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 今から約20年ほど前の2003年、大阪でアッと驚く交通覆面パトカーがデビューした。あまりの珍しさと隠密性の高さに、登場当初は捕まる違反者が続出! 交通覆面としては、前例のない車種だっただけに、登場当初、ネット上では「ガセネタ」とまで言われる始末であった。
 その覆面パトカーとは……、ステーションワゴンの「ステージア」であった。今回は、大阪府警の名物覆面パトカーとして活躍した、2台のステージアについて振り返る。

 なお、平成時代のパトカーをまとめた『平成~令和新時代 パトカー30年史』もあわせて参照いただきたい。

『平成~令和新時代 パトカー30年史』はこちら

文/有村拓真、写真/有村拓真、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】前代未聞のワゴンタイプ交通覆面。大阪府警のステージアを写真で振り返る!(9枚)画像ギャラリー

■異例のステーションワゴンタイプの交通取り締まり覆面

 2000年頃、交通覆面パトカーといえば、クラウンやセドリックが代表格だった。おまけに、鉄チンホイールや88ナンバーというのが、見分けポイントとされていた時代である。

 もちろん、レアな車種の覆面パトカーもあったが、スカイラインGT-Rや、以前の記事で紹介したソアラのような、どちらかといえば、スポーティなクーペタイプが連想されがちだった。

 そういう時代の2003年に、大阪府警でステージアの覆面パトカーは登場した。

 当時の警察車両の実績(常識)から考えれば、ステーションワゴンタイプの車種が交通覆面になるなど、とうてい考えられないことで、パトカーについての予備知識がある人ほど、「ステージアの覆面登場」は信じがたかったといえる。

 現在ならばスマホで撮影され、瞬時にSNSなどで拡散されて真偽がはっきりするが、当時はもっとスローな時代。ネット上の情報交換といえば、掲示板が主流で、画像がアップされなければ、「ガセネタ」として、信じてもらえないこともあったのだ。

■レアなのは車種だけじゃない。隠密性を高める秘策

 ステージアの覆面パトカーは府費により2台が配備された。ボディカラーはライトブルーとシルバー。グレードは300RXで、3L・260psの快速ワゴンだった。

 導入当初は交通機動隊の八尾分駐所と大東分駐所に配備されている。

府内の一般道を走行中のステージア覆面(ライトブルー)。リアからは一般車にしか見えない

 外観の特徴としては、フロントグリル内に前面警光灯、ルーフには反転式警光灯を備えていた。ここまでは、交通覆面パトカーとしては、お決まりの仕様だろう。しかし、ステージアには、警察車両ならば必ずあるはずの、警察無線用のアンテナが見当たらなかった。当時のクラウンやセドリック覆面では、トランクリッドにTLアンテナを装着するのが一般的で、覆面パトカーとして見分けるポイントにもなっていた。ところが、ステージアには、そのアンテナが見当たらない……。実は、アンテナは車内に設置されており、外からは確認できないようになっていたのだ。

 このようにステージアはレアな車種である上に、外観の特徴からも判別が難しく、非常に高い隠密性を備えていたのだ。そして「覆面パトカー=クラウン・セドリック」などという固定観念で安心しきっていたドライバーたちを、次々と取り締まっていったのである。

 また2004年6月3日には改正道路交通法が成立したため、施行後は運転中の携帯電話等の使用による取り締まりでもさらなる威力を発揮した。

■ステージアの覆面は、どこに出没していた?

 交通機動隊に配備されていた2台のステージア覆面パトカー、基本的には府内の主要な一般道で活躍していたわけだが、その活動範囲を振り返っておこう。

 まず、ライトブルーの個体。こちらは八尾市にある交通機動隊八尾分駐所の所属で、主に河内長野市・富田林市・松原市・堺市などの主要道路に出没していた。

違反車に停止を求めるステージア覆面(ライトブルー)。国道309号線ではよく活動が見られた

 もう一方のシルバーの個体は、大東市の大東分駐所に配備されており、大阪府と奈良県を結ぶ阪奈道路でよく活動していた。ここは、峠道もあったため、夜間は走り屋の取り締まりも行っていた。

 ところで、2台とも取り締まり時は、違反車両を誘導して停車すると、すぐさま赤色灯を格納し違反処理にあたっていた。このため赤灯を出しているシーンを見かけることが少なく、マニアや地元ドライバー以外には、ながらく知られざる存在でありつづけた。

 ちなみに、同時期には三重県警察自動車警ら隊にステージア白黒パトカーが2台採用されており、全国的にも珍しいと、パトカーファンの注目を集めた。グレードは250系だった。

三重県警察自動車警ら隊にはステージアが2台、県費(県の予算)で配備されていた。ステージアの白黒パトカーは新鮮だった

■10年以上の活躍! 退役までの変遷

 交通取り締まり用覆面パトカーは、一定年数を経ると別部署へと車両を「異動」させることが多く、このステージア2台も例外ではなかった。

 八尾分駐所のライトブルーステージアを例に挙げると、八尾分駐所(大阪ナンバー)から交通機動隊本隊所属(なにわナンバー)、その後高速隊の藤井寺分駐(和泉ナンバー)、最後は高速隊本隊(大阪ナンバー)の所属となり、かっこ内に示したように、その都度ナンバー変更も行われた。この個体は2014年中頃まで活動が確認されている。

 一方、シルバーの個体を最後に筆者が目撃したのは2015年11月だった。こちらの晩年は高速隊貝塚分駐所属であったため、和泉ナンバーを取得していた。

 シルバーの個体は災害警備訓練などでも活躍しており、交通規制訓練では資器材運搬などで活用されていたようだ。

災害警備訓練時のひとコマ。大東分駐所所属当時に参加していた

 なお、大阪府警では、ステージアが第一線を退いた頃の2011年にも、ステーションワゴンタイプの覆面パトカーが登場している。スバルレガシィツーリングワゴン(BR9型)で1台が府費で導入されている。こちらは高速隊所属なのだが、阪神高速道路環状線や神戸線などで頻繁に活躍している。ステージア同様にアンテナは車内に備わっており、外観上は全くわからない印象だ。

 こちらも導入から10年を超えているため、後継車両が気になるところ。またもやステーションワゴンタイプの交通取り締まり覆面が導入されるのだろうか。

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もっとパトカーについて知りたい方は『平成~令和新時代 パトカー30年史』もご覧ください。『平成~令和新時代 パトカー30年史』はこちら

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