「プレジデントオンライン」が掲載した上場企業の従業員の勤続年数ランキングを巡り、最下位に挙げられた電子書籍関連会社のメディアドゥが、勤続年数が少ないのは合併によりリセットされたためだとして抗議、プレジデント側とトラブルになっていることが19日、分かった。メディアドゥの藤田恭嗣社長がこの前日、フェイスブックで公表した。
問題になった記事は、プレジデントオンラインが16日に掲載した「『最短は電子書籍配信会社の1.3年』平均勤続年数ワースト300社ランキング2021」で、他のビジネスメディアでも執筆実績のある企業リサーチの専門家が書いた。
ビジネスメディアでは近年、社員の待遇など企業の様々なデータをランキング化し、人気コンテンツとなっているが、今回は、上場企業3694社から有価証券報告書の内容に基づき、勤続年数をランキングにして発表した。メディアドゥの勤続年数は1.3年で、「ワースト300」の“頂点”に位置付けられた。
しかし、これに激怒したのはメディアドゥの藤田社長だ。1999年創業の同社は2017年以後の企業買収と組織再編を繰り返したことで、有価証券報告書に記載される社員の社歴が“社歴0ヶ月”にリセットされた経緯を説明。「合併があろうが、20年働いてくれている社員はもちろん社内では勤続年数20年とカウントしています」と指摘した。記事でも同社の企画経営室がリセットについて説明をしている旨を記載している。
藤田社長の投稿によれば、「事前に確認してきたその記者に、その説明をしてあった」というが、制度上、勤続年数がリセットされるにも関わらず、プレジデント側に“ワースト扱い”されたことで憤慨。藤田社長は抗議したが、「メディアドゥの名前が売れたんだから採用にも貢献しているはず」という趣旨の“開き直り”とも取れる回答をされたと主張しており、怒りを増幅させる結果になったようだ。
それでも怒りが収まらない背景
実際に応対したプレジデント側の担当者や執筆者がそうした回答を本当にしたのかは不明だが、「けんすう」の異名をとるnanapi創業者の古川健介氏はツイッターで「これ、「平均勤続年数ワースト」と書くとすごい人がやめるイメージになっちゃいますが、1位のメディアドゥさんの場合、M&Aとか吸収合併とかをすると、その社員たちは社歴0ヶ月からはじまるので、勤続年数は著しく下がるという仕組みなのでちょっとかわいそうな気も・・・」とメディアドゥ側に同情していた。
一方、藤田社長の怒りが収まらないもう一つの理由は、当該記事が日本最大のニュースプラットフォームであるヤフーニュースにも配信され、そこから拡散されていることだ。これには当事者である藤田氏だけではなく、ネットメディア業界からも懸念が。有力ネットメディアの編集幹部も経験した編集者は今回の騒動に「質が低い記事が拡散するのは怖い」と懸念を示していた。
プレジデントオンラインは昨年12月にも、有名寿司店「すしざんまい」の名物社長がアフリカ・ソマリアの海賊に面談し、「マグロ漁を教える。漁師になって稼げ」と説得したとする“エピソード”の記事を掲載。しかし、これが事実とは異なることが指摘され、削除する騒動があったばかりだった。
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