1つのバス路線を追うのではなく特定の駅を発着地として路線バスで巡るプチ旅読み物記事。前回は相模原市の相模大野駅を発着地として地元御用達のスイーツやスポットを路線バスで巡った。今回はその第2弾で同市の橋本駅発着で路線バスに乗りぶらついた。沿線風景や停留所等の詳細は画像ギャラリーに収録しているので合わせてご覧いただきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
取材協力:相模原市総合メディア戦略室
土地勘がなく路線がさっぱりわからないので…
前回の相模大野駅発着の際にいろいろとスポットを教えてもらった相模原市総合メディア戦略室にこの際なので、とことんまで付き合ってもらい同市観光ガイドブック「相模原の栞」や「推し土産スイーツ」紹介パンフレットを元に説明を受けた。
そんなに出されても周りきれないので、候補地から路線図とにらめっこして記者が選択して回ることにした。
橋本駅は京王相模原線とJR横浜線・相模線が乗り入れるターミナルだ。リニア中央新幹線の神奈川県の停車駅は当地になる予定で、駅前では工事が進められている。前述のパンフレット類は橋本駅コンコースの他に相模原市の施設でも手に入れることができる。
相模大野駅発着はスイーツや食べ物が多かった印象があるが、今回はスイーツもあるが景勝地やショッピングを楽しみたい。記者個人的には掘り出し物が見つかって取材そっちのけで物色していたくらいだ。
本数は少ないが1系統だけで周りきる!
橋本駅発着で選んだのはズバリ1系統だ。神奈川中央交通(神奈中)の橋07系統のみだ。橋本駅北口から終点の鳥居原ふれあいの館(いえ)まで約50分かかるが、途中で降車してスポットを尋ねることにする。
この系統は本数が少ないのでダイヤを考慮して回らないと効率が悪い。同じ系統なので、往路でも復路でも構わないところが利点だ。記事通り全部回る必要はないが、気になったスポットを選択してプチバス旅をしていただきたい。
酒まんじゅうを買い食い?
最初に立ち寄ったのは和菓子店の志美津屋だ。橋本駅北口の前の大通りを横浜線沿いに北西に向かい500メートルほど。バスで行くほどでもないので最初だけ歩く。右側にいかにも和菓子店という趣の「志美津屋」がある。
昔ながらの「酒まんじゅう」は、酒の香りのよいところだけをいただき蒸しあげた懐かしい味でほっこりする。この他に食べてみた中で「かりんとう饅頭」も絶品だった。同店の「最中やすらぎ」は明治神宮に奉献した実績があり、神前に献納したことを証す奉献銘菓影が掲げられているので一見の価値あり。
お好きなものを求めて橋本駅に戻る道すがら食べてもいいし、これから途中下車する場所で食べてもよい。買い食いもまた旅の醍醐味だ。買い食いで出たゴミはもちろん、まとめて持ち帰るのがマナーだ。
景勝地「小倉橋」
橋本駅北口から乗車して約15分の小倉橋停留所で下車。ここには相模川に架橋された美しいアーチ橋を眺める。2本かかる橋のうち奥側が新小倉橋で、手前が小倉橋だ。
老朽化により架け替えが検討されたものの新小倉橋を新たに建設することになり、接続道路がまったく違うルートを通ることから小倉橋も残された経緯がある。
バスの系統は違うが新小倉橋も小倉橋も路線バスは通る。橋07系統は小倉橋の方だ。風光明媚な落ち着いた場所で、眺めているだけでも心が洗われる場所だ。夏場にはライトアップされたり灯篭流しが行われたりと、観光地としても一等地だ。
久保田酒造
小倉橋から順方向にまた橋07系統に乗車して約6分で無料庵停留所で下車する。妙なバス停の名称だが、これについては後述する。河原付近まで坂を下りていくと、何とも時代の付いた建造物が見えてくる。久保田酒造だ。
ここは1844年創業で蔵をはじめとして、多くの建造物が江戸時代や明治・大正期のもの。蔵の見学もできるが事前に予約が必要なので、詳細はホームページで確認されたい。
代表的な日本酒の銘柄は「相模灘」。丹沢水系の水と、おそらく長い時間をかけて育ってきたであろう蔵付きの酵母の働きもあり、スッキリとしたクセの少ないお酒だ。そしてその日本酒で仕込んだ梅酒もまた絶品で、いつまでも飲み続けていられる(と思う)ほど飲みやすく柔らかい梅酒がそこにはある。
粕取り焼酎ってご存知?
