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 新型コロナウイルスの影響による半導体不足や人手不足に伴う新車の納期遅れが続くなか、ほぼ即納が可能である中古車の人気が高まっている。

 しかも近頃は「実車を見ないで中古車を買う」という人の数も増えているようだ。実際、旧車専門店オーナー氏からも「最近、遠方から電話がかかってきて『内金を入れるからすぐ買いたい! 』という人が増えている」と聞いている。

 また大手自動車メーカーや大手中古車情報サイトも、ここ最近は「オンライン商談サービス」に力を入れている模様だ。

 中古車の「リモート買い」が増えている理由は何なのか? そして、もしも実車を見ないまま中古車を買おうと考えた場合には、どういった点に注意するべきか? 自身も過去に2回、実車を見ないまま中古車を購入した経験があるという、伊達軍曹氏に解説してもらった。

文/伊達軍曹
写真/ボルボ、メルセデスベンツ、スズキ、Adobe Stock(トビラ写真/Yakov@Adobe Stock)

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■リモート買いが増えてきている

ネット通販は我々の生活にも浸透してきており、今はさまざまな商品をオンラインで購入できる時代だ。自動車についても、確実にその流れはやってきている (beeboys@Adobe Stock)

 中古車のリモート買いが増えているとは聞くものの、「実際にどのぐらい増えているのか? 」という数値については知らない。だが大手中古車情報サイトの動きなどを見ている限りでは、確かに最近は、中古車リモート購入の機運が高まっているとは感じている。

「店舗へ行かないまま中古車を買いたい」と考える人が増加した理由は、主には下記の3点に集約されるだろう。


1/中古車のコンディションの標準化が進んだ(いわゆる悪徳中古車店が激減した)
2/コロナ禍に伴って「非接触ニーズ」が高まった
3/ネット通販やサブスクの一般化により「心理的な抵抗」が薄まった

 1の「悪徳中古車店」というのは今も一部に存在しているものの、その実数は10年前、20年前と比べればはるかに減少した。

 近年はネットを通じた口コミ文化が浸透したことで、あまりにもアコギな商売をしていると自分の首を締めることになる。そのため悪徳店の多くは改心するか廃業するかなどして、結果的に業界がクリーンになったのだ。

 もちろん中古車にも中古車販売店にも、大なり小なりの「当たり外れ」は今も絶対にあるわけだが、おおむねは「どこでどう買っても、さほどの大ハズしはしない」という状況に変わったのである。

 2の「非接触ニーズの高まり」については説明不要だろう。そして人々のそういったニーズの高まりを敏感に感知した大手企業各社が「中古車のオンライン商談」なるものに力を入れ、ユーザーもそれを歓迎した。ということだ。

 3の「モノのネット購入に関する心理的抵抗の減少」も、ほぼそのまんまである。

 ベストカーWEBの記事を熱心に読み込むようなカーマニア各位は別として、世の中の一般的な人々の心理は「メルカリで現物を見ないまま中古の洋服などを買うのと同じように、写真とメールのやりとりだけで中古の車を買うことに、さほどの抵抗は感じない」という具合に変化してきたのである。

 そういうワケで、これをお読みのベストカーWEB愛読者各位が今後「リモート買い」をするかどうかはわからない。だが「もしも買う場合はこうすると良いでしょう」ということを、リモート購入の経験者および中古車ジャーナリストとして、ざっくりご説明申し上げよう。

■ポイント1:カーセンサーnetやグーネットの「オンライン商談」を活用する

 筆者が過去にメルセデス・ベンツ SLKとルノー カングーの2台を実車を見ないまま購入した時代は、まだカーセンサーnetなどに「オンライン商談」の機能は実装されていなかった。

 しかし過日、仕事でオンライン商談の疑似体験をしてみたところ、これが本当に便利であるというか、「実際に販売店を訪問するのとそう大きな違いはない」ということがわかった。

 カーセンサーnetやグーネットのオンライン商談とは、サイトを通じて予約を取ると、しかるべき日時に販売店と自分のPCやスマホなどがオンラインでつながる。

 そして画面を通じてではあるが販売店担当者とさまざまな質疑応答を行い、そしてお目当ての車両の隅々までを見ることができ、契約も行える。というものだ。

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例としてボルボは、Zoomで新車のリモート相談が可能。セールスマンがタブレットを持ちながら後席の足元空間などを映してくれるので、ホームページでは見られない部分も確認できる

「画面越しでは重要なところがわからないのでは? 」という声もあると思うが、これが意外とそうでもない。画面越しではあっても販売店担当者の人柄や雰囲気、誠実さ(または不誠実さ)、知識や経験の有無などはけっこう伝わってくるもの。

■オンラインの方が「下回り」がよく見える!?

 そして中古車の細部についても、スマホの動画撮影機能を使いながら嫌というほど細部を見せてくれるので、実際に販売店を訪問して現車を見るのと大差はないのだ。

 ちなみにクルマの「下回り」は、暗い場所でも明るく撮れる最近のスマホを車両下回りのあちこちに突っ込んで撮影してくれるため、実は肉眼で見るよりオンラインのほうがわかりやすかったりもする。

オンライン商談でも、お店によってはちゃんと下回りも見せてくれる。ヒットして傷ついていないか、油脂類が漏れていないかなど確認しよう(Greg Brave@Adobe Stock)

