2021年、イギリスを拠点とするスポーツカーメーカー・ロータスが、エリーゼ、エキシージ、エヴォーラ、3車種の生産終了を発表した。
最後のガソリンエンジンモデル「エミーラ」と、初のフル電動ハイパーカー「エヴァイヤ」の発売の準備が整ったからだとしているが、生産終了の発表以降3車種の販売台数は急増、過去最高を次々と更新するなど、その人気のほどを見せつけている。
今回はそんなエリーゼ、エキシージ、エヴォーラ、3車種の歴史を踏まえながら、日本のメーカーとも縁深いロータス26年の歴史を振り返る。
文/石川真禧輝
写真/LOTAS
■ロータス誕生から現在までを振り返る
昨年末、英国のスポーツカーメーカー、ロータスが自社製スポーツカー、3車種の生産を打ち切った。
理由はロータスが2022年以降に発売する新型車の準備が整ったからだが、生産を終了した3車種への人気はまだまだ高く、ロータスが生産中止を発表した2020年から、販売台数は急増。過去最高を次々と更新するほどだった。
その3車種とは、エリーゼ、エキシージ、エヴォーラ。日本でも人気がある車種たちだ。ちなみに、ロータスにとって日本市場はアメリカに次ぐ、2番目に大きい市場だ。
ロータスカーズ自体も日本とは関係が深かった。ロータス誕生から最新モデルまでを振り返りながら、改めてその魅力を探ってみた。
■レースで実力を認められ公道を走るスポーツカーを生産
ロータスは英国の天才技術者であり、商売人でもあったコーリン・チャップマンが1949年に第1号車を作ったことから始まった。
当時は既存のファミリーカーを改造し、レーシングカーに作りかえ、レースに出場していた。やがてその実力が認められ、ロータスの名が知られることとなった。
公道を走るスポーツカーを生産しはじめたのは1957年のこと。1955年に正式に英国の自動車製造社として認められ、本格的に市販スポーツカーの販売に乗り出した。
この時に開発したのが、ロータスセブンとエリートだった。セブンはオープンホイールで、組み立てキットとしても販売された。
このスポーツカーはロータスが生産を中止したのちも、その生産設備を受け継いだケータハムやドンカーブートなどがレプリカモデルを作り続けている。
もう一車種のエリートは、FRPでボディ一体構造にしたクーペだった。
この2車種はスポーツカーファンの間では評判になったが、生産性がよくないことで、商売としては成功しなかった。
■成功、創業者急死による迷走 日本との関係
商売として成功したのは、1962年に発表されたエランだった。2シーター、リトラクタブルヘッドライトのクーペ/コンバーチブルは、のちの日本製スポーツカーにも影響を与えた。
トヨタ2000GTはエランが開発したX字型のバックボーンフレームシャシーを参考にした。マツダロードスターは、ライトウェイトスポーツコンセプトを採り入れている。
エランはレースでも活躍し、1973年までに年間に1万2000台以上が販売された。
しかし、1980年代に創業者のC・チャプマンが急死したことで、ロータスは迷走する。
この頃に日本との関係が生まれる。チャプマンが死去する10年ほど前に、ロータスはトヨタと資本関係を結んだのだ。セリカXXの開発にはロータスからの技術提供も行われ、CMにはチャプマン自らも出演している。
トヨタとの関係はこの時から続いている。生産車ではエクラ、エクセルという高級志向のスポーツカー路線に進出した時、そのパワーユニットは、トヨタ製ZGR-FE型のV6、3.5Lエンジンを搭載していた。
しかし、この高級路線は成功しなかった。ロータスは次々に経営母体が変わった。
■エリーゼの登場
そのなかで登場したのがエリーゼだった。1995年にデビューしたエリーゼは初期モデルこそローバー製エンジンを搭載していたが、2004年にトヨタ製の2ZZ-GE型1.8L、直4エンジンに積みかえ、生産を継続してきた。
2006年からは1.6Lに1ZZ-FE型、2011年からは1ZR-FAE型のいずれも1.6Lが搭載されている。
エリーゼは全長3.8m、全幅1.72m、ホイールベース2.3mというコンパクトな2ドアオープンのボディで、アルミ合金の部材を接着前で組み立てたフレームとFRP製の外板で軽量につくられていた。
