もっと詳しく
新型が待ち遠しい!! シエンタの実力と次期型への期待

 かつては、アクアやプリウスなどにならんで、トヨタのトップセラーモデルのひとつだった、5ナンバーサイズミニバン「シエンタ」。しかし、2020年頃からその人気に陰りが見え始め、現在はライバルであるホンダフリードの後塵を拝す状況となっている。

 市場奪還のためには、次期型の登場が待ち遠しいシエンタ。現行型の魅力を振り返りつつ、次期型への期待について、考察する。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、HONDA

【画像ギャラリー】次期型で王座奪還を目指すトヨタ「シエンタ」と、ライバルのホンダ「フリード」(23枚)画像ギャラリー

現行型でヒットモデルに駆け上がった

 初代シエンタの登場は2003年のこと。3列シート、7人乗り、両側スライドドアと、ミニバンとしての魅力を盛り込みつつ、ミドルサイズミニバンのノアやヴォクシーよりも小型でボンネットも長く、トールワゴンに近いスタイリングで登場した。

 「トヨタ最小の両側スライドドアミニバン」というくくりで言えば、ダイハツ・アトレー7のOEM「スパーキー」というモデルが前身にあたるが、これとはコンセプトが異なるため、トヨタ車としては全くの新規モデル。ただ、同コンセプトでライバルのホンダ モビリオが2001年に登場しているため、そのフォロワー(後追い)ではあった。

 柔らかい表情の丸形ヘッドランプやクリーンなイメージの外観は、ヴィッツやカローラなどからステップアップしたい人に違和感なく受け入れられる親しみやすさがあった。「女性でも運転しやすそう」というイメージはこういうクラスにとって大切だ。

 初代は2010年に一旦販売を終了したものの、翌2011年にはマイナーチェンジを伴って販売再開。アクティブな外観を持つ新設定の「DICE」も登場し、カッコよさも求めたい男性のニーズにも応えた。

 その後、2015年に現行型となる2代目が登場。コンセプトは「ユニバーサルでクールなトヨタ最小ミニバン」。アクティブで機能的な内外装デザイン、ファーストカーとしても十分な上質感と存在感。初代登場から12年の時を経て、しっかりユーザーの声に応える魅力的なモデルに生まれ変わった。

 SUVモデルが人気の時代ではあるが、ファミリー層にとっては、やはりミニバンの使い勝手は魅力的だ。都市部でも扱いやすいサイズで経済的なモデルとなると、さらに魅力は増す。シエンタはそんなニーズにビシッと応えたモデルだった。

初代シエンタ。現行型とは随分印象が異なるやわらかいデザインだ

ファミリーユースのツボを徹底的におさえた

 2代目シエンタで最も特徴的なのはそのエクステリアデザインだろう。

 全体的に塊感のあるフォルムを基本にしつつ、ボディサイドまで伸びるヘッドランプとグリルがつながったような形状のガーニッシュは、ユニークでスポーティだ。ベルトラインからリアドア見切りに連続する曲線と、リアタイヤからつながるようなサイドプロテクターによる一筆書きのグラフィックも、独創性とダイナミズムを表現している。

 トヨタによると、エクステリアのデザインイメージは「トレッキングシューズ」だそうだ。機能性とデザイン性が融合したシューズは、確かにアクティブなイメージを表現するのにぴったりだ。

 インテリアもなかなかよく出来ている。初代のセンターメーターは廃止され運転席側に配置されたが、ステアリング上から見通すタイプで、機能性と先進性を両立させた。

 ヒップポイントを後席に行くほど高くする「シアターレイアウト」を採用し、乗員全員が気持ちよく移動できる空間を目指しつつも、乗り込み高さを330mmと低い位置に設定することや、セカンドシートスライド、リクライニング、サードシートダイブイン格納など、限られたスペースでよくもこんなに機能を盛り込んだものだと思うくらい、ファミリーユースのツボをおさえている。もちろんハイブリッドの設定で経済性への配慮もぬかり無い。

2015年登場の2代目シエンタ。イメージカラーの「エアーイエロー」もミニバンとしての常識を覆すインパクトがあった

次期型では新型ノア/ヴォクのような大幅な進化を期待!!

 日本の道路事情でも扱いやすいサイズと、見た目以上に実用的な室内空間、個性的なデザインが魅力のシエンタだが、冒頭で触れたように、2020年5月頃から売上に陰りを見せ、ライバルのフリードが売り上げを伸ばしている。

 この理由としては、フリードがシエンタとは違って、プレーンで万人受けするデザインである、ということがあるだろう。フリードは2019年のマイナーチェンジで、内外装デザインを更新、クールでスタイリッシュな新しいフェイスを得た。このフリードならば、たとえば子育てを終えた世代がステップワゴンから乗り換えるというのも納得できる。

 一方、2015年7月に登場した現行シエンタは現在7年目、2018年9月に一度目のマイナーチェンジを行ったが、ヘッドライトやテールライトの意匠を微修正した程度で、イメージを変えるまでにいたらなかった。カジュアルに振っているシエンタのデザインは、ある程度の年齢層にとっては受け皿になりにくい。フリードから販売台数を取り戻すには、大刷新が必要だろう。

 加えて、現行シエンタは加速した時のエンジン騒音がなかなかにうるさく、走行中の質感はフリードに大きく劣る。そのため、新型アクアと同じくTNGA(GA-B)プラットフォームの採用や、新型アクアに搭載された「バイポーラ型ニッケル水素電池」に切り替えるなどして、走りの質感の改善が待ち遠しいところだが、筆者は、シエンタの次期型はまだ先で、次回の商品改良は、ビッグマイナーチェンジに留まるのでは、と予想している。

 2022年1月に新型が登場した同社のミドルサイズミニバン「ノア/ヴォクシー」では、フリーストップバックドアや2列目の超ロングスライド、3列目シートの格納方法など、ミニバンとしての魅力を徹底的に昇華させてきた。これら新アイテムのいくつかは、当然、現行型シエンタにも装備できるはずだ。

 ビッグマイナーチェンジで、デザインも、より万人受けするプレーンなものに一新し、インテリアの使い勝手向上や、先進支援技術も充実させるなど、驚くほど商品力を引き上げてくるものと考えられる。車格に見合ったプライスの付け方も、トヨタは上手い。新型シエンタへの期待は大きく膨らむ。

シエンタのインテリア。セカンドシートを跳ね上げることはできるが、フルフラットにはならない。このあたりは新型で改良して欲しいところ

◆      ◆     ◆

 シエンタやフリードといった3列シートモデルが売れ続けるのは、ファミリー層からの絶え間ないニーズがあるためだ。現在は、フリードに先をこされてはいるが、黙って指をくわえてみているトヨタではないだろう。

 トヨタのマーケティング能力と、それを実車に落とし込む技術力、高いと思わせない価格。これらがきちんとハマれば、シエンタは必ず次のマイナーチェンジ(もしくは次期型)で、再びライバルを凌駕する地位に返り咲くにちがいない。2022年秋頃と噂されている、新型シエンタの登場が楽しみだ。

【画像ギャラリー】次期型で王座奪還を目指すトヨタ「シエンタ」と、ライバルのホンダ「フリード」(23枚)画像ギャラリー

投稿 新型登場は2022年秋!! 「復活」が得意なシエンタの実力と次期型への期待自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。