今回は、「ダイオードの動作原理」についての説明です。
ダイオードとは?
一般的なダイオードとは、n型半導体とp型半導体を接合したものです。
n型半導体とp型半導体を接合することをpn接合と呼び、一般的にはダイオードと言ったらpn接合ダイオードのことを指します。
ダイオードには、電流を一定方向にしか流さないという特徴があります。
電流はp型半導体からn型半導体方向には流れますが、n型半導体からp型半導体方向にはほとんど流れません。
ちなみに、n「型」でもn「形」でも良いみたいですが、別の記事を書いている時に「型」の方が都合がよくなったので一部の図以外は「型」に修正しています。
以下は一般的なダイオードの構成図、回路記号、イメージ図です。
先程述べたように、ダイオードはn型半導体とp型半導体を接合したものです。
n型半導体とp型半導体の接合部付近では電子と正孔が結合する為、キャリアの存在しない空乏層という領域が発生します。
ダイオードはp型半導体からn型半導体方向へ電流が流れると述べましたが、一般的にはアノード(A)からカソード(K)へ電流が流れると言います。
実際のダイオードは、イメージ図のようにカソード(K)側に目印があります。
図記号の縦線の配置もカソード側に付く為、実物と図記号を併せて覚えると記憶に残りやすいです。
では、pn接合ダイオードの電流の流れの原理について考えていきます。
図2のようにp型半導体側に直流電源のプラス側を繋ぐと、異極性同士で吸引力、同極性同士で斥力が発生する為、電子が循環して電流が流れるようになります。
電子が電源のマイナス側から出てプラス側へ戻っていくことで電流が流れる為、n型半導体の中の電子がp型半導体側に押し出されて回路内で循環しているわけです。
このように、電流が流れる方向を順方向もしくは順方向バイアスと呼びます。
ちなみに、キャリアが常に移動している為、空乏層は無くなります。
逆に、図3のようにn型半導体側に直流電源のプラス側を繋ぐと、異極性同士で吸引力、同極性同士で斥力が発生する為、電子が循環せずに電流が流れなくなります。
電子が電源のマイナス側から出てプラス側へ戻っていくことで電流が流れる為、p型半導体の中の正孔と電子が結合してそこで電子の流れがせき止められてしまうわけです。
このように、電流が流れない方向を逆方向もしくは逆方向バイアスと呼びます。
ちなみに、キャリアが引き寄せられて空乏層はより広がります。
逆方向の場合、実際は電流がほとんど流れなくなります(数nA~数μA程度は流れる)。
ダイオードの整流作用
ダイオードは順方向に電流を流しやすく、逆方向に電流を流さないと述べました。
この作用のこと整流作用と呼びます。
また、ダイオードの整流作用を利用して交流を直流に変換する回路のことを整流回路と呼びます。
ダイオードの電圧-電流特性は以下のようになっています。
順方向の場合、0.6~0.7V程度の電圧が印加されると急激に電流が流れるようになります。
この時の電圧を順方向電圧と呼びます。
量記号はVfです。(VF表記のこともあるのでどちらでも良いのかもしれないです)
順方向電圧には製品により差がありますし、温度による変化も考えられる為、実際に使用する場合はデータシートをよく確認しましょう。
ちなみに、ダイオードに順方向電流が流れると順方向電圧の分だけ電圧が下がります。
逆方向には電流が流れないと言いましたが、負方向に電圧を上げていくとある点からダイオードの整流特性が無くなって急激に電流が流れます。
この時の電圧を降伏電圧と呼び、この現象のことをアバランシェ降伏と呼びます。
量記号はVRです。
この特性を利用し、降伏電圧を大幅に低くすることで一定の電圧を作り出せるツェナーダイオード(定電圧ダイオード)というものもあります。
半波整流回路と全波整流回路
ダイオードの整流作用を利用した回路に、半波整流回路と全波整流回路というものがあります。
図5のような回路が半波整流回路です。
負荷にかかる電圧を見てみると、横軸がπ~2π[rad]の範囲のマイナス方向の波形(逆方向電圧)が無くなり、0~π[rad]の範囲のプラス方向の波形(順方向電圧)のみが残ります。
このように、半分の波形を整流する回路だから半波整流回路です。
原理は単純で、ダイオードがマイナス方向の波形(逆方向電圧)を通さなくなっているだけです。
図6のような回路が全波整流回路の一例です。
このようなダイオード4個をブリッジさせた回路をブリッジ形整流回路と呼びます。
負荷にかかる電圧を見てみると、横軸がπ~2π[rad]の範囲のマイナス方向の波形が反転してプラス方向の波形になり、0~π[rad]の範囲のプラス方向の波形はそのままです。
このように、マイナス方向の波形を反転させて全部の波形を整流する回路だから全波整流回路です。
原理は実際に電流が流れる経路を考えてみるとわかりやすいです。
図7の赤矢印は印加電圧の横軸が0~π[rad]の範囲のプラス方向の波形の場合の経路、青矢印は印加電圧の横軸がπ~2π[rad]の範囲のマイナス方向の波形の場合の経路です。
この経路を比較してみるとわかると思うのですが、経路は異なるものの負荷に電圧が掛かる方向が一致しています。
その為、電源がマイナス方向に電圧を掛けても負荷に掛かる電圧はプラス方向になるので、全波整流波形ができあがります。
全波整流回路にコンデンサも接続することで全波整流波形が平滑になり、直流電圧として扱えるようになりますが、詳しい説明はここでは割愛します。
ダイオードの種類及び用途
ダイオードの種類及び用途をいくつか紹介します。
以上、「ダイオードの動作原理」についての説明でした。
【基礎から学ぶ電子回路】
◎電子放出と電子の運動
◎半導体とは? ~電子と正孔について
◎ダイオードの動作原理
◎理想ダイオードの特性とダイオードの近似回路
◎ダイオードのクリッピング作用 ~ダイオードで波形をカットする
◎ダイオードと並列に繋がれた回路の考え方
◎トランジスタの動作原理
◎トランジスタの静特性
◎バイポーラトランジスタとユニポーラトランジスタの違い
◎トランジスタの増幅作用
◎ダイオードとトランジスタの関係