今回は、「基板の初歩的な用語」についての説明です。
初めに
身の周りには色んな電化製品があります。
冷蔵庫・電子レンジ・洗濯機・掃除機・ドライヤー…生活必需品の多くは電化製品です。
そんな電化製品の中には、必ず基板と呼ばれる緑の板が入っています。
一言に基板と言っても、基板を構成する要素には様々な名称が付いています。
本記事では、初歩的でよく聞くことになるであろう用語の意味を簡単にまとめてみました。
基板について学ぶ前に軽く目を通しおくと良いかと思います。
用語説明
この記事で紹介している記事は以下の通りです。
- PCB
- PWB
- Vカット
- エッチング
- ガーバーデータ
- クリアランス
- サーマルランド
- シルク
- スリット
- スルーホール
- ソルダーレジスト
- ノンスルーホール
- パターン
- パッド
- ビアホール
- プリント基板
- ベタパターン
- ミシン目
- ランド
- 黒化処理
- 現像
- 捨て基板
- 半田面
- 部品面
- 露光
普通に「数字」→「アルファベット」→「ひらがな・カタカナの五十音順」→「漢字の読み仮名で五十音順」という並びにしています。
PCB
部品実装後の基板のこと。
Printed Circuit Boardの略。
PWBに部品を実装したらPCBになる。
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PWB
部品実装前の基板のこと。
Printed Wired Boardの略。
生基板とも呼ばれる。
PWBに部品を実装したらPCBになる。
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Vカット
捨て基板の切り離しをサポートするV字型の溝のこと。
ラジオペンチなどで捨て基板部分を挟んで捻るとVカットに沿って簡単に切り離しができるようになっている。
素手でもいける。結構気持ちいい。
ミシン目と用途は同じだが、こちらはバリが残らない。
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エッチング
プリント基板製造時に、必要な銅箔回路パターン以外を溶かして取り除くこと。
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ガーバーデータ
プリント基板を作る為に必要な部品配置(パッドやランドの位置)情報・層ごとのパターン配置情報・シルク情報などのデータのこと。
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クリアランス
プリント基板のパターンの距離や間隔のことです。『GNDパターンと信号パターンはクリアランス3mm』と言われたら、『GNDパターンからは3mm以上の距離を空けて信号パターンを配置してください』という意味になるよ。
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サーマルランド
はんだ付けの際、熱がパターンに逃げてはんだが溶けにくくなるのを防ぐ為にパターンとの間に切り込みを入れたランドのこと。
GNDパターンのような太いパターンの場合、通常のランドだと熱が逃げて中々はんだ付けができないということが発生するので、サーマルランドにしてあることが多い。
ただし、パターンとの接触箇所が減ることによって抵抗値が増加するので、電流量によってはあえて通常のランドにする必要がある。
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シルク
基板に印刷された文字や図形のこと。
部品外形や部品番号を表示することで、どの位置に何をはんだ付けすれば良いか見てわかるようになっている。
基板自体が何用なのかを示す型式を印字していることも多い。
一般的には白色。
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スリット
捨て基板を切り離す為に設けられた幅2mm程度の細長い切り抜き穴のこと。
パターン間の絶縁距離確保の為に使用することもある。
Vカットと用途は同じだが、こちらはバリが残る。
ミシン目と同じ意味。
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スルーホール
ランドの中心にある穴のこと。
[Through Hole]を略してTHと呼ぶことが多い。
DIPタイプの部品の足(リード)を通してはんだ付けをするための穴。
その為、NTHと違って穴の周りには銅箔部分が存在する。
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ソルダーレジスト
パターンを覆うように塗られた耐熱性・絶縁性ありの緑色のインクのこと。
基板によっては青だったり赤だったりもする。
安いのは緑。
レジストと呼ばれていることが多い。
ソルダー=はんだ、レジスト=抵抗なので、はんだの付着に対して抵抗を持っている物質を指している。
パッドやランドのような銅箔を露出させる必要のある部分以外にソルダーレジストを塗ることで、部品実装時に不要な部分にはんだが付着しないようにしている。
絶縁していると言っても非常に薄い膜状になっているだけなので、金属で触れるのは控えるべき。また、ほこりや湿気といったストレスからもパターンを守る働きがある。
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ノンスルーホール
ただの穴のこと。
[Non Through Hole]を略してNTHと呼ぶことが多い。
ねじを通して基板を固定する為の穴。
その為、THと違って穴の周りには銅箔部分は存在しない。
