ペルセウスプロテオミクスは、新型コロナウイルス感染症の重症化予測に用いる簡易検査キットの開発戦略を見直す。診断薬事業を手がける湧永製薬(東京都新宿区)とこのほど共同開発契約を締結。対象疾患を拡大し、ペルセウスプロテオミクスが販売する血管炎症マーカー「ペントラキシン3(PTX3)」検出試薬を応用したキットの実用化をまず目指す。臨床試験も新型コロナをはじめ、敗血症など複数疾患を対象に順次実施する計画で、1年程度での上市も視野に入るとみられる。
ペルセウスプロテオミクスの横川拓哉社長が化学工業日報の取材に応じ、「まず迅速診断キットを開発し、その後疾患ごとの予見可能性を検証していきたい」との考えを示した。これまで新型コロナ感染症の重症化予測キットに焦点を絞ってきたが、足元でのオミクロン株への置き換わりなどにより重症化率は減少している。半面、感染者数は激増しており、こうした状況下ではハイリスクの患者を見極めて対応することが困難だと判断した。
そこで今回、診断薬の開発実績が豊富な湧永と組み、類似の全身性炎症を引き起こす疾患を幅広くターゲットにして開発を推進。キット自体の実用化を優先することとする。
新たな対象の一つに位置づけるのが細菌が体内で増殖して全身で炎症を引き起こす敗血症。敗血症は死亡率が非常に高く、感染症や外傷などさまざまな要因で発生する。だが、発症を予測する手段は実用化されていない。「敗血症はコンスタントに患者が多く、ニーズも大きい」と横川社長は語る。
キットに活用するPTX3は血管の炎症が起こると血管内皮などから放出されるたんぱく質で、炎症マーカーとして一般的なたんぱく質「CRP」などと比べて高感度なのが特徴だ。とくに全身炎症による重症化リスクが事前に判明するという。新型コロナウイルス感染症とよく似た全身炎症を引き起こす川崎病では、重症化の前に必ずPTX3が急速に増加することが分かっており、敗血症でも可能性を探っていく。
一方、新型コロナ重症化予測キット実用化にも継続して取り組む考えだ。横川社長は、「今後も新規変異株の流行などで感染者数が激増するケースは十分あり得る」としたうえで、「重症化の予見ができれば医療への貢献も大きい」と意気込む。
新型コロナの重症化予測に活用できれば、体内に直接投与するワクチンや治療薬と異なり、検体を採取するだけで死亡や後遺症の回避につながる。また、優先順位をつけた治療の実現につながり、医療提供体制の効率化が期待できるとしている。
(堤洸士郎)