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まとめ

  • 「ビタミン剤がニキビに効く」というウワサには十分な根拠がありません!
  • ビタミン剤にも副作用あり。サプリメントでもむやみな使用は要注意です。
  • ニキビ治療にはもっとオススメの薬があります!

この記事を書いた医師

やさひふ

Yasahifu

医師 / 皮膚科専門医 / 医学博士

Lumedia 編集長。怪しい医療情報に惑わされる患者さんを多く見た経験から Lumedia の立ち上げを決意。
皆さんのすこやかなお肌を守るため、Twitter で科学的根拠に基づいたスキンケア情報発信中。

「ニキビにはビタミンが効果的」というイメージとその実際

ちまたでは、ニキビの治療・予防にビタミン剤が良い、ニキビはビタミンサプリを飲めば治る、といった広告や宣伝をよく目にします。その影響なのか、患者さんから「ニキビで困っているのですが、ビタミン剤を飲むほうが良いでしょうか?」と皮膚科外来で質問を受ける機会も少なくありません。

また、病院でニキビについて相談したら、ビタミンCやビタミンB2、 ビタミンB6などの薬を医師から処方された、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、実は「ビタミンのサプリメントや医薬品がニキビに効く」という話に十分な根拠はありません。現状での信頼度は噂話に毛が生えたレベルに留まっています。

信頼できる情報はどこにある?

医療の世界には、その病気に詳しい専門家達が協議して定めた『治療ガイドライン』というものが存在します。各国・各地域の学会が徹底的に世界中の研究成果を調べた上でそれぞれの治療法を評価しているので、とても信頼度の高い資料です。

ニキビの治療ガイドラインは、日本・米国・ヨーロッパなどの皮膚科学会がそれぞれ無料で公開していて、誰でも読むことが出来ます。ニキビについて知りたい場合に、最初に目を通すべき文献だと言えるでしょう。

【ニキビとビタミン】ガイドラインでのビタミンの扱い

では、これらのガイドラインは、ニキビとビタミン摂取の関係について、どのように評価しているのでしょうか?

まず、日本皮膚科学会のニキビ治療ガイドライン2017は「ニキビに対するビタミン剤内服を推奨はしない」とはっきり明言しています (参考文献 1) 。

また、アメリカやヨーロッパのニキビ治療ガイドラインでは、そもそもビタミン剤内服に関する言及すらされておらず、全く期待されていません (参考文献 2, 3) 。ニキビへのビタミン剤内服は専門家内では「評価に値しない」とみなされており、一般に推奨されないのです。

なぜビタミンは「推奨」されていないのか?

どうしてニキビに対するビタミン剤は推奨されていないのでしょうか。これは、「ビタミン剤を飲むとニキビが早く良くなりますか?ニキビを予防できますか?」などと調べてビタミン剤の有効性を証明できた治験が、残念ながら過去に1つも存在しないからです (参考文献 1) 。

「え、でも私はビタミン剤を飲んだらニキビが治ったよ!?」という方もいるかもしれませんね。しかし、ここで注意すべきなのは「だいたいのニキビは放置するだけでもいつかは勝手に治る」ということです。たとえば、「神社にお参りに行ったらニキビが治ったよ」と言われても、本当に神様がニキビの治りを早くしてくれたのかは分かりませんよね。同じように、「ビタミン剤を飲んだらニキビが治ったよ」と言われても、本当にビタミン剤がニキビを治したのかは不明で、「単に時間経過でニキビが治っただけ」かもしれません。

したがって、ある治療法の効果を証明するには、単に体験談を報告するだけではだめです。「その治療法を受けた場合」に「その治療法を受けなかった場合」よりも経過が良くなったことを、治験という手続きで示さないといけません。ビタミン剤については、これが全く出来ていないのが問題です。「ビタミン剤を飲んでも、飲まなかった場合よりもニキビが減るのかがさっぱり分からない」状況なのです。明確なメリットは無い治療法だと言えます。

ここまでお読みいただいて、「うーん、効果が怪しいのはわかったけれど、とりあえず飲んでおいて悪いことは無いんでしょ?」とお考えの方もいるかもしれません。ただ、ここで注意すべきなのは「ビタミン剤にだって副作用があり得るんだよ」ということです。

ビタミン剤の思わぬリスクとは?

