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 三菱の新型アウトランダーPHEVが好調に売り上げを伸ばしている。2021年10月28日に先行受注を開始して、2022年2月5日における受注台数は1万台を超えた。1か月の販売目標は1000台だから、約3か月で10か月分の受注を獲得したことになる。

 先代アウトランダーは2012年の末に登場したから、9年ぶりのフルモデルチェンジになる。そこを考えれば、3か月で1万台の受注も納得できるが、三菱の販売店は全国に約550箇所と少ない。トヨタの約4600箇所に比べると12%、ホンダの約2200箇所と比べても25%に留まる。

 加えて現行アウトランダーは、ノーマルエンジンを用意しない。プラグインハイブリッドのPHEVのみだから、売れ筋価格帯は490万~540万円に達する。販売店の数が限られ、価格が高いことも考えると、3か月で1万台の受注は立派な数字といえる。

 この新型アウトランダーPHEV、どこがいいのか。本当にいいのか。中身をじっくり見ると、どうも「全部盛り」と言っていいほど気合が入っているもよう。好調の理由と実力をあらためてじっくり紹介します。

文/渡辺陽一郎
写真/池之平昌信

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■内装が上質だし居住性も走行性能も高い

 アウトランダーの販売が好調な理由は、さまざまな点において、商品力が優れているからだ。

 まず外観は、ダイナミックシールドと呼ばれるフロントマスクを軸に、水平基調の力強いデザインに仕上げた。ちなみにエクリプスクロスやデリカD:5は、ダイナミックシールドのデザインをマイナーチェンジで採用している。eKクロスやeKクロススペースには、標準ボディのフロントマスクもあり、日産のデイズやルークスとも基本部分を共通化する。

都会でもラフロードでもよく似合う新型アウトランダーPHEV。派手顔ではあるが、それなりに上品にまとまっており、こういうところ、三菱はセンスがある

 その点で現行アウトランダーは、最初からダイナミックシールドのデザインを採用した。従って車両全体の造形的なバランスも優れている。フロントマスクのフェンダーが左右からフロント側へ回り込んだ部分には、上からロービーム/ハイビーム/フォグランプが並び、三菱車の個性を表現する。

 ボディの側面は水平基調だから、ボンネットが見えて車幅やボディの先端位置も分かりやすい。ボディ後端のピラー(柱)は少し太く、斜め後方の視界では不利だが、四隅の位置は分かりやすい。全長は4710mm、全幅は1860mmと少しワイドだが、街中でもさほど運転しにくい印象は受けない。

 インパネの周辺など、内装の質も高い。ATレバーとドライブモードのダイヤルスイッチが収まるセンターコンソールには、最上級グレードの「P」になるとリアルアルミニウムが使われる。シートやインパネのステッチ(縫い目)も含めて、各部をていねいに造り込んだ。

 居住性も快適だ。身長170cmの大人4名が乗車した時、2列目シートのスライド位置を後端に寄せると、2列目に座った乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半まで拡大する。座り心地も優れ、腰から大腿部をしっかりと支えるため、長距離を移動する時も快適だ。

 3列目に大人が座る時は、2列目を大幅に前側へスライドさせる必要も生じるが、短時間であれば多人数乗車が可能だ。1年に数回、短い距離を多人数で移動するためにミニバンを買うのはもったいないと考えた時、アウトランダーの7人乗りは合理的な選択肢になる。

 運転感覚も優れている。PHEVではエンジンは主に発電を行い、駆動は前後に搭載されたモーターが担当するから、加速感が滑らかだ。エンジンは回転の上昇に伴って駆動力を高めるが、モーターは瞬発力が優れ、アクセル操作に対して機敏に反応する。そのためにアウトランダーでは、坂道に差し掛かってアクセルペダルを踏み増した時も、即座に駆動力が高まる。パワフルに感じられて運転しやすい。

 そしてプラットフォームの一新で剛性を高めたボディと、モーターによる4輪駆動を生かして、走行安定性も良好だ。車両重量が2トンを超える高重心のSUVでは、一般的には走行安定性を確保するために峠道などでは曲がりにくく感じることも多が、アウトランダーは良く曲がる。しかも後輪の接地性も損ないにくい。

 この背景にあるのは、三菱ならではの4輪制御技術だ。電子制御によってモーターの駆動力を機敏に増減させ、4輪独立ブレーキの制御も加えることで、ステアリングの操舵角に応じて正確に曲がる。ボディの重い高重心のSUVなのに、曲がることを諦めない。

