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SUV人気の思わぬ余波!? 日本独自のタワー型機械式駐車場は消えていくのか!?

 世界的なSUVブームで、ミニバンなども人気となっている。しかし、ここで思わぬ余波を受けているのが、タワー型機械式駐車場だ。

 タワー型機械式駐車場は、狭い敷地でも多くのクルマを格納できるように開発されたもので、全高が1550mm以下でないと駐車できないというデメリットも持っている。

 日本に来た外国人観光客が、その物珍しさから写真に収める……なんてこのこともあるタワー型機械式駐車場だが、今その高さ制限や、重量制限がネックとなり、契約者が平置きの駐車場に流れ、空きが増えているという。

 今回は、タワー型機械式駐車場の現状と、今後の駐車場事情についてレポートしていきたい。

文/高根英幸
写真/TOYOTA、MAZDA、SUBARU、LEXUS、AdobeStock(トップ写真=xiaosan@AdobeStock)

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■狭い国土だからこそ生まれた発想 世界に誇るタワー型機械式駐車場とは

 日本の駐車場事情は先進国でもよろしくないほうだ。デフレとは言え、土地の価格は局所的に高騰しているし、そもそも国土が大きくない上に、生活できる平地が限られている。

 だから、生活には工夫が欠かせない。クルマの使い方にしてもそうだ。少ない土地面積でたくさんのクルマを止められるように考え出されたのが、タワー型機械式駐車場である。しかしながらこのタワー型駐車場、近年は減少傾向にあるらしい。

機械式駐車場の出荷台数(国土交通省 機械式立体駐車場のガイドラインより)

 遊休地などを活用するコインパーキングなどが台頭してきたこともあるが、台数ベースでの駐車場の数は増加傾向にある。地方都市では再開発にあまりコストがかからないコインパーキングが乱立しているところもあるようだ。

 少子高齢化で人口が減っていることから、クルマの利用も減少傾向にあることも理由のひとつだろう。

 タワー型にもいくつかの構造があり、一般的にイメージされるのは垂直循環式と呼ばれるもので、縦長の環状につながっているパレットが順繰りと入出庫口に現れる。

 出庫したいクルマの順番に収められている訳ではないため、クルマの出し入れに時間がかかるのがデメリットで、たくさんのクルマが入出庫する際には、待ち時間が問題となることもある。

機械式駐車場の種類(国土交通省 機械式立体駐車場のガイドラインより)

 ちなみに日本初(ということは世界初?)の垂直循環式のタワー型機械式駐車場は、昭和37年に東京の日本橋高島屋に建設されたもので、呉造船所(現在のIHI)が製造したそうだ。

 しかも昭和4年には大阪の角利吉という人物が、ほぼこの垂直循環式のタワー型駐車場に近い構造を考案して特許を出願していたらしい。

 昭和37年の時点でもタワー型駐車場が必要なほど駐車場不足ではなく、高級デパートの目新しさをアピールする設備として導入されたのだから、角利吉の発明は早過ぎたとも言えそうだ。

 なお地下駐車場は立体駐車場よりも登場はずっと早く、昭和26年に東京の中央郵便局隣に旧東京ビルヂングに組み込まれていたらしい。

 そして現在の駐車場は自走式(ドライバーが運転して駐車スペースに停める)駐車場が主流であり、2000年あたりからはタワー型でも垂直循環式ではなくエレベーター式が多くを占めているようだ。

 エレベーター式はクルマを載せるパレットを棚状に置いて、指定のパレットを入出庫口まで運ぶ方式で、制御は複雑で敷地面積も垂直循環式より必要になるがエネルギーコストが少なく、収納台数が増えても入出庫に要する時間が増えにくいというメリットがある。

 それでもタワー型機械式駐車場は再開発によって取り壊され、新たな設置数も減少傾向にある。それはクルマの仕様の変化が大いに関係しているのだ。

■3ナンバー比率増大、ミニバン&SUVなど大型化も原因

 3ナンバーの普通車の比率が増えてクルマが全体的に大型化されていることに加え、ミニバンやSUVのブームもあって全高が高いクルマが増えており、車重も増加傾向にある。

 これはすべての機械式駐車場に当てはまることだが設備の関係上、車両寸法や重量に制約を受けるため、クルマのサイズアップにより駐車不可となるケースが出てくるのだ。これは効率を考えた機械式駐車場の弱点とも言える。

多くの機械式駐車場の高さ制限は1550mmとなっておりSUV以外でも入れないクルマがある(Satoshi@AdobeStock)

 もちろん現在販売されている機械式駐車場は、大型乗用車が収納できるタイプも存在する。地域によってタワー型駐車場が選ばれるケースもこれからも一定数は残っていくだろう。

 ただEVの割合が多くを占めてくるようになったら、駐車中に充電しにくい構造であるタワー型は敬遠されていくようになるかもしれない。しかし非接触充電と建物外壁へのソーラーパネル設置で、自動的に充電しておけるようなカーシェア用のタワー型機械式駐車場なんて、設備も不可能ではない話だ。

二段式であれば上側に背の高いクルマを置くことも可能だが下側や都心部にある旧来のタワー型では入ることができない(xiaosan@AdobeStock)

 また基本的にタワー型はスタッフによる操作が必要で、従業員を常駐させる必要があるのに対し、自走式であればコインパーキング同様、料金精算機さえ設置すれば無人化できることから人件費の負担が少ない。

 タワー型でもパレットが入出庫口より外部にスライドするようにすれば無人化も実現できるかもしれないが、設備の安全上内部に人が入る危険性を排除できなければ、設置側の安全対策として専門スタッフを置くしかないのだ。

 複雑な構造上、定期的なメンテナンスが必要なことも、既存のタワー型機械式駐車場を存続させることを難しくしている。マンションに設置される機械式駐車場も同様の理由で、設備の老朽化やクルマの大型化、駐車台数の減少もあって、廃止されて平置き駐車場へと変更されることが増えているようだ。

■今後、タワー型機械式駐車場は減少の一方なのか?

最近のクルマは全幅も大きいのでパレットに入るのも難しいクルマが増えている(Satoshi@AdobeStock)

 しかし、都市部においては土地の有効活用という観点から立体駐車場は欠かせない設備である。

 ショッピングモールのような大型集合型店舗となると、店舗と一体化したスロープやループ状の通路が組み込まれた大規模な自走式立体駐車場が設けられるが、都市部の小規模な店舗は専用駐車場を持たないケースも多く、限られた土地に一定台数の駐車スペースを用意する必要がある地域は依然として多い。

 オフィスビルやマンションでは平置きではなく地下駐車場を設けているところもあるが、豪雨などの自然災害が増えていることを考えると、建物にタワー型機械式駐車場を隣接させるところも今後は出てくるかもしれない。

 実際に機械式駐車場の製造業者では、そんな高層ビル一体型のタワー型駐車場を提案しているところもある。

 これらを考えると、今後もタワー型機械式駐車場は一定数は存続されていくことになりそうだ。これからもより効率の高い、安全な駐車システムとして進化していくことだろう。

 海外でもタワー式駐車場を導入しているところはある。しかしそれはディーラーがクルマを展示する目的で設置したものなど、実用性より広告効果を狙ったところが多いようだ。

 日本の建築技術は当然のこと機械式駐車場においても、パレットなどを操る複雑な機構やその制御など技術やノウハウは間違いなく世界一と言っていいものだ。

 日本国内においてはすでにピークは過ぎているが、新興国の都心部など過密した地域では高級車などを安心して駐車しておく設備として、タワー型を設置する需要は今後増加するところもあるハズだ。

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