おうち時間が長くなりリモートワークが増えたとはいえ、出張自体がなくなるわけではないし、かといって本格的な旅行に出かける空気でもない。それでも以前よりは比較的時間は自由になる出張時に、ちょっとだけ足を伸ばして心身ともに癒していただけたらという趣旨で、福岡県の温泉のひとつを紹介する。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
鉄道あるの?バスあるの?
今回紹介するのは記者が出張の際によく行く「源泉かけ流し温泉 ほうじょう温泉ふじ湯の里」だ。どこにあるのかというと、福岡県田川郡福智町。がっつり筑豊地方なので昔は炭鉱で栄えた地域だが、閉山とともに人口は減少の一途をたどり周辺の鉄道路線も次々と廃止された。
福智町は福岡県でも中央部に位置し、福岡市よりも若干だが北九州市に近い。鉄道は国鉄伊田線や糸田線を引き継いだ平成筑豊鉄道が運行している。バス路線も西鉄が多く走っていたが、現在ではほとんど廃止されてしまって数路線が残るだけだ。
特に少子高齢化が進んでいる地域なので交通弱者が多く、救済のために巡回福祉バスが走っている。なんと運賃は無料で、福祉バスという名称になっているが誰でも乗車できる。5路線のうち2路線が「ほうじょう温泉」を経由するほか、同施設の直営で平成筑豊鉄道金田駅から無料送迎バスが出ている。
いずれのバスもマイクロバスでの運行だが、運賃は無料で平成筑豊鉄道のダイヤに合わせられているので、列車を選べば連絡はスムーズだ。金田駅には福岡市、または北九州市からは直方駅経由で平成筑豊鉄道を利用して行くことができるほか、後述するがバスファンには福岡からバスを乗り継いでいくことも可能だ。
自販機で温泉売ってます!
金田駅から送迎バスに乗車すれば10分ほどで到着する。巡回福祉バスを含めたダイヤなどは、画像ギャラリーに収録しているので参考にしていただきたい。駐車場を見るとやはり地元利用が多く、自家用車での来場が多いものの送迎バスにも数人は乗車していたので、鉄道利用者も少数ながらいるようだ。
駐車場の奥には温泉の自動販売機があり、100円で100リットル購入できる。さすがに旅行者だと利用は無理だが、気に入れば次回クルマで来るときに20リットルタンクを5個トランクに詰めて行けば、温泉が買える。
泉質はナトリウム炭酸水素塩・塩化物泉
この温泉の泉質はナトリウム炭酸水素塩・塩化物泉(弱アルカリ性 低張性温泉)で、源泉を利用している施設はここだけだ。一般的な温泉の効能はもちろんだが、最近はコロナの影響で、マスクが欠かせないことによる肌荒れには良い。温泉で何度も顔を洗い流して風にさらせば、結構回復したのでお試しのほどを。
館内に入ると手をエタノール消毒をして靴を脱ぎ下駄箱に入れる。10円のコイン式なので10円がかかる。次にサーモカメラの前を通過して体温測定を行い、自販機で入浴券を購入する。大人650円。下駄箱のキーと入浴券をフロントに出せばロッカーキーをくれるので脱衣場に入る。後は一般的な銭湯と同じだ。
江戸っ子には物足りない?
温泉の源泉温度は摂氏38度なので、真偽のほどは定かではないが、熱い風呂が好きと言われる江戸っ子には物足りないかもしれないが、露天風呂では長湯ができるので、風を受けてゆったりと出張の疲れをいやしていただきたい。
温泉を出ると広大な畳敷きの休息室があるので自由に使用して構わない。また中庭には無料の足湯があるので、これだけを利用するのであれば無料だ。喫煙所も中庭にある。さらに施設の奥には「筑豊ラーメン山小屋」の店舗がある。
福岡からバスだけでもアクセス可能
帰りのバスのダイヤはあらかじめ確認しておきたいが、それでも時間がある場合は道路を挟んで向かいにある物産店をのぞいてみたい。ここで売られている地元でとれた新鮮な野菜等は激安で、遠くまで持ち帰るのは現実的ではないにしても、お土産品になる特産品もあるので時間があれば行ってみるのもいいだろう。
帰りの時間になると送迎バスに乗車するお客さんがフロント付近や休憩所で待っていて、バスが到着すると乗りこんでいく感じだ。金田駅から平成筑豊鉄道に乗車する場合は直方に出ることもできるし、日豊本線の行橋に出ることもできる。
ライトなバスファン向けとしては福岡から高速バス、小倉から特急バス、黒崎から急行バスで直方まで行き平成筑豊鉄道利用がおススメ。ディープなバスファン向けには、西鉄天神高速バスターミナルから筑豊特急バスで西鉄後藤寺営業所、または伊田駅で乗り換えれば金田駅まで行くことができる。
乗り継ぎの連絡にもよるが、たっぷり2時間以上はかかるバスファン向けの旅だ。また送迎バスや巡回福祉バスとの接続も確認の上で利用したい。
県外利用者は少ないのが魅力か?
交通の便が決して良い場所とは言えないので、利用者のほとんどが地元か近隣の自家用車利用だが、交通機関をよく調べて準備すれば福岡市や北九州市から行けない距離ではない。
地元の人が多く利用する温泉を訪ねるのも旅の醍醐味だ。出張であれば秘湯に何時間も徒歩で行くことはできないので、こういう温泉地が程よい立ち寄り先としてはおススメだ。
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