田辺三菱製薬は24日、カナダの子会社メディカゴが開発した新型コロナウイルスワクチンが同国で初承認されたと発表した。植物を使って生産するウイルス様粒子(VLP)ワクチンとしても世界初。承認対象は18~64歳の初回免疫のみだが、高齢者の適応追加や3回目接種、小児向けも開発する。日本では夏に申請予定。田辺三菱による買収から約9年を経て、植物由来ワクチンがようやく実用化にこぎ着けた。
試験結果を段階的に提出していくローリング申請を昨年12月に完了し、約2カ月の審査を経て承認を獲得した。対象は18~64歳に対する初回免疫。21日間隔で2回、英グラクソ・スミスクライン(GSK)の免疫増強剤(アジュバント)と一緒に接種する。製品名は「COVIFENZ」。
臨床試験データを追加提出して65歳以上への適応拡大も申請する予定。3回目接種や小児対象の臨床試験も始める。メディカゴの担当者は現地の記者会見で、オミクロン株に特化したワクチン開発も検討する考えを明らかにしている。
カナダでは最大7600回分を供給する契約を政府と結んでいる。まず今年中に同2000万回分を供給予定だが、いつ、どのように使うかは政府の判断次第という。同国ではメディカゴ製以外に5種類のコロナワクチンが実用化され、国民の8割以上が2回接種を完了、4割以上は3回目も終えている。保健省の担当者はメディカゴ製ワクチンを海外供給に活用する考えも示している。
日本では今春の申請を目指していたが、国内臨床試験の症例登録が難航しており7~9月期になる見込み。米国や世界保健機関(WHO)などへの申請も準備中。
メディカゴが開発したのはウイルスの殻(外観)のみを再現したVLPを抗原にしたワクチン。たばこ属の葉にウイルスの遺伝子を組み込んで栽培し、成長した葉からワクチンの有効成分を抽出して作る。植物由来のVLPワクチンは世界初。約2万4000人が参加した臨床試験では、すべての変異株を対象にした発症予防効果の有効率が71%。デルタ株は75%、ガンマ株は89%。重篤な副反応はなかった。