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鳴り物入りで登場したが……デジタルアウターミラーがなかなか普及しないワケ

 2018年10月に量産車世界初の装備としてレクサスESに採用された「デジタルアウターミラー」。しかし、注目を浴びたわりにはそれ以降、なかなか普及していないのも現実だ。

 いったい何が問題なのだろうか? 使い勝手も含めたメリット&デメリットを改めて分析する。

文/高山正寛、写真/ベストカー編集部、ホンダ、レクサス

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■これぞ未来!と注目はされたが……

 従来のアウターミラー(乗用車の場合であればほとんどがドアミラー)が車両後方を鏡像(光学)で写していたのに対し、デジタルアウターミラーはカメラで撮影した情報を専用のディスプレイに表示し、確認することができるシステムだ。

 これまでグローバル、特に北米でレクサスの販売を牽引してきた「ES」だが、実は北米では光学式でなければ認可が下りないので、日本のフルモデルチェンジに合わせて世界初として搭載したのが現実である。

日本では平成28年6月の法改正に合わせて販売可能になり、2018年末から日本向けのESにオプション追加されたデジタルアウターミラー仕様

 確かにESが発売された時、デジタルアウターミラーに対し、「これぞ未来」と注目を集めたのも事実だ。ただ、どれだけ装着されているか、言い換えれば主流になっているか、と言えば厳しいのが現実である。

 レクサスからはデジタルアウターミラーの装着率のデータは公開されていないが、販売店で話を聞くと「クルマ自体は高く評価されているが、積極的にこの装備を装着するお客様は少ない」という声も聞かれた。

■導入のタイミングが悪かった!?

 では、いったい何が問題なのだろうか。その理由を大きく以下の4つに分類してみた。

1:価格が高い
 現在、3グレード構成のESにおいてデジタルアウターミラーが装着できるグレードは最上位の「Version L」と「F SPORT」になる。

「Version L」はメーカーオプションで22万円、「F SPORT」はパノラミックビューモニターとの組み合わせが条件でその価格は28万7100円(いずれも税込)となる。

 この価格はESのほかのメーカーオプションで比較すると、マークレビンソンのプレミアムサラウンドサウンドシステム(24万3100円)が装着できるほど高い。

 もちろん、ESを購入する顧客層からすれば、それほど価格的な問題は発生しないのかもしれない。それでもさらなく価格アップは避けたいし、それだけのコストをかけたメリットがあるのか?という疑問も発生する。

2:インテリアがカッコ悪くなる
 前述したようにESのシステムはアウターカメラで撮影した映像をインパネの両サイドに設置した5インチモニターで表示する方式を取っている。

 これが取って付けたような仕様、失礼を承知で言えば「後付け感」があるのだ。

完成されたインテリアに対して後付け感が否めない

 実際、当時開発担当者に話を聞いた時には「企画が決まったのが遅かったこともあるし、そんなことは百も承知。それでもインテリアにマッチングするように何度もデザインをやり直した」と当時の取材メモに残っていた。

 そもそもESのインテリアはレクサスのほかのモデル同様、プレミアム感が高く、UIも優れている。そこに突然ポンとインパネの両側にモニターが入ってくることに違和感を持つ人もいたはずだ。

3:別にふつうのドアミラーで問題ない
 たぶん、これが一番大きな理由だろう。デジタルアウターミラーのメリットに関しては最後にまとめるが、別にこれじゃなきゃダメというわけでなく、通常の光学式ミラーでも充分だ、というのが大きいのではないだろうか。

こちらはESの光学式ミラー仕様。ちなみにデジタルアウターミラーはレクサス内でも現在ESにしかオプション設定がない

 現在、デジタルアウターミラーを搭載するモデルとして話題なのが「ホンダe」(注:ホンダはサイドカメラシステムと呼ぶ)だが、このクルマはそもそもこの機能が全グレード(と言っても2つ)標準装備でドアミラーの設定自体がない。

 ESは導入当初の設定の都合で「選択できる=オプションにした」状態を作ったことが、結果として装着が伸び悩んだ部分はあるのだろう。

ホンダeは世界で初めてサイドカメラミラーシステムが標準装備され、2020年10月から販売されている。デザインもかなり小型だ

 ただ、ESを擁護するわけではないが、アーリーアダブター層などは発売当初には飛びついただろうし、それなりのメリットは感じているはず。それでもESに求める要件としての優先順位はそれほど高くないと感じている。

4:個人ごとで見やすさに差が生じやすい
 鏡を使う光学式ミラーの場合、目の焦点は鏡を通して対象物までの距離までを判断するが、デジタルアウターミラーはディスプレイの表面にピントが合う。これは最近装着率が高まっているデジタルインナーミラーでも言われてきたことだが、ピントの合わせづらさが慣れも含めて個人差が発生しやすい。

 要は3で述べたことに近いのだが、ふつうのドラミラーで充分ということに繋がってしまうのである。

■本当の進化はこれから。メリットも多い

 それではデジタルアウターミラーは今後どうなっていくのか。筆者的には前述したようにESは導入時のタイミングの問題もあったが、今後はまだまだ進化していく装備と考えている。

 実際、ESのデジタルアウターミラーに関しては安全の領域でも実は見どころ(メリット)が多い。

 通常ディスプレイに表示される後方の景色(見え方)は光学ミラーと同じように作られているが、そもそもデジタル技術を活用すれば、視野角の向上などは簡単に行うことができる。具体的にESではウインカーに連動して広角に切り替わる機能などを搭載している。

 それでもわかりづらいならば、普段使っているスマホのカメラ機能を想い出して欲しい。望遠や広角など「デジタルならばいろいろできる」ということは多くの人が生活のなかで使いこなしている。これがクルマに応用されることのメリットは大きい。

 また、ESの場合は本体にパノラミックビューモニターのカメラも組み込む関係でこのような形状になっているが、それでも空力的には有利で高速走行時における風切り音の低減やcd値を低下させる効果もある。

 また、ホンダeを見てもわかるように、次世代のカメラはよりコンパクトかつ高性能になることは容易に想像できる。

カメラミラー本体はかなり小ぶりだ

 この手の装備の最大のメリットはカメラ自体、ソフトウエアなどのアップデートにより、大きく性能を向上できるポテンシャルを持っている点。

 ES自体も2021年8月の大幅改良時にアウター/インナーの両デジタルミラーのカメラ性能を向上させることで表示される部分のノイズを低減し、見やすさを向上させていると言う。

 それでも購入した後に「やはりふつうの光学ミラーがいい」と言っても変更することはできない。だからこそ購入時には現車でチェックをすることを絶対オススメしたいのである。


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