BMW電動化のセカンドステージと位置付けられるiX。バッテリーEV(BEV)であるiXには40と50の2つのグレードが用意されているが、松田氏が今回試乗してくれたのは上級モデルのiX xDrive50。
長大な航続距離と贅沢で快適な空間、そしてパワフルな加速が楽しめる、新章に突入したBMWのEVの底力を堪能した!
※本稿は2021年12月のものです
文/松田秀士、写真/ベストカー編集部、撮影/佐藤正勝
初出:『ベストカー』2022年1月26日号
■個性的な顔とシンプルで斬新なデザイン
iXはBMW電動化のセカンドステージを意味するBEV(バッテリーEV)だ。iXには40と50の2グレードが設定されるが、今回試乗したのは上級モデルのiX xDrive50。
まずはこの宇宙人のようなフロントマスク。近くに寄ってよーく眺めると、BMWの象徴であるキドニーグリルは樹脂製のパネルにプリントしただけで不思議な感じ。
サイズは全長4955×全幅1965×全高1695mmだからX5より少し背が低いくらいでほぼ同等。プラットフォームは共通ではなく、ボディと段差のないサーフェースなドアハンドルに手をかけ開くと現われるサイドシルは明らかにカーボン製。テールゲートもカーボンだ。
ほかにもボディを構成するマテリアルに高張力鋼板やアルミ材がふんだんに採用され、やはりコイツもBMWの流儀に倣い前後荷重配分50:50に仕立てられている。
プラットフォームは内燃機関の搭載を眼中に入れず、かといってBEVに固執せず(つまりは燃料電池など視野に入れて)、次世代の新規プラットフォームとして造り上げたのだという。
シートに座ると、これまでのBMW車のコックピットとは明らかに異なる空間を目にする。助手席にまで及ぶ横長でメーターパネル(12.3インチ)と一体化したカーブド・ディスプレーと呼ばれる湾曲した液晶パネル(14.9インチワイド)はタッチ式でスクロールすることで目的のコンテンツにアクセス。
これによって多くのスイッチ類が省略され、わずかに残った他モデル同様のiDriveコントローラーといくつかのボタン式スイッチとを併用して操作。慣れるまでに時間を要しそうだが、インパネを含め足元までスッキリ!
とにかくその空間は閉塞感が皆無。サイドブレーキスイッチはなくPに入れると自動で作動する。
■これまで乗ったEVで最も速いかも!
では、さっそくDレンジに入れて走り出す。エンジンがないから室内は静か、とはわかっているがそれにしてもロードノイズなど皆無と言っていいほど走行中の超静粛。そんな室内にモーターの音かと思いきや、アクセルワークにシンクロする低いエンジンノイズ? のようなものが聞こえる。
実は著名な映画音楽作曲家による効果音なのだ。ドライブモードをパーソナルからスポーツにスイッチするとより強調されエフィシエントではOFFになる。
ではフルスロットル! シートに押し付けられた瞬間にワープするような加速は0〜100km/h加速4.6秒。
強烈な加速を演出するAWDモーターパワーはフロントが190kW(258ps)に対してリアは230kW(313ps)とよりパワフル。AWD性能とハンドリングにこだわる前後パワー配分だ。だからフル加速した時に先にリアが沈み込み、若干ホイールスピンするような蹴飛ばし感がある。
足回りはエアサスなので、乗り心地も驚くほどコンフォート。しかしスポーツモードにすると、Mスポーツばりのピシッと締まった足さばきに変化する。しかも車高を下げて接地感が増した安定感のあるコーナリングが楽しめる。
これには同位相に最大2度/逆位相に3.2度の後輪操舵もひと役買っていて、ホイールベースが3000mmというモデルながら狭い道での取り回しもかなりよかった。
BEVにとって航続距離は気になるところだが、なんと650km(WLTCモード)。無充電で東京から大阪、いや神戸も越えるね。0.25というCD値も貢献しているが、業界トップの111.5kWhの巨大リチウムイオンバッテリーによるものだ。
●iX40とiX50の違い
前後合算のモータースペックはiX40が326ps/64.2kgmに対しiX50は523ps/78.0kgmのほか、エアサス、アクティブステアリングはiX50が標準でiX40は非設定。iX50の買い得感が高い。価格はiX xDrive40が981万円、iX xDrive50が1116万円となる。
【画像ギャラリー】BEV化してもキドニーグリルは健在!? 電動BMWのセカンドステージiX xDrive50に試乗!!(18枚)画像ギャラリー投稿 速い! 快適!! 航続距離長ッ!!! BMWのEVが新章突入iX試乗 は 自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。