何かとお金のかかる子育て世帯にとって、貴重な収入源のひとつである国の児童手当。今年の10月、高所得者向けに支給されている月5,000円の特例給付で、一定額以上の家庭への支給が打ち切られます。中学生まで受給できるはずだった児童手当がゼロになれば、子ども1人あたり最大で約100万円の収入減にもなります。共働き世帯では、所得制限の対象になる年収基準について一層の注意が必要そうです。
10月から高所得者は児童手当の対象外!
児童手当は、3歳まで月15,000円、中学生まで月10,000円(※)が支給されます。子どもの誕生月によって異なりますが、0歳から中学卒業までで受け取れる総額は最大で約200万円と、子育て世帯にはとてもありがたい制度です。
※第3子以降は3歳~小学校修了まで月15,000円。
親の収入が高い場合には所得制限があり、現在は基準を超えると子どもの年齢にかかわらず支給額が月5,000円になります。これを特例給付といいます。受給額が一般の半分以下とはいえ、年間6万円、子どもが中学生までに受け取る総額は最大で95.5万円になります。
「特例給付」の対象になるのは、専業主婦(年収103万円以下)の妻と子ども2人がいる会社員の場合で年収960万円以上です(※)。現在は、所得制限の上限を超えると支給額は月5,000円と一般よりも低くなりますが、ゼロになることはありません。これが今年の10月からは年収1,200万円相当という上限が設けられ、これを上回る年収になると児童手当がストップしてしまいます。
つまり、年収960万円までは児童手当は月10,000円(3歳まで)または月15,000円(中学卒業まで)、年収960万円~1,200万円までは月5,000円というのは今後も変わりませんが、年収1,200万円以上の人は支給がまったくなくなるわけです。
※会社員などで収入が給与所得のみの場合の目安。自営業など所得や控除の計算が異なる場合は基準が異なります。
※本稿では便宜上、年収が103万円以下の妻を「専業主婦」と表記します。
パワーカップルは支給対象外になる年収基準が低い
共働きで、扶養を超えて稼いでいる場合は注意が必要です。児童手当の所得制限の基準額は、扶養家族の数に応じて異なるためです。夫婦と子どものみの世帯の場合、専業主婦なら妻と子どもが扶養家族になりますが、妻の年収が103万円を超えると扶養から外れますので、扶養家族は子どものみになります。その分、所得制限の基準額が低くなり、子ども2人の場合には年収1,162万円以上で児童手当の支給対象外になってしまいます。
また、通常の児童手当を受給できる所得制限の水準も年収917.8万円までと、専業主婦世帯に比べて低くなっています。
なお、所得制限は夫婦合算ではなく、どちらか高い方の年収で判定されます。世帯年収でみれば、共働きは専業主婦世帯よりも収入が高くても児童手当を受け取れるといえます。ただ、年収が所得制限を超えないかどうか、夫婦2人それぞれの年収額に注意は必要です。特に年収1,000万円以上なら、残業代などで超えてしまわないようにしたいものです。ふたりの収入が同じくらいなら、相手任せにせずにお互いに意識しておくことも大切です。
後で収入が下がっても受給には再申請必要
今回の改正で特に気をつけたいのが、高所得により支給対象から外れてしまうと、児童手当の受給資格を喪失してしまうことです。一度喪失すると、翌年の収入が下がって所得制限を下回っても、何もしなければ児童手当をもらえないのです。
児童手当を再度受け取るには、子どもが生まれたときのように改めて受給のための申請手続きが必要です。いままでは所得制限を超える年収であっても、毎年6月に届く「現況届」という書類の提出や、前年に納めた住民税額などをもとに自治体側で児童手当の金額が調整されるのみで、年収のみを理由に支給がゼロになることは原則としてありませんでした。
しかし、改正後はひとたび所得が高くなって児童手当を受け取れなくなるとそのままストップしてしまいます。年収が下がったのに受給しないまま子どもが中学生になれば、そこまでの手当をもらい損ねてしまいます。
参照:内閣府「子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律等の施行について」
児童手当の受給は、原則として申請手続きをした月の翌月分からです。申請が遅れてもさかのぼって受け取ることはできず、また2年間の時効もあります。ずっと受け取らないままなら、最大で100万円近くをもらわずじまいにもなりかねません。
働き方や子どもの人数、配偶者が扶養内かどうかによる前後はありますが、おおむね年収1,000~1,200万円は所得制限の境界になります。この前後で収入の変動が大きい人は、毎年の年収・所得を確認するとよいのではないでしょうか。
月に5,000円や10,000円というと小さく感じるかもしれませんが、子どもが中学生まで、長期間にわたってもらえる手当は、総額にすると大きいものです。子育ての期間で夫婦がどれくらいの収入水準で働くか、そしてもらえる手当がどれくらいになるかを考えてみると、教育費の計画も立てやすくなりそうです。