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悲運の高級ミニバン ホンダエリシオンはいま復活すれば売れるのか? やっぱり無理か??

 ホンダのミニバンといえば、つい先日新型がお披露目されたステップワゴン、そして2021年末に惜しまれつつ生産終了となったオデッセイが有名だが、かつてはその上位に「エリシオン」というLサイズミニバンがラインアップされていた。

 トヨタアルファードや日産エルグランドと比べると、エリシオンの認知度はいまひとつ。2004年から販売されていたが、日本では2013年に一世代のみで生産終了となってしまった。悲運の名車、エリシオンの魅力について振り返っていこう。

文:吉川賢一
写真:HONDA

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2000年代の流行を抑えた、ホンダ流「走り」のミニバン

 3代目オデッセイをベースとして、両開きスライドドア8人乗りのLクラスミニバンとして誕生したエリシオン。サイズは、全長4845mm×全幅1830mm×全高1790mm、ホイールベースは2900 mm。2004年当時のアルファードやエルグランドといったライバルと、全長や全幅は同等レベルであったが、全高は、当時のホンダの「低重心パッケージ」によって、他のLサイズミニバンと比較すると、低めであった。

 昨今のミニバンのフロントフェイスと比べると、おとなしいフェイスではあるが、その分、すっきりしたフロント周りや鋭い眼差し、低く構えたエクステリアデザインは、エリシオンのスポーティでラグジュアリーな存在感を引き上げていた。

 当時は、背高なミニバンをエアロパーツで武装し、さらにはローダウンする文化が全盛期を迎えていたころ。そうした需要も考慮してか、2.4LのLXグレードを除いた他は、すべてAERO仕様となっていた。

全長4845mm×全幅1830mm×全高1790mm、ホイールベースは2900 mm。2004年当時のアルファードやエルグランドといったライバルと、全高は低いが、全長や全幅は同等レベルのLクラスミニバンであった

 2列目ベンチシートの8人乗りをメインとしていたが、メーカーオプションで2列目キャプテンシートの仕様もあった。オッデセイ(2830mm)よりも70mm長いホイールベースによって、3列目シートでもゆとりのある居住空間が確保されており、2列目/3列目は、6:4分割ができるチップアップ&スライドシートだ。ホンダお得意の低床プラットフォーム技術によって、フラットな室内フロアであり、シートアレンジ次第では、荷物もたくさん載せられるようになっていた。

 上級グレードには木目調フロントパネルや、センターコンソールのブルーイルミネーションなども採用、運転席・助手席・後席のそれぞれで温度設定ができるフルオートエアコンを装備し、収納も豊富で、利便性も十分だった。

8人乗り仕様の内装。3列目シートもサイズが大きくて居心地は快適だった。インテリアカラーはキャメル

優れた走行性能、V6エンジンには気筒休止システムも

 エンジンはV型6気筒3.0Lのi-VTEC(最高出力250ps、最大トルク309Nm)と、直列4気筒2.4Lのi-VTEC(160ps、218Nm)の2種類。トランスミッションは5速ATだ。前者は、同社のLクラスセダン「インスパイア」と共通であり、走行状況に応じて3気筒を休止させる「可変シリンダーシステム」まで装備していた。燃費はJC08モードで9.0km/L(2.4Lは9.9km/L)と、よくもないが悪くもないレベルであった。

 駆動方式はFFと4WDがあり、サスペンションは前後ダブルウィッシュボーンタイプ。215/60R17サイズのタイヤを装着していた。重心が低いことから、やはり走行性能は、ライバル達よりも優れていた。他のミニバンでは車酔いする人でもエリシオンでは酔いにくいという評判もあった。

人気低迷でフェイスを派手にするが、欲しかったのは「高い全高」

 価格は、V6の「VG AERO」が税込336万円~381万円、2.4Lの「G AERO」は291 万円~338万円、「LX」は297万円~338万円。人気ミニバンのオデッセイよりもボディが大きく、装備や内容も上級仕様となっており、ライバルのアルファードやエルグランドよりも走りはいい。しかし販売は、イマイチ伸びなかった。

 2006年12月の1度目のマイナーチェンジで、新グレードとなる「エリシオン プレステージ」を追加。従来モデルに対して、フロントバンパーの形状を改良し、フロント部のメッキを増やし、ヘッドランプとテールランプのデザイン変更、さらにはアウタードアハンドル部分にも加飾を追加するなど、一転して、ド派手な外装となった。エンジンにも、最高出力300psの新しい3.5L V6エンジンを採用と、スペック上は、ライバルと並んだ。

 しかし、1790mmというLクラスミニバンとしては低い全高のエリシオン。Lクラスミニバンを求めるお客様の重要視するのは「走りの良さ」よりも、「高い視点で運転する優越感」であることを見落としていたのは、痛いことであった。

標準のエリシオンと比べて、押し出しの強いフロントフェイスに変身した。写真は2010年11月登場の後期型プレステージ

「背高ミニバン」でナンバーワンの走りを目指すべきだった

 「走りへの強いこだわり」を打ち出したコンセプトは否定する人はいないだろう。だがそのために、Lクラスミニバンにお客様が求めるポイントを削ってしまったことは、非常にもったいないことだ。日産のエルグランドもそうだが、「技術原理主義」でつくられたため、お客様のニーズに応えきれていなかった。

 「走りのミニバン」を極めたいのならば、「背高ミニバン」でナンバーワンの走りを目指すのが、「技術=腕の見せ所」のはず。このエリシオンや日産エルグランドの失速が、いまのアルファード一強体制をつくっていることを考えると、常にお客様の方を向いてクルマをつくっているトヨタが強いのは当然のことだ、というのがよく分かる。

 エリシオンは、高級ミニバンの需要が高い中国では、いまも生き残っており、2016年には2代目へ以降、2021年12月にはマイナーチェンジも行っている。日本への導入はないだろうが、このマイナーチェンジを機に、中国でも圧倒的人気のアルファード/ヴェルファイアに、追いつかないまでも、一矢報いる結果を残すことができるよう、期待している。

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