特筆すべきは日本酒だけではなく焼酎も作っていることだ。それも粕取り焼酎という記者の年代でもほとんど知らない、(日本酒の)酒粕を蒸留して得られる焼酎だ。独特の香りとクセが好みの分かれるところだが、芋焼酎に抵抗のない方であればチャレンジしていただきたい焼酎だ。
戦後日本の労働者層に出回った安価で粗悪ないわゆる「カストリ」は、この粕取り焼酎が語源ではあるが、またく異なるものであり、粕取り焼酎は蒸留する素材が芋や麦を発酵させたものではなく、日本酒の酒粕であるという違いがあるだけだ。
さて、降車した停留所の「無料庵」の名称であるが、諸説あるものの久保田酒造と関係があるというのが定説のようだ。江戸時代に久保田酒造が旅人に無料で休息できる場所を提供したことから、この名が付いたと言われている。
現在では無料で休息できる場所はないが、同社のお酒は直売しているのでお酒の大好きな方は蔵を見て味を見てはいかがだろうか。
桃月堂製菓舗
無料庵バス停からまた順方向に橋07京王に乗車、13分ほどで関停留所に到着する。下り方面バス停からは少し戻るが、上り法王バス停の目の前に和菓子店の桃月堂製菓舗がある。
ここだけで作られている「ゆず満月」は1個からでも購入可能な和スイーツだ。ゆずが当地の名産であることから、これを使用しふわっとした食感とさわやかな酸味が香るあんが特徴のスイーツだ。
千葉県からでも乗り換え1回?
関バス停から橋07系統で今度は終点の「鳥居原ふれあいの館」まで乗車する。関停留所からは約10分だ。その名の通り「鳥居原ふれあいの館」があり、目の前がバスの展開場兼折り返しバス停になっている。眼下に広がる湖は「宮ヶ瀬湖」というダム湖で、歩くのにも見るのにも優れた場所である。
ここまで来るのにかなり遠い道のりだったが、都営新宿線が京王相模原線とも直通運転しているので本八幡駅(千葉県市川市)から橋本行に乗車してしまえば、橋本駅で1回バスに乗り換えるだけで来れてしまうのが不思議だ。
「鳥居原ふれあいの館」では名産品や加工品など美味しいものから民芸品、手工業品まで幅広く取り扱っているので、掘り出し物が見つかるだろう。
何かが見つかるかもしれない!
記者はここで茶碗を見つけた。茶道や茶の湯の心得はまったくないのだが、こういうご時世なので家で抹茶を点てて一服するという風流まがいなことをしている。
しかし安価な野点(のだて)セットを購入したまでは良かったが、持ち運びができるようなセットなので茶碗が小さく、もう少し大きなものが欲しいと思っていたらここで見つけてしまった。
多くの陶芸品が展示即売されているが記者が見つけた茶碗はなんと600円。即買いしたのは言うまでもない。後で聞いてみると、なんとこの茶碗は当館の館長作だったことが判明。図らずとも作者から直接購入するという「栄誉」を手に入れた。そんな偶発的な出会いも旅の楽しさであり醍醐味だ。
ごはんを食べよう!
今回は往路ですべてを巡ったので、復路は橋本駅北口まで乗り通すだけだが冒頭で述べた通り、立ち寄り場所に合わせて往復のダイヤを見て計画していただきたい。
さて橋本駅に戻ってきたころには夕方になっていたので、夕食を取るために橋本商店街のホームページを探索。「藁焼き酒場 月夜に遊ぶ。」というお店を発見。しかし今のご時世で居酒屋としては時間制限があり、テイクアウトでの利用や定食メニューでごはん需要にもこたえている。
橋本商店街(共同組合)ホームページには飲食店だけではなく、周辺の多くの商店を網羅しているのでお店探しにはピンポンと過ぎて都合がよい。
藁焼とはその名の通り、藁(わら)で焼き上げる調理法で肉だけではなく海産物も提供する。これらにご飯を注文してちょっとぜい沢定食にすることもでき、融通が利くので相談してみると良い。
藁は短時間での勢いある火勢が特徴で、燃料の藁は燃えてしまうので、炭とは違い1回限りの使い切り。素材についた藁が燃える際の香りはスモークされたものに似るが、高温で表面を焼き上げたものは炙りやたたきに似る。
食材本来の味わいを引き出すのには塩が一番だが、同店では塩を含めた複数のタレを出してくれるので、そのあたりも含めて味わっていただきたい。
距離の割には気軽に行ける!
前述したように今回のプチ旅で行ったスポットは、最も遠いところで千葉県から橋本で1回乗り換えなので、お一人様でもご家族でも日帰りのプチ旅に出てみてはいかがだろうか。
投稿 はじめての街では路線バスに乗れ!! ~橋本駅発着でグルメとトレジャーハンティング!!~ は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。