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今日までの人工知能の最も一般的なアプリケーションの1つは、過去のデータで訓練されたアルゴリズムを使って予測を行い、将来の結果を判断するというものである。しかし、普及が必ずしも成功を意味するわけではない。予測AIは、結果につながる多くのニュアンス、コンテキスト、因果関係の推論を除外する。一部の人たち指摘しているように(そして私たちが見てきたように)、これは予測AIが生み出す「論理的な」答えがときとして悲惨なものになることを意味している。causaLens(コーザレンズ)というスタートアップは、因果推論(causal inference)技術の開発を行っている。この技術は、AIベースのシステムにニュアンス、推論、因果関係の知覚能力を導入する上でデータサイエンティストを必要としない、ノーコードのツールとして提供されており、この問題を解決できると同社は考えている。

causaLensのCEOで共同創業者のDarko Matovski(ダーコ・マトフスキー)氏は、AIが「人間が世界を理解するように世界を理解し始める」ことを目指していると語る。

同社は米国時間1月28日、このアプローチが初期にある程度成功し、1年前にステルス状態から脱して以来収益が500%成長したことを受けて、4500万ドル(約51億8000万円)の資金調達を行ったことを発表した。これはラウンドの「最初のクロージング」と表現されており、引き続きオープンで、規模拡大のポテンシャルを秘めていることを示唆している。

Dorilton Ventures(ドリルトン・ベンチャーズ)とMolten Ventures(モルテン・ベンチャーズ、Draper Esprit[ドレイパー・エスプリ]からブランド名を変更したVC)がこのラウンドをリードし、以前からの支援者であるGeneration Ventures(ジェネレーション・ベンチャーズ)とIQ Capital(IQキャピタル)、そして新たな支援者としてGP Bullhound(GPブルハウンド)も参加した。情報筋によると、ロンドンに拠点を置くcausaLensは、同ラウンドで約2億5000万ドル(約287億8000万円)と評価された。

causaLensの現在の顧客やパートナーには、ヘルスケア、金融サービス、政府機関の他、多岐にわたる業界の組織が名を連ねている。こうした組織は、成果に到達する過程において、AIベースの意思決定だけではなく、より多くの因果関係のニュアンスを取り入れる目的で、同社の技術を活用している。

この仕組みの実例を挙げると、同スタートアップのパートナーの1社であるMayo Clinic(メイヨー・クリニック)は、causaLensを使って癌のバイオマーカーを同定している。

「人間の身体は複雑なシステムであり、基本的なAIパラダイムを適用することで望みどおりのパターンや相関関係を見つけることは可能ですが、成果を得ることはできません」と、同スタートアップのCEOで創業者のDarko Matovski(ダルコ・マトフスキー)氏はインタビューで語っている。「ですが、因果関係の手法を応用して、相違する身体がどのように機能するのかを理解すれば、ある組織が別の組織にどのような影響を与えるのか、その本質をより深く理解することができます」。

関連するすべての変数を考慮すると、それは人間にとって、あるいは人間のチームにとっても、計算することはほぼ不可能なビッグデータの問題である。しかしコンピューターにおいては、対処すべき必要最低限のものと位置づけられる。これは癌の治療法ではないが、この種の研究は、関与する多くの組み合わせに応じた多様な治療法を検討する上で、意義のある一歩である。

causaLensの技術は、ヘルスケア分野でも、あまり臨床的ではない形で応用されている。世界有数の経済大国に属する公衆衛生機関(causaLensはそれについて公表を控えている)は、同社のCausal AIエンジンを使用して、特定の成人が新型コロナウイルスのワクチン接種を躊躇している理由を特定し、その人たちを参加させるためのより良い戦略を考案した(ここでは複数の「戦略」が運用上の細目となっている。対象者によってさまざまな理由を含む複雑な問題であるということに要点がある)。

金融サービスのような領域の他の顧客は、causaLensを使って、ローン評価などの分野における自動化された意思決定アルゴリズムに情報を与えている。従来のAIシステムは、過去のデータのみを使って意思決定にバイアスを導入するものであった。一方ヘッジファンドでは、causaLensの活用により、市場のトレンドがどのように発展して投資戦略に反映されるかについてより深い洞察を得ている。