■急速充電にも対応しており使い勝手◎

 その一方で乗り心地も快適だ。サスペンションが柔軟に伸縮して、突き上げ感を抑えた。売れ筋のPとGは20インチタイヤを装着するため、時速40km以下では路上の細かなデコボコを伝えるが、タイヤが路上を跳ねることはないから粗さも感じさせない。

 足まわりは良く曲がる性格で、乗り心地にも配慮したから、スポーティに走るとボディの傾き方が拡大する。ドライバーが身構える場面だが、挙動の変化が穏やかに進むため、不安定な挙動には至らない。カーブを曲がっている最中に、アクセルペダルを調節することで、車両の進行方向を内側に向けるコントロールもしやすい。

 この奥の深い運転感覚は、アウトランダーの醍醐味だ。スポーティなクーペやセダンは、低重心だからボディの傾き方が本質的に少ないが、アウトランダーでは、それとは異なるSUV独自の操る楽しさを味わえる。

悪路走破性も折り紙付きで、急な降雪にも頼りになる。なによりEVと違って、電欠となってもガソリンを給油すればすぐに走れるしヒーターも遠慮なく使える!! 外部電源供給も可能なので災害時にも頼りになる超オールラウンダー

 ドライブモードも装着され、エコ/パワーモードの切り替えに加えて、峠道などに適したターマックモード、悪路向けのグラベルモード、路面抵抗の大きな泥道や深雪に適したマッドモード、雪道用のスノーモードが備わる。

 例えば悪路でグラベルモードを使うと、ホイールの空転や横滑りがある程度は許容され、泥を跳ね上げながら力強く前進できる。この時には後輪側に装着されたモーターの高い駆動力を生かして、車両を積極的に内側へ向ける運転も行える。

 このようにアウトランダーは、舗装路から悪路まで、さまざまな場面で優れたコントロール性を発揮する。不意の降雪に見舞われた時も安心だ。

 そしてアウトランダーの特徴として、プラグインハイブリッドの性能も注目される。駆動用電池の総電力量は20kWhと大きく、PやGの場合、1回の充電で85kmを走行できる(WLTCモード)。

 従って日常的な短距離の移動では、ガソリンエンジンを始動させず、電気自動車のようにモーター駆動だけで走ることも可能だ。先代型に比べると、モーター駆動時の動力性能も向上した。駆動用電池が充電された状態なら、アクセルペダルを深く踏まない限り、発電用のエンジンは始動しない。

 長距離を移動する時は、エンジンで発電させるハイブリッドで走り、短距離では電気自動車という使い分けが可能だ。ユーザーにとって利便性が高い。

 特に日本の場合、総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住む。集合住宅では充電設備を設置しにくく、電気自動車の所有も難しいが、プラグインハイブリッドなら融通が利く。設備のある場所で充電して、それができない時は、エンジンで発電しながらハイブリッド走行を行えるからだ。

 この時に役立つのが急速充電器への対応だ。三菱の販売店や高速道路のサービスエリアなどで手軽に充電できる。約38分で80%の充電が可能だから、70km前後は走行できる。目的地の近くに急速充電器があれば、片道70kmの距離を電気自動車として走れる。

 そしてプリウスPHVは急速充電器を使えるが、国産ライバル車となるRAV4・PHVとレクサスNX450h+は対応していない。アウトランダーのPHEVなら、さまざまな使い方ができるわけだ。

■この装備なのになんでこんなに安くできるんだ

 価格が割安なことも特徴になる。アウトランダーPの価格は532万700円に達するが、機能や装備と価格のバランスを考えると、割安と判断できる。

 例えばRAV4・PHVブラックトーンの価格は539万円だから、アウトランダーPHEVの「P」は約6万円安い。それなのにアウトランダー「P」には、RAV4・PHVブラックトーンが装着しない急速充電機能、3列目のシート(7人乗り)、本革シート、BOSEプレミアムサウンドシステムなどが標準装着される。

 このような特徴があるため、アウトランダーPHEVの受注台数の内、約80%を最上級グレードの「P」が占めている。またユーザーの80%が、新たに三菱のPHEVを購入したという。先代型からの乗り替えだけでなく、他社のクルマを使うユーザーも多く購入している。アウトランダーの魅力の高さを物語るエピソードだ。

 三菱の関係者によると「今でも三菱車を(単に「三菱だから」ということで)敬遠するお客様は少なくない」とのことだが、アウトランダーの受注状況を見ると、三菱のイメージも大きく変わり始めている。

今後は軽自動車サイズの電気自動車も登場するから、地道に販売していけば、ファンは着実に増えていく。三菱はSUVと電動車で長い実績を持つメーカーなので、これからいよいよ本領が発揮される。アウトランダーと併せて、今後の三菱にも期待したい。

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