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パターン
銅箔によって基板上に引かれた電気を通す配線のこと。
やろうと思えばカッターで回路を断絶させたりできる。
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パッド
SMTタイプ(表面実装タイプ)の部品を基板にはんだ付けする為の銅箔部分のこと。
四角の形状をしている。
はんだ付けの際は部品を強く引っ張らないように注意。簡単に剥がれます。
CPUなどははんだ固定箇所が部品の真下にあったりする為、手実装は不可能。
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ビアホール
基板の各層にあるパターン間を接続するための小さな穴。
ビアと呼ばれることが多い。
あくまで層のパターンを繋ぐのが目的なので、スルーホールのように大きくする必要がない。
層ごとに存在するGNDパターンをすべて共通にする際などによく用いる。
6層などの多層構造になった場合、内層同士で接続されているだけだと外観からビアがあるのか判断できなかったりする。
基板全層を貫通するビアをスルーホールビア、基板の一部の層を貫通するビアをインナービアと呼ぶ。
インナービアの中に基板表面と内層を貫通するブラインドビア、基板の内層同士を貫通するベリッドビアが存在する。
覚えるのはビアだけでいい。
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プリント基板
電線の代わりに銅箔で回路を形成することで小型化し、様々な電子部品を実装するための基板。
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ベタパターン
銅箔によって基板に引かれた電気を通す配線であるパターンの内、ベタ塗りをしたように大きな面積となっているパターンのこと。
ベタと呼ぶことが多い。
パターンの太さは電流を流せる大きさに比例するので、GNDや電源のような大きな電流が流れると想定できるパターンはベタパターンになっていることが多い。
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ミシン目
捨て基板を切り離す為に設けられた幅2mm程度の細長い切り抜き穴のこと。
パターン間の絶縁距離確保の為に使用することもある。
その名の通りミシン目のように見える。
Vカットと用途は同じだが、こちらはバリが残る。
スリットと同じ意味。
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ランド
DIPタイプ(リードタイプ)の部品を基板にはんだ付けする為の銅箔部分のこと。
穴(スルーホール)の周囲にある円形状の銅箔部分を指しており、穴にリード部品の足を差し込んで、ランドにはんだ付けすることで固定します。
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黒化処理
プリント基板製造時に、エッチングした後の回路パターンを描いている銅箔表面をわざと粗くすることでが積層時に密着しやすくする工程のこと。
酸化処理すると黒く変色するから黒化処理です。
露光→現像→エッチング→黒化処理の順番。
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現像
プリント基板製造時に、露光させた部分以外の余分なドライフィルムを溶融除去する工程のこと。
露光→現像→エッチング→黒化処理の順番。
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捨て基板
基板の不要部分で、切り離して捨てる部分のこと。
どうしても基板の作成は四角になってしまうので、台形や円形などの基板が欲しい場合はミシン目やVカットを駆使して四角から加工する必要があります。
その際に余る部分です。
半田面
部品面に配置したリード部品の足(リード)を固定する側の面のこと。
こちらが裏面です。
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部品面
基板に部品を実装する面のこと。
リード部品が実装されて物々しい見た目になっている方が部品面です。
※ SMT部品は部品面にも半田面にも実装されます。
こちらが表面です。
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露光
プリント基板製造時に、必要な銅箔回路パターンのみフィルムに焼き付ける工程のこと。
露光→現像→エッチング→黒化処理の順番。
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以上、「基板の初歩的な用語」についての説明でした。
【基礎から学ぶ基板】
◎基板の初歩的な用語 ~PWB・PCB・パッド・ランドなどの意味
◎ユニバーサル基板/ブレッドボードとは? ~回路を試作する時に重宝する基板
◎リード部品とは? ~アキシャル部品とラジアル部品の違い
◎部品の実装タイプ ~DIPタイプとSMTタイプの違い
◎プリント基板とは? ~PCBとPWBの違いと多層構造について
◎はんだ付けの基礎 ~はんだの材料や接合原理について
◎フラックスとは? ~フラックスの用途と種類
◎はんだ付け仕方の違い ~フローとリフローとは?
◎リフローの温度プロファイル ~ピーク温度とプリヒート温度とは?
◎はんだ付けの不良事例 ~はんだボールやボイドとは何なのか?
◎プリント基板の製造工程 ~大まかな流れをわかりやすく解説!
◎基板の表面処理 ~半田レベラーや水溶性プリフラックスの特徴