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 いつもは乗りバス記事を多く紹介しているが、今回は1つのバス停にスポットを当てて周辺を散策してみた。取り上げるバス停は「黒崎インター引野口」だ。もしかしたら福岡行き高速バスの予約サイトなどで見かけたことがあるバス停名かもしれない。今回は周辺の数少ないグルメスポットも合わせて紹介する。

文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)


引野口ってどこ?

 黒崎インター引野口停留所は文字通り黒崎インターにある。そして当該インターチェンジは高速自動車国道にはなく、北九州都市高速道路4号線にあるランプの名称なのだ。

黒崎インター引野口「高速バス停」

 歴史的経緯から以前は日本道路公団が管理する、北九州道路と北九州・直方道路の結節インターチェンジとして発展した。両有料道路は九州自動車道と関門自動車道をつなぎ、一体運用されていたので意識することなく直通できたが、九州自動車道全通にともない北九州高速に組み入れられた。

 よって形式はフルインターチェンジだが、現在はランプが正確な表現になっているものの以上のような経緯で黒崎インターと呼称される。

 当停留所に停車するのは基本的に西鉄グループだ。高速バスが走り始めた時から、西鉄は北九州市西部の高速バスターミナルとして位置付け、多くの路線が停車し、市内路線との接続も便利だった。黒崎バスセンターが鉄道との接続ターミナルで、当地は高速バスとの接続ターミナルという位置付けだ。

都市高速入口側の手前に待合所と高速バス停・奥に市内バス停・スロープ下にタクシー乗り場

 昔は単に「引野口」という停留所名だったが、これは周辺の地名「引野(ひきの)」の入り口にあたるので引野口だったのが、最近になり県外路線でも場所が分かりやすいようにしたのか「黒崎インター引野口」になった。当停留所の特徴は、高速バス乗り場は上りでも下りでも同じ場所に全部停車することである。

全部で4か所5停留所

 小倉方面・福岡方面のどちらから都市高速を降りてきてもバスはランプ接続道路の下をくぐり高速バス停に停車し、そのまま直進してまた都市高速に入っていく。

市内線はポンチョが来る場合も!

 高速バス乗り場には少し後方に市内バス停が1つあり、ここで合計2か所、ランプ高架の向かいにも市内バス停が1か所、そしてランプと交差する国道200号線上に黒崎方面行き1か所、国道211号線上に直方方面行き1か所の合計4か所5停留所がある。

 都市高速を走る路線バスは高速バス停後方の市内バス停に停車するが、実際にはバスが詰まると高速用と市内用は一体運用だ。本州方面夜行は東京、名古屋、米子・鳥取、倉敷・岡山行きが、九州島内長距離昼行は長崎行きが止まる。

 他には北九州空港行きが停車するが、福岡空港行きは廃止されたため北九州市西部から福岡空港への接続は極めて悪いので、JR+地下鉄に流れてしまった。小倉や福岡行きは以前は時刻表が不要だったが、現在では日中時間帯は毎時2本だ。

通過する特急バス

 黒崎インターを通るバスは、「はかた号」であれ「路線バス」であれ多くが停車するが、西鉄で1路線だけ黒崎インターを出ない(停車しない)短距離路線が存在する。それは小倉と直方を結ぶ特急バスだ。

高速バス停の時刻表

 比較的短距離で黒崎インターを出ると、それだけ時間がかかるので伝統的に停車しない。また高速自動車国道は走らないので種別は高速ではなく特急である。当地から直方方面へは、西鉄黒崎バスセンターから国道のみを走る急行バスが直方まで行き、国道211号線の直方方面行きバス停に停車する。

 直方へは福岡から高速、小倉からは特急、黒崎からは急行バスと西鉄グループの筑豊電鉄でJR筑豊本線に対抗する。これら直方行きのバスは西鉄バス筑豊が運行している。

とんこつラーメンが300円!

