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 発電所や工場などから排出された二酸化炭素(CO2)を分離して集め、地中深くに貯留・圧入するCCS(二酸化炭素・回収・貯留)。2050年のカーボンニュートラル(CN)実現に向けて普及が期待されている。石油、化学、鉄鋼などCO2多排出産業では、原料や製造プロセスを転換してもCO2排出をゼロにできないためだ。発電事業者も、国内で石炭やLNG火力発電を残すためにはCCSが有効になる。

 貯留方法には、地中の帯水層に封入するものと、油田・ガス田などに封入するものと2通りある。国際的シンクタンク「グローバルCCSインスティテュート」によると、現在稼働中のCCS施設27件のうち約8割が、CO2を地中に圧入・貯留して油・ガス田の生産性を高めるCO2-EOR(原油増進回収)となっている。またCNの潮流のなか、資源開発における脱炭素化の要求が高く、海外の産油国・メジャーもCCSの取り組みを強化している。世界で135件の大規模CCSプロジェクトがあり、うち71件は21年に新たに発表された案件という。

 資源エネルギー庁も、日本企業のCCS事業支援のため先月28日、有識者会合「CCS長期ロードマップ検討会」を設置。国内企業が30年中に事業を開始できるように工程表を策定する方針だ。エネ庁は国際エネルギー機関(IEA)の試算から、50年に日本はCCSによって年間約1・2億~2・4億トンを貯留する必要があるという目安を示した。仮に同量すべてを国内貯留する場合、50年までの20年間で毎年12~24本の圧入井を掘削する必要があり、費用は少なくとも1・2兆円規模。これを、どのように負担していくのかが課題となろう。

 また海外で実施中のCCSはほとんど、枯渇した油ガス田にCO2を貯留している。何億年単位で石油・ガスが貯留していた地層で、CO2が漏れ出る心配はほぼない。ただ日本には枯渇した油ガス田は微々たるもので、帯水層に封入するしかない。

 その際に想起しなければならないのは、1980年代にカメルーンの火山湖であるマヌン湖とニオス湖で起きた悲劇だろう。湖水爆発により湖底に蓄積されたCO2が大量に放出され、2000近い人命が失われた。日本は苫小牧のCCS大規模実証試験事業で30万トンのCO2圧入に成功したが、地震国であり帯水層に貯留するしかないなかで、同様の事故が起こる可能性はゼロとはいえないだろう。国内CCSの社会実装には、コストや技術だけでなく、社会受容性確保という大きなハードルが残されている。

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