の容量は611L(先代より6L増加)。リアシートをすべて折り畳むと最大で1,642Lまで拡大する。ラゲッジコンパートメントには実用的なバッグ用フック、固定用リング、証明などが装備されており、広さだけでなく利便性も高いのが特徴だ。

 新型ゴルフヴァリアントのポイントは電動化とデジタル化。まず電動化だが、搭載するパワートレインにマイルドハイブリッドシステムを採用。eTSIアクティブベーシックとアクティブには、最高出力110ps、最大トルク200Nmを発生する1L直列3気筒ターボエンジンを搭載。

 また、eTSIスタイルとeTSI R-ラインには最高出力150ps、最大トルク250Nmを発生する1.5L直列4気筒ターボエンジンを搭載。この両エンジンには48Vベルト駆動式スタータージェネレーター、48Vリチウムイオンバッテリーを組み合わせたマイルドハイブリッドシステムを採用。

 強力なブレーキ回生機能に加えて、さらに燃料性能を向上させるためエンジンを完全に停止した状態で、エコ・コースティングすることも可能だ。また、eTSIモデルは電動ブースト機能の効果で、非常に優れた発進性能を実現している。

 燃費性能はWLTCモードで、1Lエンジンは18.0km/L、1.5Lエンジンが17.0km/Lを実現している。組み合わされるトランスミッションは7速DSGで、駆動方式は2WD(FF)のみ。

 デジタル化では、現行型ゴルフヴァリアントはデジタルコクピットを標準装備。メーターパネルには10インチのディスプレイを採用したデジタルメータークラスター“デジタルコクピットプロ”を標準装備。

 さらに、10インチのタッチスクリーンを採用した通信モジュール内蔵のインフォテイメントシステム”Ready 2 Discover“を採用。また、ライトおよび視界関連の操作性も見直され、より直感的に操作できるように統合。DSGのシフトレバーは小型化され、クリーンにレイアウトされている。

 運転支援システムはさらに充実。同一 車線内全車速運転支援システム“トラベルアシストは、210km/hまでの速度で ドライバーをサポートし、特に長距離走行における快適性を高めている。また、LEDマトリックス ヘッドライト“IQ.LIGHT” が採用され、夜間の走行時に路面を明るく照らしてくれる。

 さすが、欧州Cセグエメントカテゴリーのベンチマークとなるゴルフをベースとしたモデルだけに、その進化の大きさには目を見張るものがある。

 続いてはルノーメガーヌスポーツツアラーインテンスだ。これまでルノーはADASと呼ばれる運転支援システムは正直物足りなかったが、新型となって一気に挽回してきた。

メガーヌはADASを大幅に進化させた

メガーヌスポーツツアラーのフロントスタイル

 メガーヌスポーツツアラーのボディサイズは全長4,635mm×全幅1,815mm×全高1,495mm。ゴルフヴァリアントと比べると全幅は20mm、全高は10mm大きくなっているが、全長は5mm小さくなっている。

 ラゲッジ容量は5人乗車時で580L。ラゲッジ両サイドのハンドルを引くと倒せる6:4分割可倒式リアシートを倒せば、最大で1,695Lまで拡大する。5人乗車時ではゴルフが勝ち、リアシートを倒した状態ではメガーヌスポーツツアラーが上回っている。

 搭載するパワートレインは、最高出力159ps、最大トルク270Nmを発生する1.3L直列4気筒ターボ+7速EDC。駆動方式は2WD(FF)のみ。燃費性能はWLTCモードで16.6km/Lとマイルドハイブリッドのゴルフに一歩譲る形だ。

 インテリアは7インチのデジタルインストルメントパネルを採用。さらに、ダッシュボード中央に配置される7インチ マルチメディア イージーリンクタッチスクリーンには、スマート フォンとのミラーリングを可能にするマルチメディアシステム「イージーリンク」を新たに採用し、操作系も より使い易く改良されている。

 また、運転モードやインテリア照明(アンビエントライト)などをカスタマイズできるルノー・マルチセンスも、 7インチ マルチメディア イージーリンクタッチスクリーンで操作可能だ。

 運転支援システムは先代モデルから大幅に進化。アダプティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付)をはじめ、アクティブエマージェンシーブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)歩行者検知機能付、ドライバー疲労検知アラートなどを新採用。合計10の機能を搭載している。

ゴルフとメガーヌともに高い走行性能を誇るが表現方法が異なる

メガーヌスポーツツアラーの走行シーン

 ボディサイズや利便性は非常に近いゴルフヴァリアントとメガーヌスポーツツアラーだが、試乗してみると、乗り味は大きく異なっている。試乗したのはゴルフヴァリアントが、新車価格が326万5000円のeTSIアクティブ。そして330万円のメガーヌスポーツツアラーインテンスだ。

 ゴルフヴァリアントはハッチバックと同時に試乗したのだが、ハッチバックのゴルフの全長は4,295mmでヴァリアントは4,640mmなので345mmも延長されている。しかしゴルフヴァリアントはその長さを感じさせないシャープなフットワークが特徴。

 乗っているとボディの長いステーションワゴンに乗っていることを忘れてしまうほどだ。これは、ステーションワゴンのウィークポイントとなりがちなリアハッチ周りの剛性がたかめられていることで、ねじりが生じない。ステアリングを切ってからのリアセクションの動きの遅れがないため、フラットな乗り味で非常にスポーティだ。

 一方のメガーヌスポーツツアラーは、リアセクションの長いステーションワゴンであることを意識させてくれる。コーナリングの際にステアリングを切ってからリアサスペンションがしっかりと仕事をして、適度なロール感を与えてくれる。
しかし、そのロール感により、FF車ながらリアタイヤの仕事をタイヤ、ステアリングを通じて、ドライバーとコミュニケーションが取れるので、乗り味はスポーティだし、非常に運転していて楽しい。

 さらにメガーヌスポーツツアラーのシートの座り心地そしてホールド感が抜群。フランス人は荷物を満載し、バカンスにロングドライブへ出掛けるというが、たしかにこのシートならば、ロングドライブでも疲れにくいと感じた。

 甲乙つけがたいゴルフヴァリアントとメガーヌスポーツツアラーの実力だが、一つ言えることはこれだけの利便性と走行性能を備えたステーションワゴンが300万円前半で購入できるのであれば、国産のステーションワゴンのセールスが苦戦することは納得できる。

 クルマは道路と文化によって作られるというが、ステーションワゴン文化が熟成した欧州車は優れた利便性とアプローチは異なっても優れた乗り味というポイントは外さないのだ。

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