年齢を重ねるにつれて10年なんてホンの少し前のことと思えてくるのは気のせいだろうか。「十年ひと昔」というけれど、昔とくくるにはまだ早いとすら思えてくる。
その当時、はたしてどんなクルマが売られていたのか? 数え上げたらキリがないので「そんなモデルもあった!!」「すっかり忘れていた」といいたくなるような地味なセダンに限定して集めてみた。
文/松村透
写真/トヨタ、日産、三菱、スバル、スズキ、AdobeStock(hit1912、mtaira、WavebreakMediaMicro、LIGHTFIELD STUDIOS)
■10数年前の日本は、というと・・・
ちょうど10年前の2012年を起点に2年ほどさかのぼって、日本に直接関連するできごとを3つずつピックアップしてみた。
・2010年:小惑星探査機「はやぶさ」地球に帰還、日本航空が会社更生法の適用を申請、鳩山由紀夫内閣が総辞職に伴い菅直人が第94代内閣総理大臣に選出
・2011年:東日本大震災、FIFA女子ワールドカップにおいてなでしこジャパン世界一、地デジ完全移行(アナログ放送終了)
・2012年:東京スカイツリー開業、ロンドンオリンピック開催、衆議院議員総選挙にて民主党が大敗し自民党が与党復帰
「10数年前」というと、2011年3月11日に起こった東日本大震災を思い出す人が多いかもしれない。ちなみに、地デジ完全移行したものこの年だ。
さらに、東京スカイツリーが開業してから今年でちょうど10年となった。ついこのあいだ・・・と思っていたら10年も経っていたというのが正直なところだ。
■数あるモデルのなかでスポットライトがあたるのはごくわずか?
プロ野球選手を例に挙げると、ドラフト会議によって毎年各球団から10名弱のプロ野球選手が誕生している。
単純計算で110人前後のプロ野球選手が誕生しているのだ。その一方で、100名前後の選手が引退を決意し、ユニフォームを脱いでいるという。
これはJリーガーも同様で、毎年100人前後がデビューを果たす一方で、同じくらいの人たちが引退し、ピッチを去っているという。
プロ野球選手やJリーガーをはじめ、誰もが知る選手になれる人はホンの一握りだ。それはクルマも同様かもしれない。
10数年前というと、「天使の咆哮」と呼ばれたV10エンジンを搭載したレクサスLF-Aの新車がデリバリーされていた頃だ。
おそらく、この記事に目を通してくださる方の大多数がレクサスLF-Aというクルマを認識しているだろう。ひょっとしたら映像がフラッシュバックしているに違いない。V10エンジンが奏でる「天使の咆哮」も脳内再生しているかもしれない。
このように、多くの人々の記憶に残るクルマというと、スポーツカーをはじめとする趣味性の高いモデルが多いように思う。
その一方で、数え切れないほどのニューモデルがデビューを果たしていることは知ってのとおりだ。華々しくデビューしたのち、時間の経過とともに人々の記憶から忘れられ、ひっそりと姿を消していくクルマも少なくない。
■10年ひと昔! 君は若かった!! いくつ覚えているか問いたい国産セダン7選
10年前に販売されていたセダンというと、トヨタマークX、ホンダシビックタイプR(FD2)・・・などなど。まだまだ現役モデルとして街中で見かけるモデルも少なくない。
スポーツ系や高級車など、印象に残るセダンがある反面、どちらかというと地味目な存在のモデルも存在した。今回はここにスポットライトを当ててみたい。
なお、今回のテーマにOEM車を含めていない。こちらは別の機会に譲るとして、あえて除外してある。あくまでも国産車メーカーが自社で販売してしているモデルのみとした。
■1.トヨタベルタ
「コンパクト・スタイリッシュ・サルーン」をテーマに開発された。発売された2005年当時、トヨタ車のセダンのなかでもっともコンパクトなモデルであった。
同クラスのセダンのなかでトップレベルの最小回転半径や低燃費を実現。車名のベルタは、イタリア語で「美しい、美しい人」という意味を持つ。
ベルタ概要
・販売時期:2005年11月〜2012年6月
・エンジン:直列3気筒DOHC、直列4気筒DOHC
・排気量:996cc、1298cc
・最高出力/最大トルク:71ps/9.6kgm、87ps/12.2kgm
・発売時の価格帯:119.7万円〜178.9万円
■2.日産ラティオ
世界150カ国以上で販売するコンパクトセダン・グローバル戦略車として開発された。日本市場においてはセダンを乗り継いできた5ナンバーセダンを求めるユーザーや、法人の営業車として使用されることも視野に入れられていた。
アイドリングストップ機能を標準装備し、ハイブリッド車を除く1.5L以下の4ドアセダンではクラストップの低燃費を実現した。
ラティオ概要
・販売時期:2012年10月~2016年12月
・エンジン:直列3気筒DOHC
・排気量:1198cc
・最高出力/最大トルク:79ps/10.8kgm
・発売時の価格帯:138.8万円〜187.6万円
■3.日産ブルーバードシルフィ
