もっと詳しく

 まだまだ寒い日がつづいているが、暦の上ではすでに春。気候がいい春は、積極的にドライブに出かけたくなる季節だが、運転が苦手な人や、この春に免許を取得したばかりのドライバーにとって、クルマでの遠出はなかなかハードルが高く感じられるもの。「一刻も早く運転が上手くなりたい」と考えることだろう。

 運転が上手くなるには、何よりクルマにたくさん乗って学ぶ「経験」が必要だが、いくつかのポイントを押さえて運転をすることで、より早く上達することができる。運転が苦手な人や初心者ドライバーに知ってほしい運転テクニックを4つご紹介しよう。

文:吉川賢一
アイキャッチ画像:Adobe Stock_ beeboys
写真:Adobe Stock、写真AC

【画像ギャラリー】運転が苦手な人や初心者ドライバーに知ってほしい 運転時のポイント(10枚)画像ギャラリー

安定した上手な運転は、正しいドライビングポジションから!!

 自動車教習所の技能教習で、はじめに教えられる「ドライビングポジション」。無理なく正確かつ確実な運転操作をするには、自分の身体にあった位置にシートやステアリングホイール、そしてミラーを合わせることがもっとも重要だからだ。

 まず、腰をシートの奥まできっちりとつけ、左足がフットレストにきちんと乗る位置に、シートの前後位置を調節する。このとき、アクセルペダルとブレーキペダルが無理なく奥まで踏み込めるのも確認してほしい。

 次に、ハンドルの高さと奥行きを、チルトと(あれば)テレスコピックで調節する。ハンドルの奥のメーターがよく見える高さで、ハンドルを「9時15分」の位置で握った状態で180度回したときに肘が伸び切らないような位置に、シートバックの傾き調節も使って調節する。あとは、サイドミラーとルームミラーを合わせればOKだ。

 背中がシートに密着し、後頭部もヘッドレストに触れているので、やや窮屈に感じるかと思うが、これが正しいドラポジとなる。自動車メーカーでは、この正しいドライビングポジションで、視界性能や座り心地、さらには衝突安全性を確認している。

 逆にいうと、正しいドライビングポジションでなければ、自動車メーカーが想定した性能を享受できず、そのクルマを手足のように操作する「上手な運転」にはたどり着かない。また、シート接触面が増えることで、負荷を分散することができ(体重の一点集中が起きにくくなる)、腰痛の元になる「血行不良」も防ぐことができる。

 ちなみに「ヘッドレストが前傾していて首がきつい」という方は、シートバックを少し倒してみてほしい。ハンドルが遠くなったぶんは、シートの前後スライドや、ハンドルのテレスコピックで調節する。シートバックを倒すことで、前傾しているヘッドレストが垂直にちかい状態になるはずだ。

 ヘッドレストは追突事故の際、乗員の首を守ってくれる大事な装備。間違っても、ヘッドレストを前後逆に取り付けたり、外したりしてはいけない。前席のヘッドレストを外す行為は、道路運送車両法の保安基準違反となる。

腰の部分を前に「グッ」と押し出すような姿勢を保つのは辛そうに感じるが、特に長時間運転する場合は、この姿勢の方が、腰痛を抑えられる。シートの座面の高さも、長時間運転するときには座面を少し上げ、膝がやや下がる位置に調節するとよい(PHOTO:AdobeStock_logo3in1)

ブレーキは止まる瞬間に「ちょっとだけ戻す」

 そのうえで、運転が上手くなるには、アクセルペダルとブレーキベダルの丁寧な操作ができるようになることが必要。とくにブレーキ操作は、その人の運転技術がすぐにバレる操作だ。ブレーキ操作が上手くなるコツは、クルマが止まる瞬間に、ブレーキを踏む足の力を「ちょっとだけ戻す」こと。これでいわゆる「カックンブレーキ」となることを防ぎ、なめらかで自然にクルマを停止させることができる。

 さらに、ブレーキペダルをやんわりと踏み始め、減速Gを一定に保つことができると、上級者のブレーキングに近づく。同乗者が、いつから減速し始めたか分からないような運転ができれば、素晴らしい。これには、ブレーキペダルの踏力を、わずかに調節する足技が必要となる。自動車メーカーのテストドライバーでも苦労をする足技だ。不慣れなクルマであればこそ、ブレーキ操作は丁寧に行いたい。

