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「父上、お疲れでしょう。宿の者に何か運ばせましょうか」由利が気遣った。あやめに似て気立てが良く賢い娘だった。「そうだな。奈良の酒があれば頼む」酒はすぐに来た。さすがに奈良の酒は香りが良く豊かな味わいである。真備は酒を口にふくみ、蘇州の港で阿倍船人(ふなびと)に会った時のことを思い…