そして興味深いことに、自動運転輸送の世界に新たな顧客の波が現れているかもしれない。これは、人間の推論の欠如によって分野の進歩が妨げられてきた領域の1つである。

「どれほど多くのデータが自律システムに送られても、それは歴史的な相関関係にすぎません」とマトフスキー氏はこの課題について語っている。同氏によると、causaLensは現在、2つの大手自動車会社と同社の技術の「数多くのユースケース」について協議を進めているが、その中でも特定のユースケースとして「世界がどのように機能するかをシステムが理解する」ような自動運転に注目しているという。「それは、赤信号や停車中の車に関連する相関ピクセルだけではなく、その車が赤信号で減速することでどのような結果が生じるのかも考慮したものです。私たちはAIに推論を導入しています。自動運転において、Causal AIは唯一無二の希望です」。

AIを仕事で使用している人たちが、システムをできる限り正確にしたいと考えるのは当然のことのように思える。それは、そもそもなぜCausal AIによる優れた改善がAIアルゴリズムや機械学習に組み込まれていないのかという疑問を抱かせる。

初期の段階において、推論や「なぜ」と返答することの追求を優先していなかったわけではないとマトフスキー氏は説明する。「人々は長い間、科学の中で因果関係を探求してきました。ニュートンの方程式は因果を示すものであると主張することもできます。それは科学において極めて基本的なことです」。しかしAIの専門家たちは、機械にそれを教える方法を解明できなかったのである。「それは難しすぎました」と同氏は語る。「アルゴリズムとテクノロジーが存在していませんでした」。

同氏によると、その状況は2017年あたりから変化し始めたという。それは研究者らが、AIにおける「推論」や因果関係の表現方法について、既存の成果への貢献を示す信号を発見する(過去のデータを使って成果を決定するのではなく)ことに基づいて検討し、それに立脚したモデルを構築するという初期アプローチを発表し始めた時期である。興味深いことに、これはマトフスキー氏が言及している、仕事をするために大量のトレーニングデータを取り込む必要がないアプローチである。causaLensのチームは、博士号にかなりの比重が置かれている(同スタートアップはここで本格的にドッグフーディング[事前に自身で有用性を確かめる]を実践したといえるかもしれない。チームを編成する際に5万人の履歴書を検討している)。そしてこのチームは、そのバトンを受け取って、それで走り続けてきた。「以来、指数関数的な成長曲線を描いています」と同氏は語っている(その詳細はこちらで確認できる)。

AIに依存する大規模プロジェクトで因果推論の進歩を活用する方法を検討しているのは、causaLensだけではない。Microsoft(マイクロソフト)、Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)など、AIに多額の投資をしている大手テック企業もこの分野に取り組んでいる。スタートアップの中では、Causalis(コーザリス)も特に医薬とヘルスケアでCausal AIを使う機会に焦点を当てており、Oogway(ウーグウェイ)は消費者向けのCausal AIプラットフォームを構築しているようである。これらはすべて、特定の商用、そしてより一般的なユースケースの両方をカバーする、より広範で大規模な当該技術市場が開拓される機会を示している。

「AIは、現実世界におけるポテンシャルを実現するために、因果推論に向けた次のステップを踏み出さなければなりません。causaLensは、Causal AIを活用して介入をモデル化し、機械駆動型の内省を可能にした最初の企業です」とDorilton VenturesのDaniel Freeman(ダニエル・フリーマン)氏は声明で述べている。「このワールドクラスのチームは、本格的なデータサイエンティストの心を掴む洗練性と、ビジネスリーダーに力を与えるユーザビリティを備えたソフトウェアを開発しました。Dorilton Venturesは、次のステージでcausaLensをサポートすることに大きな喜びを感じています」。

「どの企業もAIを採用するようになるでしょう。単に採用できるからではなく、採用する必要があるからです」とMolten Venturesの投資ディレクターであるChristoph Hornung(クリストフ・ホルヌング)氏は付け加えた。「私たちMoltenは、因果性がAIのポテンシャルを引き出すために必要となる重要な要素であると確信しています。causaLensは、最適なビジネス上の意思決定へとデータを変換する能力が証明されている、世界初のCausal AIプラットフォームです」。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)