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コロナ禍に関わらず、業績を伸ばしている業界がある。個人や企業が持つスキルや場所、モノなどを第三者に提供するシェアリングサービス(シェアエコ)業界だ。

シェアリングエコノミー協会が、情報通信専門のシンクタンク、情報通信総合研究所(東京都中央区、大平弘社長)と共同で行った調査によると、コロナ禍が直撃したにも関わらず、2020年度の国内シェアエコ市場規模は2兆1,004億円。2021年度は、市場規模は2兆4,198億円とさらなる拡大を見せている。

シェアリングエコノミー協会プレスリリースより

シェアエコ業界の各企業も、軒並み好調だ。中でも、シェアエコの代表的企業の一つ、メルカリは快進撃と言ってもいいだろう。2018年度に516億円あまりだった売上高は、2021年度には1000億円を超えている。

個人間カーシェアサービスのAnyca(エニカ)の流通総額(所有者と利用者の間でやりとりする利用料の総額)は、コロナの影響もあって2020年4月~5月は前年比の半分以下に落ち込んだものの、6月には約124%、7月は約132%とV字回復を見せている。

個人や企業が保有するあらゆるスペースを貸し借りできるプラットフォームを運営するスペースマーケットは、2019年12月の上場直後にコロナが直撃したことから、2020年度12月期は1億円ほどの経常損失を出した。しかし、2021年度12月期は好調で、黒字転換している。

業界に横たわる課題とは

ただ、日の出の勢いを見せるシェアエコ業界にも解決しなければならない課題がないわけではない。たとえば、安全性の担保をどうするかというもの。これは、サービスを提供する側にもサービスを利用する側にも共通している問題だ。

ウーバーイーツ配達員の男が配達先で女性に性的暴行をはたらいた――。このようなニュースは、残念ながら珍しくはなくなってしまっている。2018年には、大阪市の民泊をアジトにしていた特殊詐欺グループが摘発されている。また、民泊と言えば、利用者がゴミ出しや騒音などのルールを守らないために起きた、周辺住民とのトラブルも多数報告されている。

総務省の調査によると、「シェアエコサービスを利用したくない」と回答した人の理由で最も多かったのが「安全性やトラブルが心配」というものだった。安全性やトラブルといった問題に対して、どう対応していくかはシェアエコ業界の最大の課題だろう。

保険や補償に関する課題もある。昨年に入ってから、個人間カーシェアリングで貸し出した車が勝手に売却されたという事件が相次いで起きている。自動車保険は盗難には適用されるが、詐欺や横領には適用されないのが一般的だ。前出のAnyca(エニカ)が昨年、詐欺にも横領にも適用されるカーシェアリング専用の自動車保険を日本で初めて導入しているが、こういった自動車保険の導入は業界全体で進めていく必要があるだろう。

不可欠な新たなルールづくり

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適正な法律や規制も考えていかなければならない。たとえば、2019年には安倍首相(当時)が「ライドシェア(編集部注:車の相乗り)の活用を拡大していく」と述べ、道路交通法を改正する方針を示している。しかし、現状のところ道路交通法は改正されていない。ライドシェアリングサービスを使って個人が第三者を車に乗せ、報酬を得る行為を行えば「白タク」として摘発される可能性があるのだ。

さらに、反発する業界団体との折衝も行っていかなければならない。実際に、タクシー運転手などで構成される業界団体「自交総連」は、「危険な白タク ライドシェアの合法化は許せません」との声明を出している。

シェアリングエコノミー協会では、「現状ペースで成長した場合」と但し書きをしたうえで、2030年にはシェアリングエコノミーの日本での市場規模は、最大で14兆1,526億円に上ると予測している。「現状ペースで成長した場合」を実現するためには、先に指摘したような課題を解決し、適正な法律や規制を整備することが必要不可欠ではないだろうか。