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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のような複雑な装置は、稼働するまでに少々時間がかかる。2022年1月末に軌道に乗ったものの、まだ起動プロセスの途中にある。米国時間2月11日には、その中で大きなマイルストーンに到達した。ウェッブが初めて星を捉えたのだ。18回も。そしてそれを祝うためにセルフィー(自撮り)を行った。

この巨大な軌道望遠鏡の長年に渡る開発、組み立て、展開についての報道をご覧になってきた方はご存知かと思うが、ウェッブ望遠鏡は基本的に18枚の鏡をハニカム(蜂の巣)型に組み合わせた形状をしており、これが目標物からの大量の赤外線を取り込むのに役立つ。

しかし、それぞれの鏡(さらに前面の副鏡やその他多くの部品)は、反射した像が他の鏡に映る像と一致して重なるように、正確に調整する必要がある。

「主鏡のセグメントが揃っていないので、実際には18個の別々の望遠鏡のように機能しています。現時点では何も調整していないし、焦点も合わせていないため、少しぼやけています」と、ウェッブ望遠鏡の光学素子担当マネージャーであるLee Feinberg(リー・ファインバーグ)氏は、NASAのビデオで語っている(このビデオを見ると、筆者の説明よりもよくわかるはずだ)。

それはちょうど、アニメでよく見るような、意識を失ったキャラクターが目を覚ますと、世界が2重、4重に見えていて、それらの画像を徐々に重なり合って像を結ぶ場面を思い浮かべればよいだろう。この場合、もちろん、望遠鏡は宇宙の中にあるので、よく見えてくるものは(おそらく)星だけだ。

この調整を行うためには、同じような明るさの星に囲まれていない、際立った星が必要だった。そこでチームは、おおぐま座にあるHD 84406と呼ばれる星をターゲットに選んだ。ちょうど宇宙に浮かぶクマの首輪の上に位置する星だ。北斗七星のひしゃくの口にあたる2つの星を思い浮かべて欲しい。HD 84406は、その線を右に伸ばして同じくらいの距離の位置にある。

ウェッブ望遠鏡は、このHD84406の方向に向けて、156通りの方向から10枚ずつ撮影し、合計1560枚、54ギガバイトのRAWデータを取得した。

画像クレジット:NASA

「セグメントの各ドットが空に広がってしまう可能性もあったため、この最初の探索では満月ほどの大きさの領域をカバーしました」と、ウェッブ望遠鏡チームの科学者であるMarshall Perrin(マーシャル・ペリン)氏は、NASAのニュースリリースで述べている。「私たちは探索の初期段階で18個のセグメントすべてからの光を中心部のすぐ近くで発見することができました!これは、鏡の位置合わせとしてはすばらしい出発点です」。

6時間の処理の後、チームは望遠鏡の18枚の鏡でそれぞれ同じ星を捜し出し、それらを1つの画像(上)に組み立て、鏡の位置をどれだけ再調整する必要があるかを示すことができた。ペリン氏がいうように、これらのうちの1つまたは複数が中心から大きく離れていた可能性は十分にあり、その場合はより長く、より大変な鏡の補正作業が必要になる。しかし、これらはすべて中心付近に集まっており、ミラーの展開が非常にうまくいっているということを意味する。

ウェッブ望遠鏡に搭載されているカメラシステムはこれだけではなく、セットアッププロセスもこれだけではない。しかし、今回の成功は、赤外線カメラと主鏡が計画通りに機能していることを示している(まだすべての能力を発揮できているわけではないが)。

幸いなことに、もう1つの機器は十分に機能していたので、最も重要なコンテンツを得ることに成功した。「自撮り」だ。

ウェッブ望遠鏡の18枚の鏡を撮影した「自撮り」(画像クレジット:NASA)

TechCrunchでは、今回のような大きなステップについては今後も取り上げていく予定だが、ウェッブ望遠鏡のすべての動きを追いかけていきたい人は、専用のミッションブログを常にチェックしておこう。

画像クレジット:NASA

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)