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ラシーンも復活してくれまいか!! 新型マイクラ登場で考える日産のキュートな歴代コンパクトカー

 2022年1月27日、日産は欧州市場へ新型コンパクトEVを投入すると発表した。欧州日産のエントリーカー「マイクラ」の後継となるという。

 ご存じの方は多いかと思うが、欧州の「マイクラ」は、先代まで日本の「マーチ」と共用だったモデルだ。マイクラは2017年にK14型へとモデルチェンジをしたが、マーチは2010年に登場したK13型のまま取り残されている。

 今回マイクラがバッテリーEVへと生まれ変わるのであれば、マーチもバッテリーEVへと生まれ変わり、ついでにいま中古車市場で人気が高騰している日産のコンパクトカー、ラシーンやフィガロなども復活させることができるのでは!? と期待が高まる。

 はたして、新型マイクラ登場で、名門「マーチ」やその他のコンパクトカーの復活はありえるのか、新型マイクラについていまわかっている情報と、昨今の日産の日本市場における戦略をもとに、考察しよう。

文:吉川賢一
写真:NISSAN

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新型マイクラは、K12似のデザインへと回帰

 日産は、2021年11月に発表した長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」のもと、欧州市場へはバッテリーEVのアリアや新型クロスオーバーEV、また、e-POWERを搭載したキャシュカイやエクストレイルも投入するとしている。

 さらに、小型のバッテリーEV向けとして新開発したCMF B-EVプラットフォームを使い、ルノーからは「5(サンク)」、日産からは「マイクラ」として、双方からバッテリーEVの新型車を発売するという。ただし、マイクラのデザインは日産が行うが、開発と生産はルノーに一任されるそうだ。

 新型マイクラのティザー動画を見ると、K12マーチ(マイクラ)を彷彿とさせる楕円形のヘッドライトリングやキャビン形状がみてとれる。また、ボディサイズは、MINIのバッテリーEVや、フィアット新型500(バッテリーEV)といった、Aセグメントサイズのようにみえる。

 現行マイクラはBセグメントコンパクトハッチであるが、新型ではサイズが小さくなることで、Aセグメントに限りなく近いBセグハッチバックとなる。激戦区となっている欧州Bセグメントは、SUVのジュークを本命として戦うようだ。

 現行K14マイクラは、ルノーの「クリオ」と兄弟車だ。ルノーはクリオ(日本名ルーテシア)を残すのに、なぜ兄弟車のマイクラは大きく変えるのか。それは、マイクラが欧州で売れていないことが原因だろう。クリオは欧州市場において、年間20万台規模(※2021年1~11月では16.5万台)も売れている、Bセグコンパクトの王者だ。一方のマイクラはクリオの約7分の1(同期間で3.1万台)ほどしかない。

 欧州市場に強いルノーの采配となれば、一台でも多くクリオを売るためにライバルを減らしたかったことなども、関係しているのかもしれないが、マイクラがバッテリーEVになることは、日本のマーチがバッテリーEVとなって続投される可能性もあり、たいへん喜ばしいことだ。

新型マイクラのティザー動画を見ると、K12マイクラを彷彿とさせる楕円形のヘッドライトリングやキャビン形状をしている

人気の過去モデルをBEVで復刻は十分に考えられる

 日産のコンパクトモデル、というと、いま中古車市場では、マーチの派生車である「フィガロ」や、クロスオーバーSUVの先駆車である「ラシーン」の価格が高騰している。テレビやネットドラマで登場したことがトリガーとなって、昨今注目が集まっているのだ。

 これらは、すでに登場から30年ほど経過しているモデルであり、排ガス規制レベルが古い当時のエンジンのまま、復刻することはできないが、デザインをそのまま生かしつつ、バッテリーEV化する、という手は十分に考えられる。

 フィガロはマーチの派生車かつコンパクトなサイズであり、プラットフォームを共用し上屋を作り分けるような開発は不可能ではない。当時よりもワイドボディのフィガロとなるかもしれないが、それもまた面白い一台になるだろう。また、全車が4WDだったラシーンも、CMF-BEVの後輪駆動システムが用意されれば、実現不可能ではないはずだ。

 現在のラシーンやフィガロの人気に乗じないのはもったいなさすぎる。これ自体は利益が上がらない(もしくはマイナス)のプロジェクトだったとしても、日産のイメージを一新させる大きなきっかけにはなってくれるような気がする。

 先日、女優の伊藤かずえさんが31年間ものあいだ乗っていたY31シーマを、オーテックジャパンがレストアし、大いに話題となった。またNISMOも、第2世代のR32~R34スカイラインGT-Rの純正パーツの復刻販売を開始している。もちろん簡単ではないだろうが、自身が切り拓いたブランドを大切に、ぜひメーカー純正の復刻車を用意してほしい。

クラシカルでカッコ可愛いフィガロ。昨今テレビやネットドラマにチョイ出演をしたことがトリガーとなって大注目された

「歴史あるメーカー」の強みを今こそ!!

 大量生産、大量販売をグローバルで行う日産自動車には、そうした復刻車の製造販売は難しいかもしれない。可能性があるとすれば、オーテックだ。

 バッテリーEVとなった次期型マーチも楽しみだが、フィガロBEVやラシーンBEVが、300万円程度で登場すれば、大いに話題になるだろう。フィガロ販売当時のように、限定の抽選販売とすれば、さらに話題性は高まる。

 これまで日産は、多くの名車を生み出してきた。しかし、ラシーンやフィガロのように、登場から30年経過した今もこれほどまでに支持されるブランドは多くはない。「最新のパワートレインに、クラシカルなエクステリアとインテリア」という組み合わせは、テスラのような歴史の浅いメーカーでは不可能であり、昔からクルマを作ってきた日産のような自動車メーカーだからこそ出来ることだ。

 「あの頃のクルマはよかった」で終わらせるのはもったいない。ぜひとも、新たな展開を期待したいところだ。

四角くて武骨だが、愛嬌があるラシーン。これもネットドラマやテレビCMで登場したことで、再び注目されている
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