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基本的に”イメージ”を意識した内容となっておりますので、基礎知識の無い方への入門向きです。
じっくり学んでいきましょう!

今回は、「トランジスタの動作原理」についての説明です。

トランジスタ

信号を増幅する機能と回路をON/OFFできるスイッチング機能を兼ね備えた半導体素子

トランジスタ

トランジスタとは、信号を増幅する機能と回路をON/OFFできるスイッチング機能を兼ね備えた半導体素子です
トランジスタはダイオードのようにn型半導体とp型半導体を接合したものです。
ダイオードの場合は2相構造でしたがトランジスタは3相構造になっていて、npn型pnp型の2種類があります。
トランジスタは3端子構造になっていて、各端子をベース(B)エミッタ(E)コレクタ(C)と呼びます。
ベースは基準、エミッタは放出、コレクタは収集と言った意味合いになるので、ベースへの入力信号をコントロールしてコレクタからエミッタ方向へ大きな出力をするというイメージを持つと良いかもしれません。
ただ、これはnpn型の話であって、pnp型だと放出するのはエミッタからコレクタ方向になる為、後で解説する動作原理をしっかり理解した方が確実です。

図1

回路記号の矢印の向きに電流が流れるようになっています

では、トランジスタの電流の流れの原理について考えていきます。
とは言うものの、基本的な考え方はダイオードと同じです。
ここでは、npn型のトランジスタを例に考えます。

① ベースに直流電源のプラス側、エミッタに直流電源のマイナス側を繋ぐ。

図2

pn接合ダイオードの順方向に電圧が掛かっているのと同じ状態になる為、図2のように電流が流れます。
電子が電源のマイナス側から出てプラス側へ戻っていくことで電流が流れる為、n型半導体の中の電子がp型半導体側に押し出されて回路内で循環しているわけです。

② コレクタに直流電源のプラス側、エミッタに直流電源のマイナス側を繋ぐ。

図3

橙部分のようにキャリアの存在しない領域ができてしまう為、電流は流れません。

③ ①と②を同時に繋ぐ。

図4

ベース-エミッタ間は①の時と同じように動作しますが、エミッタ側のn型半導体の一部の電子がp型半導体を通過してコレクタ側のn型半導体へ移動するようになります。
その結果、コレクタ-エミッタ間でも電子が移動するようになる、つまり大きな電流が流れるようになります
上記の動作を利用して、ベース電流を少し変化させるだけでエミッタ電流を増幅できるようにしています

ちなみに、解説で繋いでいる電源を電池だと考えた場合、コレクタ-エミッタ間の電池は大電流を流す為にもう1つ直列に繋ぐ必要があるようです。
また、実際に回路を組む場合は抵抗を組み込まないと電流過多になりトランジスタが壊れる可能性があるので注意が必要です。

トランジスタの型名

トランジスタの型名は、以下のようなルールで決められています。

この型式を簡略化されたものが実物に書いてあります

図5

トランジスタは図5のような形状をしていて、平面部(図5の薄灰面)があります。
この平面部に、「2SC1815」だった場合は「C1815」と言う具合に「2S」の部分が省略された型式が書かれています。

トランジスタに流れる電流

トランジスタに流れる電流について考えていきます。
トランジスタの3端子はそれぞれベース(B)、エミッタ(E)、コレクタ(C)でした。
それぞれの端子に流れる電流はベース電流IB、エミッタ電流IE、コレクタ電流ICとなります。
これらの電流の関係は、ベース電流IB+コレクタ電流IC=エミッタ電流IEとなります。

図6

トランジスタの接地方式

トランジスタにはベース、エミッタ、コレクタの3端子があり、これらの端子は入力端子出力端子入出力共通端子の何れかとして使用します。
入出力共通端子を接地する構成となるので、「~接地」と呼びます。
接地方式の名称は入出力共通端子をベース、エミッタ、コレクタのどれにするかで決まり、3端子の名前を取ってそれぞれベース接地エミッタ接地コレクタ接地と呼びます。
各接地方式を部分的に切り取ると以下のようになります。
この形で見れば入出力共通端子という意味がわかるかと思います。

図7

それぞれの接地方式の特徴について個別に説明していきます。
・・・本当に教科書的な知識ですけどね。もっと実用的なところを語れるようになったら記事に起こそうと思います。

・ ベース接地

入出力端子をベースにした接地方式。
入力端子がエミッタ、出力端子がコレクタになっている。
その為、ベース接地回路の電流増幅率はコレクタ電流の変化量ΔIC÷エミッタ電流の変化量ΔIEとなります
その電流増幅率は0.950~0.995とほぼ1になりますが、電圧増幅率は高いです
高周波特性が良い入力インピーダンスが低い出力インピーダンスが高いといった特徴を持ちます。

・ エミッタ接地

入出力端子をエミッタにした接地方式。
入力端子がベース、出力端子がコレクタになっている。
その為、エミッタ接地回路の電流増幅率はコレクタ電流の変化量ΔIC÷ベース電流の変化量ΔIBとなります
その電流増幅率は20~200と高く、電圧増幅率も高いです
3つの接地方式の中で主要に扱われているのがエミッタ接地方式です。
その為、電験三種などで勉強として取り扱う場合は大体エミッタ接地について触れています。

・ コレクタ接地

入出力端子をコレクタにした接地方式。
入力端子がベース、出力端子がエミッタになっている。
入力電圧に追随して出力電圧(エミッタ)が変化することから、エミッタフォロワとも呼ばれます。
その為、コレクタ接地回路の電流増幅率はエミッタ電流の変化量ΔIE÷ベース電流の変化量ΔIBとなります
電圧増幅率がほぼ1入力インピーダンスが高い出力インピーダンスが低いといった特徴を持ちます。
部分的な構成は図8のようになっています。

図8

以上、トランジスタの動作原理」についての説明でした。


【基礎から学ぶ電子回路】

◎電子放出と電子の運動
◎半導体とは? ~電子と正孔について
◎ダイオードの動作原理

◎理想ダイオードの特性とダイオードの近似回路
◎ダイオードのクリッピング作用 ~ダイオードで波形をカットする
◎ダイオードと並列に繋がれた回路の考え方
◎トランジスタの動作原理
◎トランジスタの静特性
◎バイポーラトランジスタとユニポーラトランジスタの違い
◎トランジスタの増幅作用

◎ダイオードとトランジスタの関係