幹線道路では、速度一定を意識する

 運転に慣れて、制限速度の範囲でスピードが出せるようになってきたとしても、意味もなくスピードが乱高下するようでは、運転が上手いとはいえない。靴の中の足の親指のわずかな力のかけ具合で、アクセルペダルを、1ミリにも満たない幅で、踏みこむ量をコントロールするくらいの精度でコントロールができれば、クルマはまるで新幹線のようになめらかに進む乗り物となり、同乗者も快適になるはずだ。

 なお「スピードの出し過ぎ」は、クルマ酔いの原因にもなる。平らな道路に見えても、道というのは必ず凹凸がある。そうした道を速く走る程、クルマはどうしても揺れを起こしてしまう。その揺れを極力抑えるには、とにかく、「スピードを落とす」に尽きる。同乗者が乗っているのに、スピードを必要以上に出してしまうのは、クルマを運転することがうれしくてしょうがない初心者のすることだ。

 さらに上級を目指すには、登坂でも下り坂でも速度が一定になるように走行すること。道路は平らに見えるようでも、わずかに登っていたり、下っていたりもする。このとき、アクセルペダルが一定だと、当然車速は上がったり下がったりする。速度が落ちやすい登坂でも、逆に速度が上がる下り坂でも一定速度で走行をすることができたら、りっぱな運転上級者。速度メーターは常に気にしておこう。

周りのクルマと同じくらいにまでスピードを上げたら、速度一定で走行するよう、アクセルペダルでコントロールするようにしていただきたい(PHOTO:Adobe Stock_ Paylessimages)

あおりハンドルや内掛けハンドルはNG

 ハンドル操作に関しても、急ハンドルや、横Gが強くかかったりする操作はもちろんNG。交差点やカーブへ入る際は、しっかり減速し、余裕をもって曲がれる速度に落として曲がる。

 ハンドル操作で何よりカッコ悪いのが、曲がろうとする方向とは逆の方向へいったん振ってから曲がる「あおりハンドル」だ。このあおりハンドルを「運転テクニック」だと思っている人もいるようだが、歩行者や二輪車、自転車や後続車にとっては、迷惑千万な運転行動。道交法では、「車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿って徐行しなければならない」(道路交通法第34条)と決められている。

 ホイールベースの長いトラックではない、一般的な乗用車で、特に狭い道へ入るわけでもない一般的な交差点で曲がり切れないのは、十分な減速ができていない(=運転が下手)な証拠。サーキット走行だと、コーナーはアウト-イン-アウトで駆け抜けるよう、アドバイスされることがあるが、そこは公道。大人のすることではない。

 運転上手になるには、カーブでも交差点でも、ハンドル操作を「ゆっくり」と行うこと。じわーっと回して、じわーと戻すのがコツだ。クルマは1000kg以上もある重量物。ハンドルを操作すると、クルマは向きを変えながら、次いでロールが発生する(慣性があるので遅れる)のだが、このロールはタイミングが遅れてやってくる。

 そのため、早いハンドル操作をすると、あとでロールが大きく発生し、運転がしどろもどろになりかねない。とにかくゆっくりと操作する癖を身に着けよう。なお、内掛けハンドルは、ハンドルを回す力がまばらになるのでNGだ。

 また、高速道路での車線変更は、車線変更する前からウインカーを点滅させ、車線変更が終わるまで出し続ける。車線変更と同時にウインカーを出し、2度点滅させる程度で消してしまうドライバーもいるが、これでは何のためのウインカーなのかわからない。周囲のドライバーのことを考えれば、こんなことはしないはず。自分本位でしかないのは、周りが見えていない初心者の行為だ。

ハンドル操作は「じわーっと回して、じわーっと戻す」。これができると、同乗者の頭が「グラッ」とすることも減り、安心ができる運転となる(PHOTO:写真AC_ひつじ07)

何より重要なのは「安全」

 運転初心者のころは、周囲のドライバーから「下手くそ」とか、「トロトロしている」など、どういった目で見られているか、気になってしょうがないことがあるだろう。ただ、何より重要なのは「安全に運転すること」。ちょっとくらいトロトロしていたって大丈夫。焦ってもいいことはそれほどなく、周囲のドライバーだって、熟練ドライバーばかりではないから大丈夫だ。

 クルマの運転は、慣れてきたころ、事故を起こしやすい。運転経験を積んで上手になったとしても、初心は忘れることなく、安全にカーライフを楽しんでほしい。

【画像ギャラリー】運転が苦手な人や初心者ドライバーに知ってほしい 運転時のポイント(10枚)画像ギャラリー

投稿 運転が苦手な人や初心者がやりがち…出来てるようで案外やってない運転術 4選自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。