「もてなしと気配りのラグジュアリーミディアムサルーン」を商品コンセプトとして誕生したブルーバードシルフィ。美しく上質なデザインとその華やかさを纏い、大人の女性が自ら運転したくなるクルマとして誕生した。
なお、車名は造語であり、4大精霊(土・水・火・風)のひとつである風(空気)の精を表す英語SYLPHに由来する。結果としてブルーバードの名を冠した最後のモデルとなってしまった。
ブルーバードシルフィ概要
・販売時期:2005年12月~2012年12月
・エンジン:直列3気筒DOHC
・排気量:1498cc、1997cc
・最高出力/最大トルク:109ps/15.1kgm、133ps/19.5kgm
・発売時の価格帯:178.5万円〜241.5万円
■4.日産ティアナ
「モダンリビング」のCMが懐かしい初代ティアナの後継車としてデビュー。「モダンなデザイン」「乗るたびに実感する快適な乗り心地」「乗る人すべてに配慮した装備」を特長に掲げていた。
エンジンはV6 2.5L(2種)および3.5Lの計3本立て。全面ガラスの「スタイリッシュガラスルーフ」をクラス初採用、BOSEサラウンド・サウンドシステムなどティアナらしい「モダンリビング装備」が魅力的なモデルであった。
ティアナ概要
・販売時期:2008年6月~2014年1月
・エンジン:V型6気筒DOHC
・排気量:2495cc、3498cc
・最高出力/最大トルク:167ps/24.5kgm、185ps/23.7kgm、252ps/34.2kgm
・発売時の価格帯:246.8万円〜479.6万円
■5.三菱ギャランフォルティス
「三菱自動車のセダンとは?」を見つめ直し、その結果「安全」「環境」「快適」性能を高い次元でバランスさせた「グローバル基準のスポーティセダン」として誕生した。
快適、安全性とスポーティデザインの両立を掲げた。フロントマスクのデザインは、当時の三菱のデザインアイデンティティを示すもので、その最初のモデルがこのギャランフォルティスであった。
ギャランフォルティス概要
・販売時期:2007年8月~2015年3月
・エンジン:直列4気筒DOHC、直列4気筒DOHCターボ
・排気量:1798cc、1998cc
・最高出力/最大トルク:139ps/17.5kgm、240ps/35kgm
・発売時の価格帯:175.4万円〜318.1万円
■6.スバルインプレッサアネシス
2007年にデビューした3代目インプレッサに追加される形で誕生したのが4ドアセダンの「アネシス」だ。ギリシャ語で「安心」「快適」「信頼」「リラークゼーション」の意味を持つという。
アネシス専用のフロントグリルやボディーカラーが用意(2色)されたが、ターボモデルは設定されず、NAエンジンのみだった。
インプレッサアネシス概要
・販売時期:2008年10月~2011年12月
・エンジン:水平方向4気筒DOHC
・排気量:1498cc、1994cc
・最高出力/最大トルク:110ps/14.7kgm、186ps/19kgm
・発売時の価格帯:152.3万円〜225.8万円
■7.スズキSX4セダン
スズキが世界戦略車の第3弾として開発した「SX4」のセダンモデル。セダン用にセッティングされた足回りと、15インチタイヤ(195/65R15)を採用し、長距離走行における快適さを追求した。
また、フロントグリルとバンパーはセダン専用デザインとなっている。さらに、1.5L 4ドアセダンクラスにおいて最大となる515L(VDA方式)のトランクルーム容量を確保するなど、実用性と快適性を兼ね備えたコンパクトセダンだ。
SX4セダン概要
・販売時期:2007年7月~2014年9月
・エンジン:直列4気筒DOHC
・排気量:1490cc
・最高出力/最大トルク:110ps/14.6kgm
・発売時の価格帯:149.1万円〜171.7万円
■まとめ:10年ひと昔! 君は若かった!! 中古車市場で見つけたら即買い!?
10年前には二十歳だった青年もいまやアラサー世代に突入している。当時アラサーだった人たちはいまやアラフォー。本人が認めるかどうかはさておきすっかり「中年の仲間入り」だ。
今回取り上げたセダンの多くが排気量2リッター以下、コンパクトなモデルばかりとなった。結果として、どちらかというと地味な存在のモデルばかりかもしれない。
ファーストオーナーはセダンが好きだけど大柄なボディだと取り回しが大変・・・。想像するに、このような志向で選んだベテランドライバーではないだろうか。
仮にそうだとして、点検整備をきちんと行い、大切に乗られていた可能性がある。少なくともむやみに社外部品を組み込んだり、乱暴に扱われた可能性は低いだろう。それはつまり、中古車としては程度良好の個体を見つけやすいことを意味する。
絶滅危惧種に近い存在ともいえるだけに、あと5年後には市場から姿を消している可能性もある。いずれも世界戦略車であったり、コンパクトセダンとして煮詰められたパッケージなど、隠れた名車ともいえるモデルばかりだ。
後世に伝えるべく、レスキューを兼ねて愛車の候補の1台に挙げてみてもいいかもしれない。
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