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ガソリンが高いのは税金のせい!? 二重課税疑惑もあり!! ガソリン税ってなんで高い?

 さまざまな影響を受けて変動するガソリンの価格。変動の主な要因は原油価格が変化することだが、実はガソリン価格にはかなりの割合を占める税金がかかっているのをご存じだろうか? なんとなく聞いたことがある「ガソリン税」の正体とは? そして問題視されている二重課税疑惑についても解説していこう。

文/長谷川 敦、写真/写真AC、フォルクスワーゲン、日産

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価格の1/2近くは税金だった?

ガソリンが高いのは税金のせい!? 二重課税疑惑もあり!! ガソリン税ってなんで高い?
ガソリン価格は日々変動しているが、ガソリンへの課税額は消費税を除くと一律となっている。ただし、ガソリン税は本来の金額より高めのままで続いている

 ここ最近はガソリン価格が高騰気味で、遠出はしたいけどガソリン代が気になるという人も多いかもしれない。ガソリンの原料はもちろん石油で、石油(原油)価格は産油国の生産量や需要のバランスによって変化する。その変化がガソリン価格に反映されるということだ。

 そもそもガソリンには複数の税金がかけられている。まずは揮発油税で、次は地方揮発油税、そして石油石炭税。これら3つの税金がガソリン価格に加わっていて、さらにその総額に対して消費税が課税される。

 揮発油税と地方揮発油税の合計は定額でガソリン1リッターあたり53.8円。石油石炭税は2.8円/Lだ。合計で56.6円が1リッターのガソリンに含まれることになり、ガソリン価格が1リッター170円とすると、これに17円の消費税が加わる。つまり合計で73.6円が1リッターのガソリンに加わる税金ということ。

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ガソリン本体の価格は約6割。残りは税金というのは衝撃!

揮発油税額は永遠の暫定措置?

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ガソリン税の暫定引き上げが施行されたのが1974年。初代フォルクスワーゲン ゴルフがデビューした年だ。そこから50年近く暫定税率の状態が続いている

 揮発油税とは、製造所から移出される、または保税地域から引き取りされる際に揮発油に課せられる税金のこと。地方揮発油税もまた揮発油への課税だが、揮発油税が国に譲与されるのに対し、こちらは地方公共団体に譲与される。ちなみに揮発油とは原油を分別蒸留する際に低沸点で採取できる油のこと。燃料用がガソリンで、溶剤用がベンジンだ。

 揮発油税と地方揮発油税を合わせてガソリン税と呼ぶのが一般的で、このガソリン税は道路整備の財源とすることを主として設定された。本来の税率では1リッターあたり28.7円なのだが、1970年代の道路整備五カ年計画の財源にするため、1974年度から暫定措置として本来の約2倍の税率に設定されている。

 問題はこの暫定税率が現在も続いているという点だ。ガソリン税の暫定措置は繰り返し延長され、2007年末には延長期限が切れるはずだった。しかし、その後もなにかと理由がつけられて暫定措置は続けられ、2010年には特例税率として当面の間53.8円の税率が維持されることになった。

 もちろんこれはガソリン税による税収が貴重な財源になっているのが理由だ。令和3年の揮発油税総額が2兆700億円、地方揮発油税は2214億円にものぼり、使用目的も道路財源ではなく一般財源に変更されている。これだけの税収は国や地方自治体にとって手放したくないものであるのも容易に想像できる。

ガソリン高騰への切り札とも言われる「トリガー条項」とは?

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ガソリンより安価な軽油にも軽油引取税、石油石炭税、消費税がかけられている。軽油引取税は1リッターあたり32.1円だが、これでも特例税率で本来の2倍に

 2022年1月27日からある補助金制度が実施されている。それはガソリンの元売り会社に対する補助金で、全国平均のレギュラーガソリン平均価格がリッター170円を超えたときに支給される。これで過度の価格上昇を抑制し、消費者の負担を減らすのが狙いだ。

 補助金の対象となるのはガソリンと軽油、灯油など。最大1リッターあたり5円までの補助だが、これは2022年3月末までという期限限定の措置だ。ただし、現在の原油価格高騰が続いていたときには、なんらかの追加措置がとられる可能性もある。

 4月以降もガソリン価格が下がらなかった場合に適用が検討されているのが「トリガー条項」だ。

 トリガーとは日本語で「引き金」を意味する言葉であり、何かを引き起こす際にも用いられる。ガソリン価格に適用するトリガー条項とは、ガソリン価格高騰の際に、本来の税金より上のせされている25.1円分を免除するもの。これによってガソリン価格が引き下げられる。

 トリガー条項が設けられたのは2010年の特例税制が施行された時で、ガソリン価格高騰時に一時的に抑制を行うのが目的。これが実施されればガソリン代も下がり、消費者にとっては恩恵となる。

 しかし、トリガー条項の実施には2011年に制定された震災特例法によるトリガー条項凍結を改正しなくてはならず、すぐに実施というわけにはいかないのが実情だ。とはいえ、クルマを日常的に使用するユーザーにとって、ぜひとも実施してほしい条項であるのは間違いない。

無視できない石油石炭税

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石油石炭税は石炭にも課税されるが、先に課税されたのは石油のほう。エネルギー効率やCO2削減などのエコを考慮すると、石炭の需要は今後さらに減少しそうだ

 石油対策にかかる財政需要に配慮して1978年に制定されたのが石油税。その後石油ガスおよび石炭ガス、石炭も対象になったため、2003年に現在の石油石炭税に改められた。

 石油石炭税は国と民間の石油備蓄、石油代替エネルギー対策、そして地球温暖化対策などに使われる。課税対象者は国産の石油&石炭採取者と輸入原油を保税地域から引き取る者だが、結局のところガソリン代金に加えられるので、実質的に支払うのは消費者ということになる。

消費税は二重課税ではないのか?

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クルマの運用には何かとお金がかかるが、ガソリン代金はその最たるもの。代金の半分近くが税金ということに重税感を抱く人も少なくないはずだ

 これまで見てきたように、ガソリン価格にはガソリン税と石油石炭税が上乗せされている。さらにガソリンを購入する時には10%の消費税も加えられる。

 ガソリンの価格にはすでに税金が加わっているのに、さらに消費税を徴収するのは二重課税ではないかという声も多い。これに対して、国はガソリン税と石油石炭税はあくまでガソリンの製造に関するコストであって、消費税を加えても二重課税にはならないという見解を示している。果たして、この見解に素直に納得できるだろうか?

 以前からたびたび問題になっているガソリンの二重課税だが、現状でこれが見直される可能性は低い。トリガー条項による減額措置が行われても、当面の間、消費者はガソリン税と石油石炭税、そして消費税を支払い続けることになりそうだ。

 結局のところ、ガソリン価格が下がるには、石油現産国が生産量を増やして需要と供給のバランスが改善されることを願うしかないかもしれない。

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