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ブルームバーグが25日に配信した「日本電産 永守会長が関社長に失望感、車載事業で陣頭指揮-関係者」という見出しの記事が話題を呼んでいる。日本電産の創業者で会長の永守重信氏が、最高経営責任者(CEO)を譲った関潤氏に対して、業績悪化などにより失望感を強めているという内容だ。

関氏(左)の就任記者会見に同席した永守氏(右)=写真:東洋経済/アフロ

日本電産は、あのカルロス・ゴーン氏に鍛えられ、最終的には日産のナンバー3である副最高執行責任者(COO)にまでなった関氏を昨年4月に社長に任命、6月にはCEOに昇格させていた。ブルームバーグによると、永守氏は「経営力の低い人物(編集部注:関氏)をトップに据えたのは自分の判断ミスだった」との見解を示しているという。

日本電産の後継者問題は、ここ数年、混迷の度合いを深めている印象だ。関氏の前に社長だった日産出身の吉本浩之氏は2018年6月に社長に就任したが、2020年4月に副社長に降格。昨年5月には退社している。

ただ、カリスマ経営者の後継者問題は、日本電産だけの問題ではない。バブル崩壊後の日本経済を引っ張ってきたカリスマ創業者たちは軒並み、後継者問題に頭を悩ませている。

孫正義氏も柳井正氏も苦悩

たとえば、ソフトバンクグループ。孫正義社長は2014年に165億円という巨額報酬で、グーグルの幹部だったニケシュ・アローラ氏を次期社長としてヘッドハンティング。しかし、わずか2年後にアローラ氏は退任している。

孫正義氏(写真:つのだよしお/アフロ)

株主総会で孫氏は「ニケシュが一番の被害者。(自分が)もうちょっと社長を続けていたいという欲が出てきた」と発言し、円満退社だったことを強調。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルが2018年3月に「アローラ氏解任要求の首謀者は誰だ ソフトバンクが調査開始」と報じるなど、アローラ氏の退任の経緯については、いまだにさまざまな憶測が飛び交っている。

ユニクロのファーストリテイリングは20年以上にわたって、次期トップを探し続けている状態だ。2002年に日本IBM出身の玉塚元一氏に社長を任せたものの、2005年に創業者の柳井正氏が社長に復帰。玉塚氏は社長退任後、退社した(現在はロッテホールディングス社長)。その後も柳井氏は「65歳で引退する」「70歳で引退する」と節目ごとに引退宣言をしているが、いずれも後継者が育っていないことを理由に撤回している。

柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長(写真:AFP/アフロ)

永守氏の眼鏡に叶う人は?

アメリカでは、アマゾンアップルマイクロソフトなどの巨大企業のトップは次々と交代している。トップの交代前と交代後の時価総額を比べてみると、いずれも成功していると言っていいだろう。こうしたスムーズなトップの交代は、日本ではまだ難しいようだ。

日本電産YouTubeより

永守氏は過去、日本経済新聞のインタビューに応じ、経営者の条件を「実績重視、リスクを取る人」としたうえで、「経営という仕事が天職であり、かつエンジョイしている。そういう人がやるべき仕事だ」と発言している。日本電産は、国内外のグループ幹部向けにリーダー養成機関を作っており、永守氏もゆくゆくは経営者を社内で育てていきたいとの意向を過去に示していた。

ただ、永守氏が指摘したようなマインドを持った人は日本電産のような大企業に就職するのではなく、自分で事業を起こすと思うのだが、どうなのだろうか。

また、今回のような報道が出てきた背景には社内の複雑な事情があるやも知れず、いまの段階で断定的に論じるのは時期尚早だろう。

いずれにせよ、関氏の処遇はどうなるのか、そして、永守氏のお眼鏡にかなうような後継者は出てくるのか。今後も注目していきたい。