 それでも、「とはいえ、しょせんは画面越しだから、本当のところはわからないんじゃないか? 」と懐疑的な方もいらっしゃるだろう。

 そのとおりである。オンラインでは「本当のところ」はわからない。

 だがよく考えてほしい。我々消費者は、仮に販売店を実際に訪問したところで「本当のところ」がわかるわけでもないのだ。

 お店の人が心の奥底で考えていることは対面したところでわからないし、エンジンや足回りの内部だって、訪問したからといって分解して見せてくれるわけでもない。

 そういった意味で、実際に訪問するのとオンライン商談の差は「ない」とは言わないが、「あまりない」とは言えるのだ。

 ただし中古車特有の「イヤなにおいの有無」については、画面越しではどうしたって確認できない。この問題をどうするべきかという点については後述する。

■ポイント2:高年式&低走行物件に狙いを絞る

 10年落ち以上のややマニアックな多走行車を、オンライン商談だけで選ぶのは正直やや難しい。

 だが「高年式な低走行物件」であれば、具体的には3年落ち/3万kmぐらいまでの中古車であれば、スペック(年式や走行距離、修復歴の有無、装備内容、ボディ色、そして価格)とオンライン商談でわかることだけで選んでしまっても、ほぼ問題ない場合が多い。

 なぜならば、最近の車は新車から3年/3万km程度では――もちろん例外はあるが――前オーナーがどう扱ったところで、そうそう大きな不具合など生じない。そのためそういった中古車は、ある意味「どこでどう買ってもだいたい同じ」と言えるからだ。

 例えば数年前に筆者の知人が、筆者に言わせれば「絶対に近寄りたくないタイプの中古車販売店」で、3年落ちのメルセデス・ベンツ Cクラスを購入した。その販売店は明らかに「売ったら売りっぱなし」系のお店で、購入後のアフターケアなどまったく期待できないタイプの販売店に見えたからだ。

Cクラスは仮に今から3年前だと、写真あたりの車両だ。走行距離3万キロだと、支払い総額は大体400万円くらいから

 そのため筆者は「……あの店で買うのはやめといたほうが」と助言したのだが、知人は助言を無視し、安さに惹かれてそれを買った。

 あれから4年がたった今、知人とCクラスはどうしているか? 

 両車ともピンピンしている。何の問題もなく、型遅れにはなったがなかなかシュッとしているCクラスを、ほぼノートラブルで元気に走らせているのだ。

■ポイント3:超メジャー車種に狙いを絞る

 例えば全国で5台ぐらいしか流通していない希少車には、「相場」なんてのはあってないようなもの。

 だが、例えば全国で1万台以上が流通しているスズキ ワゴンRの中古車は、個体それぞれの年式や走行距離、コンディション、ボディ色などによって、ほぼ自動的に「相場」が決まってくる。

メジャーな車種であれば、相場なりの車両に当たりやすい。珍しい色の相場が安かったりするので、好きな色があればお買い得かもしれない

 数が多い=多くの販売店が売っている車種は、「この年式とコンディションなら、だいたいこのぐらいの売価でしょ」という線から大きく外れた価格を付けるとまったく売れないため、自動的に「似たような売価の個体は、コンディションもだいたい同じぐらい」ということになってくるのだ。

 そのように「相場」が自動的に生成される超メジャー車種であれば、わざわざ時間を使って販売店まで行く必要はない。いや行ったほうがベターではあるのだが、「絶対に行かなくてはならない」ということもない。

 筆者も、もしもスズキ X-90という希少珍車を買うなら全国の実車をくまなく見て回ると思うが、同じスズキのワゴンRを下駄的に使う目的で総額50万円ぐらいにて探すなら、時間を節約する意味で「リモート買い」を選択する可能性は高い。

■「悪臭の有無の確認」は「信頼できそうな販売店探し」が決め手

 以上のとおり、
・高年式/低走行車または超メジャー車種に狙いを絞る
・カーセンサーnetなどの「リモート商談」機能をフル活用
・画面を通じて物件のコンディションと販売店の「お店柄」「お人柄」をしっかり確認する

 という手順を踏めば、「中古車のリモート買い」もそう簡単に失敗するものではない。

 ただしオンラインでは絶対に確認できないのが、中古車に特有の「車内にしみついたイヤなにおいの有無」だ。タバコのにおいについては「禁煙車」だけを検索対象とすることでおおむね回避できるが、それ以外の悪臭(強烈な化粧品臭やカビ臭、動物のにおいなど)は、禁煙車かどうかには限らないのがやっかいなところなのだ。

 ここについては、リモート買いにおいては「販売店(の担当者)が言っていること」を信用するほかない。

「ところで車内のにおいはどうですか?」とオンラインで質問し、担当者の「ほぼありません」「ほんの少々のカビ臭は正直ありますが、気になるほどではないかと思います」「ややにおいがキツめなので、そこが気になる方は、この個体はおやめになったほうがいいでしょう」などの回答を、信じるほかないのだ。

「車内のにおい」は可視化できない。オンライン商談で確認が最も難しいのがこの点(Aleks Gedeiko@Adobe Stock)

 そしてそのためにも、上で述べた「画面を通じて販売店の『お店柄』『お人柄』をしっかり確認する」という部分が非常に重要となってくる。

 少なくとも18年以上はあるはずの人生経験のすべてを投入し、「この人が言ってることは信用に足るか? 」「この人が勤務している(または経営している)お店は信用できそうか? 」ということを、オンラインでのさまざまな会話や立ち居振る舞いなどから推測し、「たぶんOK! 」と思えた販売店でのみ、中古車を購入する。「嘘が多い……」と思ったなら、静かに立ち去る。

 その見極め部分こそが、「中古車のリモート買い」における最終奥義といえるだろう。


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