最近たまに遭遇する「眩しすぎるライト」。夜、出くわすとびっくりするくらい明るい。あれって法規は通っているのか? そもそもどんなライトなのか。市販品なのか。調べてみると、どうやら違法品が出回っているらしく、しかも付けてはいけない場所に付けて走っているクルマがあるようで…。
文/加藤久美子
写真/加藤博人、AdobeStock@beeboys
■「LED作業灯」走行中の使用は厳禁のはずだが?
近年、後付けのLEDライトが安価で入手できるようになってきたからか、まともに光を浴びると眩暈がするくらい眩しいライトが増えつつある。夜の東名や名神など高速道路で出逢う確率が高い。
この眩しいライトの正体は、本来なら「作業灯」として使われるLEDライトのことで、走行中の使用はもちろん厳禁だ。夜間、照明がなく、暗い場所などで駐車している状態で作業を行う場合に重宝するライトゆえ、当然強い明るさを発する。
そのような明るいライトを夜間、クルマを運転中にまともに浴びたらどうなるか? 筆者も何回か経験があるが「幻惑」という言葉がぴったりで、目つぶしに遭うようなものだ。遠くからでも認識できるので、なるべく光を見ないようにして通り過ぎるようにしている。
それらの目つぶしライトがある場所は、大型トラックやダンプにおいては本来、自動車メーカー純正の「路肩灯」(「後輪灯」、「タイヤ灯」などとも呼ばれる)がある位置に取り付けられていることがほとんどだ。中には光源が見えないようやや下向きに取り付けられているものもあるが、ほとんどは周囲の交通への配慮がない。白く強い光を放つLED作業灯は乗用車ドライバーの視界に強烈な光となって飛び込んで来る。
目つぶしライトの詳細に触れる前に、トラックを含む自動車の側方に装着される灯火類についてそれぞれの基準など含め簡単に紹介しておきたい。
●側方灯(マーカーランプ)
トラックなど全長6m以上の自動車で装着が義務付けられている「側方灯」と呼ばれる照明は、保安基準第33条の2で灯火の色(だいだい色、黄色のみ)や光軸などについて細かく規定されている。夜間側方150mの距離から点灯を確認できるものであり、かつ、その照射光線は「他の交通を妨げないものであること」とされている。夜間や悪天候時などに他の交通からトラックのサイズ感を分かりやすく把握するためのもの。
●装飾のためのLEDサイドマーカーランプ
側方灯と同じ場所に設置される、主に装飾のためのサイドマーカーがこちら。保安基準で装着が義務付けられる「側方灯」は橙色(オレンジ色)のみが許可されるが、こちらは「(側方に向けて照射される)その他の灯火」として扱われるため、色に関してもピンクや緑、青、紫など自由度が高い。なお、「その他の灯火」に区分される照明でも自動車の前面に赤や緑、後面に赤や白のランプを使用することは不可となる。光度は1灯300カンデラまで。最近はLEDの普及で様々な色のマーカーランプが普及しており、300カンデラを超える違法な明るさのランプも増えつつある。
●側方照射灯(コーナリングランプ)
保安基準第33条の2に規定する随意灯で、方向指示器(ウィンカー)と連動してその指示方向を照らすライトのこと。乗用車にも装備されている。灯光は白色のみで光度は16,800カンデラ以下(平成27年3月31日以前に製作された自動車は5000カンデラ以下)に規定されている。
■乗用車ドライバーの目に刺さる強烈な光!
異常に眩しいLED作業灯は、前述した「側方灯」や「側方照射灯」、「LEDマーカーランプ」とは異なるもので、本来純正の「路肩灯」(後輪灯、タイヤ灯ともいう)が設置される場所に取り付けられていることがほとんどだ。
つまり、乗用車ならちょうど目の高さに位置しており、光源むき出しのLED作業灯から発せられる強い光は、斜め後ろや横方向の位置では思わず目をそむけたくなる眩しさだ。
それでも2車線以上の道路なら通り過ぎてしまえば問題ないが、片側一車線の追越禁止道路で延々とこの眩しいトラックの後ろを走るシーンは非常に苦痛。直線道路を真後ろについて走るならば視界には入ってくることはないが、カーブでトラックの側面が見える状態になると、位置関係によっては眩しいライトが網膜を焼き尽くさんばかりの勢いで視界に飛び込んで来る。
LED作業灯にはどのような規定があるのか? そもそもなぜ周囲に迷惑をまき散らしながら、点灯したまま走るのか?