実際に試乗してみると、バスタブフレームはサイドシルが高く、幅広いので乗降にはコツが必要だった。室内は6MTのシフトはゲートからムキ出し、クラッチペダルの反発力も強く、低いドライビングポジションのフルバケットシートが標準だった。
もちろんロック・トゥ・ロック2.7回転のハンドルはノンパワーだ。スパルタンだが、クルマとの一体感はまさにライトウェイトスポーツだった。
エリーゼは数多くのバリエーションが生産された。1.8Lスーパーチャージャーモデルは最高速242km/h、0 -100km加速4.6秒というスーパーモデルもあった。
■さらに過激なモデル「エキシージ」の登場
エリーゼの成功で資金的にも余裕ができたことで、エリーゼのチューニングレースモデルとしてエキシージがデビューした。
2000年の発売当初はレース専用モデルだったが、2004年に1.8Lスーパーチャージャーのトヨタ2ZZ-GEエンジンを搭載し、市販を開始。
2011年からはトヨタ製V6、3.5Lの2GR-FE型+スーパーチャージャーエンジンのエキシージが誕生。このモデルもフルチェンジなしに2021年まで生産、販売された。
エリーゼのシャシーをベースにV6エンジンをミドシップにするためにボディは全長250mm、全幅50mm、ホイールベースは70mm拡大された。リアのサブフレームは新設計。
サイドシルの高いボディは、乗降性はよくなかったが、一度バケットシートに座れば、意外に視界はよく、前方フェンダーが見えるので車幅感覚もつかみやすかった。
動力性能は、エリーゼよりもさらに凄く、最高速は230km/hをオーバーした。クーペとルーフ部分が脱着できるロードスターが選べたほか、ミッションも6速MTとATが用意されたこともあった。
エキシージもデビュー以来、2021年までフルチェンジを受けずに生産された。
■2+2シーターの上級モデル エヴォーラ登場
3車種目は2009年に登場したエヴォーラだ。
ロータスとしては久々の2+2シーターという上級モデルだが、過去のモデルのように、いたずらに大きく、豪華にすることは避け、新設計されたフレームはわずかに大きい程度に収められた。
ミドシップの2+2ボディは、ホイールベース2575mm、全長は4370~4380mm、全幅1850mm。パワーユニットはV6、3.5L+スーパーチャージャーなので、エキシージと基本スペックは同じ。もちろんエンジンはトヨタ製を用いている。
車体はアルミ押し出し材を接着前で組み合わせている。これはエリーゼたちと同じ手法だ。
パワーユニットはV6、3.5Lスーパーチャージャーだが、チューニングは何種類か用意されていた。パワーもエヴォーラ400は400ps、410Nm、エヴォーラ410は416ps、420Nmなどで、最高速も300km/h(400)、305km/h(410)となっていた。
ミッションは6速MTとATが最終モデルまでラインナップしていた。ATのシフトはセンターコンソール上にN/R/D/Pが菱型形状にプッシュボタンで配置されていた。
室内は、セミバケットシートは着座が低かったが、サイドシルが低く、幅が狭くなったので、乗降性はエリーゼ/エキシージにくらべて格段に向上していた。ただし、後方視界はリアウィンドウが小さく、ドアミラーが頼り。
リアシートはクッションこそ厚めだが、レッグ、ヘッドスペースともに身長140cmが限界。しかもエンジンからの熱がリアウィンドウごしに伝わってきた。のちにリアスペースを取り去り、ラゲッジスペースとした2シーターモデルも販売された。
エヴォーラも発売から2021年までフルチェンジすることなく生産された。
■エリーゼ・エキシージ・エヴォーラからエミーラ・エヴァイヤへ 新時代に突入するロータス
こうしてロータスの3台のスポーツカーは各車、一度もフルチェンジすることもなく26年間(エリーゼ)、21年間(エキシージ)、12年間(エヴォーラ)で、合計5万1738台が生産された。
新しいロータスは、すでに発表されているように最後のガソリンエンジン(V6、3.5Lスーパーチャージに加え、AMGから供給される直4、2Lターボ)のミドシップ2シーター、「エミーラ」と、ロータス初のフル電動ハイパーカー「エヴァイヤ」が、日本での発売を待っている状態だ。
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