 黒崎インター引野口の高速バス停で下車して左側にラーメン屋がある。福岡県なのでとんこつラーメンだが、ここは1杯300円で昔から人気がある。店名はズバリ「バス停らーめん」だ。多少の変動はあるものの、少なくとも30年以上この価格を維持している。

「バス停らーめん」は高速バス停に最も近い300円ラーメン

 30年前に福岡でラーメンを食べると350円前後、チャーハン付きでも500円くらいだったことを考えると今でも300円はタイムスリップ級だ。ちなみに立ち食いなので、サクッと食べてバスに乗るイメージだろうか。

地元の隠れた名店はバス停裏?

 このあたりの道路は新規路線が作られ、国道が指定替えされるなどよく発達しているが、商業施設は少なく現在ではバス停から徒歩圏内にコンビニはない。次に取り上げるのは、国道211号線上の直方方面行きバス停の裏にある「夢工房トマト」だ。

「夢工房トマト」は直方方面行き市内バス乗り場の裏手「旧長崎街道」にある

 お好み焼き店だが、女将が料理が好きで調理師専門学校で学んだ腕前なので、メニューで出したもの(例えばカレー)にすぐにリピーターが付き、本業のお好み焼きと同等の地位を獲得するお店だ。

地元民に愛されるプロの味を提供し続ける

 お好み焼きそのものは関西風のものだが、個別の鉄板で焼いてそのまま出すので少し時間がかかる。記者が注文したのは「赤モツ玉」に「そば」ではなく「うどん」を入れる北九州風。もちろんそばのトッピングもできるが、焼うどんが名物の北九州ではうどんもおススメだ。

「赤モツ玉」にうどんのトッピング

意外と軽いチーズ入りの「トマト焼」

 最近の新メニューとしてトマト焼がある。トマトとチーズをはさみ、豚肉をのせて焼いたお好み焼きだ。聞いただけでは女性ウケはしそうだが重そうな感じがする。

 ちょうど記者と同年代の男性常連客が食べていたので聞いてみると、「最近はあまり重いのは気が引けるのでコレ(トマト焼)ばかりですよ」と、意外にも軽くしつこくないことを教えてくれた。

「トマト焼」(常連客の好意で撮影)

 そしてこれから1年中取り扱うという「壺やきいも」は、紅はるかを使用した蜜やきいもだ。食べてみるとサツマイモのクリーム、あるいは芋餡という感じだ。蜜が皮の外までにじみ出が外はしっかり、中はトロっとした焼き芋だった。

 ところで夏はどうするのかというと、焼いた芋を冷やして「アイス」で出すとのこと。これならば年中テイクアウトしてバス車内でもいただけそうだ。また250円なのは現状の仕入れ値が安いこともあるそうだが、同じものを東京で購入する3分の1の値段だ。

「壺やきいも」は夏はアイスで!

本州からSUNQパスを使えば途中下車してもカバー可能?

 本州方面から黒崎インター引野口が目的地ではなく、そのまま福岡に観光目的で乗車する場合、その後にSUNQパスを利用する予定があるのであれば、当地で途中下車して高速バス案内所でSUNQパスを購入すれば、ここから使い始められるので運賃的な無駄は発生しない。これは小倉でも同様だ。

黒崎インター引野口「市内バス停」

 前述の夢工房トマトがある前のいかにも古い細い道路は、国道211号線に並行する旧長崎街道なので沿線には史跡が多い。バスで超有名観光地「ではない」が、バスとの距離か近い歴史探索やグルメを楽しんでみてはいかがだろうか。

 参考:「黒崎インター引野口」が停車する福岡県外路線:東京線(はかた号)、名古屋線(どんたく号)、岡山・倉敷線(ペガサス号)、米子・鳥取線(大山号)、長崎線(出島号)
新型コロナ感染症により運休・減便している路線があるのでご確認の上でお出かけください。

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