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 道路交通法はこれまでも少しずつ改正が行われており、あおり運転の罰則強化や自転車の危険運転行為の罰則強化などが実現している。

 2022年も4月から改正があるが、もう一つピンとこない内容となっている。それは個人のユーザーではなく、事業者の管理強化という内容だからだが、もう少しわかりやすく解説しよう。

文/藤田竜太
写真/Adobe Stock(トビラ写真=Caito@Adobe Stock)

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■2022年に一部改正される道路交通法施行規則

2022年4月1日に道路交通法施行規則が一部改正される(PlutusART@Adobe Stock)

 毎年ちょこちょこ改訂される道路交通法。普通のドライバーは免許の更新の歳に、「近年改訂された道路交通法」について講義のなかで説明を受けるが、都道府県警のホームページや、交通安全協会のホームページにも改正のポイントなどが紹介されているので、ときどきチェックしておくといいだろう。

 それとは別に、現時点でわかっている2022年(令和4年)に一部改正される道路交通法施行規則について整理しておこう。まず令和4年4月1日に施行される、道路交通法施行規則第9条の10(安全運転管理者の業務)について。

●安全運転管理者の業務
(1)運転前後の運転者に対し、当該運転者の状態を目視等で確認することにより、当該運転者の酒気帯びの有無を確認すること(第6号)
(2)前記(1)の確認の内容を記録し、当該記録を1年間保存すること(第7号)

 法律用語(?)なので、例によってわかりづらいが、この改正は一般ドライバーには基本的に無縁で、「安全運転管理者」に課せられる新ルールと思っていい。

 道路交通法では、一事業所あたり、業務に使用している自動車(白ナンバー車の自家用自動車など)を下記の台数保有している場合、安全運転管理者の選任が義務となっている。

・乗車定員11人以上の自動車…1台以上
・その他の自動車(トラックを含む)…5台以上
(50ccを超える大型・普通二輪車…その他の自動車は0.5台分として数える)

■安全運転管理者に飲酒に関する義務が追加

今回の改正の目玉となるのが、安全運転管理者に飲酒に関する義務が追加されることである(scharfsinn86@Adobe Stock)

 その安全運転管理者に、2022年4月以降と2022年10月以降にそれぞれ飲酒に関する義務が追加されるのが、今回の改正の目玉。

 ここでは「運転前後の」とある通り、運転者が運転中に飲酒をしていなかったかをチェックするのがポイント。ただしその確認は「目視等」でOK。

 その代わり、下記を毎日記録して、1年間保存することが義務づけられる。

・確認者名、運転者
・運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等
・確認の日時、確認の方法
・酒気帯びの有無
・指示事項、その他必要な事項

 また「目視等で確認」とは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することとなっている。

 神奈川県警の資料では、下記の通りとなっている。

 「運転者の酒気帯び確認の方法は対面が原則であるが、直行直帰の場合など対面での確認が困難な場合にはこれに準ずる適宜の方法で実施すればよく、例えば、運転者に携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、

 (1)カメラ、モニター等によって、安全運転管理者が運転者の顔色、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法

 (2)携帯電話、業務無線その他の運転者と直接対話できる方法によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法等の対面による確認と同視できるような方法」

 思ったよりシビアではなく、柔軟な対応か可能だとも受け取れる。

■国家公安委員会が定めるアルコール検知器とは?

酒気帯びの有無に関する確認として「国家公安委員会が定めるアルコール検知器を用いて行うこと」とあるが、国家公安委員会が定めるアルコール検知器とは?(Otto@Adobe Stock)

 ただしそれは暫定措置で、令和4年10月1日以降、もう一段階酒気帯びの有無に関する確認が強化されるので要注意。

 具体的には4月1日施行の新ルールの「確認の方法」に「国家公安委員会が定めるアルコール検知器を用いて行うこと」(第6号)と、「アルコール検知器を常時有効に保持すること」(第7号)がプラスされる。

 ここで気になる国家公安委員会が定めるアルコール検知器とは、「呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有するものとすること」となっているので、高額な専用機器である必要はなく、一般に流通しているオーソドックスな検知器でかまわない。

 前出の神奈川県警の資料を見ると、「酒気帯びの有無を音、色、数値等により確認できるものであれば足り、特段の性能上の要件は問わないものとする。

 また、アルコール検知器は、アルコールを検知して、原動機が始動できないようにする機能を有するものを含む」と書かれているので、性能的に細かい制約はないようだ。

■5台以上のクルマを使用する事業所のアルコールチェックも義務化に

酒気帯びの有無の確認は必ずしも運転の直前または直後に都度行わなければならないものではないという(Alexander Raths@Adobe Stock)

 もう一点、「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者」における「運転」とは、一連の業務としての運転のことで、酒気帯びの有無の確認は、必ずしも個々の運転の直前又は直後にその都度行わなければならないものではなく、運転を含む業務の開始前や出勤時、及び終了後や退勤時に行うことで足りるともある。

 いずれにせよ有償運送・無償運送にかかわらず、1事業所あたり5台以上の自動車を業務に使用している事業所では、今年からアルコールチェックが厳しく義務化されるわけで、こうなると一般ユーザーだった無関係ではない。

 必ず飲酒運転の取り締まりもセットで強化されるはずなので、ビジネス・プライベートにかかわらず、少しでもアルコールを口にしたら、絶対にハンドルを握らないことが肝要だ。

 すでに、2021年に八街市で児童5人が死傷した事故が発生した千葉県では、昨年10~12月までの末までの3か月、飲酒運転の取り締まりを強化し、前年に比べ110件あまり摘発者が増えたという事例もある。

 飲酒運転に対する社会の目は厳しくなる一方なので、ドライバーは飲酒運転が引き起こす事態の重大性を今一度肝に銘じておくようにしたい。

■レンタカーを借りる際にチェックが行われる可能性も

2022年4月以降は、レンタカーを使用する際にもチェックを受けることになるかもしれない(yuruphoto@Adobe Stock)

 「1事業所あたり5台以上の自動車を業務に使用している事業所」となるとレンタカー会社も含まれるのだろうか? そしてレンタカーを個人で借りる場合はどうなるのかを、警視庁交通相談コーナーに訊いてみた。

 「個人でレンタカーを借りる場合、2022年4月以降も今のところは運転者の酒気帯びの有無を確認する義務はない」とのこと。

 「ただし、ご協力をお願いします、というカタチで、アルコール検知器でのチェックを頼まれることは考えられるので、その際はすすんで協力してほしい」という回答だった。

 さらに細かくいうと、1事業所あたり5台以上の自動車を業務に使用している事業所の従業員が、出張先等でレンタカーを運転し業務に従事する場合、使用車両がレンタカーであっても、酒気帯びの有無の確認は必要になる。

 使用する車両が社用車か否かは関係なく、運転目的が業務であるか否かで判断することも知っておこう。

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投稿 2022年4月に道路交通法改正!! なんと社用車を使う際のアルコールチェックが義務化!!自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。