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WRCに本格復帰したトヨタ1998年 カローラWRCの遊び心溢れるビジュアルデザイン

 現在日本メーカーで唯一WRC(世界ラリー選手権)にワークス参戦中のトヨタ。2022年よりハイブリッドエンジンの新型ヤリスを投入して話題となっている。

 トヨタが2017年にヤリスで復帰する以前、1997年~1999年まではカローラWRCを投入。フル参戦となった1998年のカローラにはある特徴があった。そのデザインを振り返ろう。

文・写真/佐久間 健

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■トヨタ本格復帰に花を添えたカストロールチームのデザイン

復帰2年目の1998年、第3戦のサファリラリーでお披露目された開催地にちなんだデザイン。ゼブラ模様をモチーフとしたグラフィックだった

 2017年から先代ヤリス(日本名ヴィッツ)でWRCに復活、参戦を再開したトヨタワークス。2021年まで同型のヤリスでの参戦を継続し、ドライバーとコドライバー、そしてマニファクチャーチャンピオンを獲得した。

 そして2022年より新規定の「ラリー1」に適合したハイブリッドエンジンを搭載した新型ヤリスを投入。開幕戦モンテカルロでは、セバスチャン・オジエが2位を獲得した。

 今回は長年WRCの参戦を続けているトヨタワークスが、ヤリスで再始動する前、カローラWRCで参戦した時代の話だ。1995年にセリカでワークス参戦を終了すると、一年半のブランクの後に1997年のARCto1000湖ラリーからテスト参戦を開始した。

 マシンはカローラWRC。この車のベースとなるカローラは、日本国内では販売の無かった3ドアハッチバック車で、丸目のヘッドライトが設定されたもの。カローラの兄弟車のスプリンターカリブロッソに、ほぼこの丸目顔が設定されていたが、かなりのレア車なので、国内で遭遇することはほとんどなかった。

 それはそれとして、この1997年はテスト参戦ということで全5戦、フィンランド、インドネシア、サンレモ、オーストラリア、RACのみ。オーストラリアでディディエ・オリオールが3位に入ったくらいで、リタイヤも多く目立った成績は残せていない。ドライバーラインナップはオリオール、マーカス・グロンホルム、ニール・ベイツがラリーごとに出場。

 そして、1998年シーズンからはフル参戦。マシンのカラーリングは前年同様のカストロールカラーだが、デザインはリニューアル。プラス各イベントの国の特徴を加えたグラフィックを採用。これらはカストロールのデザインチームによって制作されたものとのこと。

■開催地にちなんだ『ご当地グラフィック』で出走

ご当地デザインが採用されなかったモンテカルロではダイスのグラフィックが予定されていたようだ

 しかし開幕戦のモンテカルロには、新しいカストロールのカラーになったものの、この企画のデザインは間に合わなかったのか、特にそれらしいイラストはなかった。また第2戦のスウェーデンも同様だった。

 そして3戦目のサファリから両サイドのドアにゼブラ模様が施されたデザインのカローラが公開された。このデザインのために本来フロントフェンダーにはられるステッカー、オーリンズとボッシュ、スピードラインなどはCピラーに移動となった。

 ところが4戦目のポルトガルでは、ふたたびイラストなしだった。本格的にこれらのデザイン採用となったのは5戦目のカタルニアからだった。

 カタルニアはフラメンコを踊る女性、コルシカはコルシカ島の旗に描かれた戦士の顔、アルゼンチンは鼻息の荒い牛、アクロポリスは古代ローマの戦士、ニュジーランドはキウイ、フィンランドは針葉樹。私的にはフィンランドといえば広葉樹の白樺かなと思うのだが(笑)

第9戦ラリー・ニュージーランドではニュージーランドの象徴であるキウイをデザイン

 地中海に面したサンレモは花、オーストラリアは一番分かりやすいカンガルー、最終戦のRACは傘。え、傘? という感じだがRACがおこなわれる11月は天気も悪く、英国は雨の日も多い。そう考えると傘かなと納得。

 ちなみにこれらのデザインが採用されなかったモンテはダイス、スウェーデンは雪の結晶、ポルトガルは魚の骨、イベントが中止になったインドネシアは椰子の木といったまぼろしのデザインがあったようだ。

 またこの年のチャンピオン争いは、三菱のマキネンとトヨタのサインツが最終RAC時点で2ポイント差でマキネントップだったが、マキネンは早々にクラッシュしてリタイヤ。

 サインツがチャンピオン決定と思われたが、サインツは最終SSのゴール手前300メーターでエンジントラブルでリタイヤという結末でマキネン三菱がチャンピオンになった年でもあった。

●解説●

 WRCのトップカテゴリーのタイトルは1997年よりWRカー規定を導入して争われることになった。年間25,000台以上生産されたベース車に4WDやターボエンジンの追加などの改造が可能となり、参戦メーカーの負担軽減を狙ったレギュレーションだ。

 トヨタワークスは1995年まで使ったセリカに代わって、回頭性に優れたハッチバック車のカローラを採用した。そうしてデビューしたカローラWRCは1997はテスト参戦の位置づけで、本格参戦は1998年から。

 ドライバーはディディエ・オリオールとカルロス・サインツで、最終戦まで両者でタイトル争い、最後にオリオールがタイトルを獲得した。なおカローラWRCは1999年にマニュファクチャラータイトルを獲得して、ワークス参戦を打ち切った。

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