路肩灯は道路運送車両法第42条で「その他の灯火」として以下に規定がある。
・300カンデラ以下
・点滅しない
・直射光や反射光が他の自動車の運転を妨げない
正しい路肩灯はこのようなもので、笠がついており下部にも覆いがあり後続車に幻惑を与えない構造になっている。
位置としては「路肩灯」がある場所に取り付けられているから「路肩灯風作業灯」だが、非常に眩しく走行中もずっとついている。なぜ?走行中も点灯したままなのか?
色々と取材を重ねたところ、得た結論は「カッコいいから」「目立つから」ということで、周囲の交通にとってまぶしく感じることなどはほとんど考えてないようだった。
友人の大型トラックドライバーに聞いたところ、あの眩しいLED作業灯は乗用車やSUVだけではなく、車高が高い大型トラックにも眩しくてウザイ存在とのことだった。
「本来、路肩灯は光源が他のドライバーから見えないように取り付けないとダメなんですが、眩しいLEDライトにはほとんど笠がありません。そして光源を下向きにつけているものもありますがごくわずかです。もちろん、規定の300カンデラを大幅に明るいライトですから走行中に使用することは厳禁なのです。
自動車メーカー純正の路肩灯はメーカーによって呼び名は違いますが、日野では『後輪灯』といって点灯するときはハンドル周りのスイッチをONにします。300カンデラ以下に規制されているので走行中の使用も可能です」(都内物流会社の大型トラックドライバー)
LED作業灯を路肩灯として使用できる仕様(サイズや取り付け方法など)として多くのLED作業灯が販売されており、どれも2000~3000円前後で安価だ。中には走行中の使用はできないことが明記されているサイトもあるが販売しているサイトは多数ある。点灯したままでは法令違反であることがしっかり明記されていないサイトも少なくない。
■乗用車にも増えている、グリルに取り付けられた四角い大きなLED
眩しいLEDライトで周囲に大迷惑を掛けているのはトラックだけではない。つい先日も高速道路を走っている時に、トンデモない軽ワゴン車に遭遇した。バックミラ―に映った時、「え? このクルマ何??」と驚いた。
近づいてきてやっとわかったが、フロントグリルに大きな四角いLEDライトがセットされて眩しさをまき散らしながら走行している軽自動車だった。よく見るとなんとヘッドライトが点灯していない。さらにバンパーにも眩しいフォグランプ? のような照明が上下左右に各2灯装着されている。ヘッドライトの代わり? としては認められない位置である。
ドライバーからしてみれば明るく、ヘッドライトの必要性は感じないかもしれないが、ヘッドライトを点灯せず、作業灯だけで走行するのはもちろん道路交通法違反である。
また、明らかに300カンデラ以上(推定数万カンデラ)ある作業灯を点灯したまま走ることは道路運送車両法違反となる。
トラックのみならず、乗用車にまで増えつつあるLED作業灯の規定はどうなっているのか?オートサロン会場でLED作業灯を出展している会社に聞いてみた。
「あくまでもこれらのライトは作業をするときに安全に明るく作業を行うための照明ですから、走行している時に点灯させてはダメです。これらのライトを保安基準に適合させる場合は走行中に点灯しないよう、Pレンジやサイドブレーキを引いた時だけに点灯できるよう配線をセットする必要があります」との回答だった。
ところで、国土交通省は違法LED作業灯についてどこまで現状を把握しているのだろうか?このたびの記事を書くにあたってLED作業灯や路肩灯、側方灯等の最新基準について丁寧にお答えいただいた国交省自動車局安全・環境基準課の担当者に聞いてみたところ…、
「路肩灯の代わりに規定に反したLED作業灯を使用している例があることは聞いていましたが、それらの眩しい光が乗用車のドライバーを幻惑させていることについては認識がありませんでした。」
とのことだった。今後はこちらも不正改造車として取締りを強化してほしいものだ。
強烈な白い光を放つLED作業灯が走行中も常時点灯しているのは他の交通にとっても非常に迷惑であり、さらには重大な事故を引き起こす危険もある。
しかもそれらのライトは走行中に常時点灯される必要性もない。巻き込み防止のために後輪付近を確認するためなら、メーカー純正の路肩灯、後輪灯のようにスイッチでON/OFFできる仕様にすべきだろう(明るさが300カンデラ以上ならスイッチをつけても法令違反)。
LED作業灯を走行中も点灯させているクルマのドライバーは、今一度、周囲の迷惑や危険性を考えてみてほしい。
【画像ギャラリー】「眩しい!!」と思うことが急増してませんか? 違法品を違法な場所へ装着しているクルマが増加!! 警察はぜひ取り締まり強化を!!(7枚)画像ギャラリー投稿 眩しいんだよぉ…!! トラックもSUVも眩しすぎる後付けLEDライト急増!! 点灯したまま走行は合法? 違法? は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。