最近ではワクチンに関する議論が活発なため、その言葉を耳にする方も多くなった「副反応」「副作用」という言葉ですが、言ってしまえばどんな薬やサプリメントでも副作用は起こりうるものです。よく「薬では副作用が起こるが、サプリメントでは副作用は起きない」と誤解されている方もいらっしゃいますが、サプリメントでも十分リスクはあります。

ビタミンCの意外なリスク

例えば、ビタミンCについては、怖い話として「女性がビタミンC剤の内服を続けると肺がんが多く起きる」と報告されています (参考文献 4) 。

具体的にどんな研究かというと、「毎日 500 mg のビタミンCを平均9.4年間飲んだ女性では、プラセボという比較対象用の薬を飲んだ (≒何もしなかった) 女性に比べて、肺がんの発生率が84%増加した」というデータが、ランダム化比較試験という信頼度の高い臨床試験で示されたのです (参考文献 5) 。

なんとなくビタミンCというと健康に良いもので、たくさん摂っておくほうがよいというイメージがありますよね。こういった臨床試験結果に驚かれる方も少なくないのではないでしょうか。

食事でビタミンC摂取を心がけるのは構わないでしょうが、サプリメントや医薬品であまりに大量に取りすぎるのは、むしろ体に悪い行為かもしれません。ビタミンCなどが健康に悪影響を与えるかもしれない理由についてはまだ研究中ですが、Nature という世界1流の科学雑誌に掲載された論文では「(ビタミンCなどの) 抗酸化物質はがんの初期の増加を助長してしまうかも」と考察されており (参考文献 6) 、そのせいなのかもしれません。

ここまでの話をまとめると、ニキビを防ごうと思ってビタミンCのサプリや錠剤を摂取してもメリットがあるとは言えませんし、一方で肺がんなどにかかる可能性が上がるかもしれないなどのデメリットがあるわけです。

サプリについて、「効果があるかないかはわからないけど、気分がよくなるから飲んでいる」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、こうして冷静に評価してみると、ニキビを治したい方が何となくビタミンのサプリメントや医薬品を飲む行為は、メリットとデメリットが釣り合わず、逆に健康を損なう恐れもあるのです。

科学的に推奨される「ニキビの予防と治療」とは?

では、ニキビを治したい場合には何をすれば良いのでしょうか?

もちろん、まずは「ニキビ」であることを医師が診断する必要はありますが、日米欧の皮膚科学会が公開しているニキビ治療ガイドラインはいずれも、たとえばアダパレンという塗り薬の継続使用を強く推奨しています (参考文献 1-3) 。

なぜビタミン剤よりも「アダパレン」が推奨されるかというと、こちらの治療法はランダム化比較試験という客観性のある治験によって、その効果や安全性が優れていることが国内外で十分に証明済だからです (参考文献 7, 8) 。

例えば、日本で行われた治験では、アダパレンを12週間塗り続けた患者さんではニキビの数が63%減少しました。これはプラセボという比較対象用の薬を塗った患者さんよりもずっと大幅な減少率だったので、アダパレンゲルの高い効果がはっきりと確認できました (参考文献 8) 。

というわけで、ニキビでお困りの人は、いきなりビタミン剤を飲むよりも、客観的に効果が示されているアダパレンなどの治療薬を先に試す方が、より確実で勝率の高い選択肢だと言えるでしょう。アダパレンなど高い効果が示されているニキビ治療薬(ディフェリンⓇゲルなど)は病院でしか処方できないので、お困りの方は信頼できる皮膚医がいるクリニックでお気軽にご相談ください。

COI

本記事に関して、開示すべき COI はありません。

The post ニキビにビタミン剤は有効? – 巷のウワサを皮膚科専門医が解説 first appeared on LUMEDIA (ルメディア).