SUVの本場であるアメリカで、トヨタのフラッグシップSUV「セコイア」のフルモデルチェンジが予告された。
セコイアは、日本には設定のないフルサイズSUVで、国産SUVの頂点であるトヨタランドクルーザー(ランクル)300やレクサスLX600よりもデカいというのは何ともアメリカン。
いったいどんな仕様が用意され、どんな新機能が投入されるのか、最新情報を追った。
文/大音安弘
写真/トヨタ
■3代目セコイア、米国で威風堂々のデビュー!!
米国トヨタは1月25日、フルサイズSUVである「セコイア」のフルモデルチェンジを発表し、2022年夏の発売を予告した。
現時点では、ボディサイズなどのスペックと価格、詳細な装備などについて明かされていないものの、デザインやメカニズム、グレード構成などの基本となる情報が発表されている。
まずはセコイアの歴史を簡単に紹介しよう。トヨタが北米のフルサイズSUV市場に向けた開発した超大型サイズのSUVで、全長5.2mほどの大型なボディが特徴。
その大きなボディと堅牢さを示すべく、世界一の長寿を誇る針葉樹の名が与えられた。ちなみに、樹木のセコイアは「レッドウッド」とも呼ばれる。
初代は2000年にデビューし、現行型となる2代目は、2008年より販売を開始した。トヨタのフルサイズトラック「タンドラ」と共通のラダーフレーム構造を持つが、リアサスペンションをマルチリンク化することで、快適性も高めている。
販売は、北米市場のみとなっており、生産も米国工場で行われている。
■セコイアも若返りを意識している
全面刷新を図った3世代目のセコイアのスタイルは、ランクル300やレクサスLX600などの最新の大型SUVと共通する面を強調したスクエアなデザインを取り入れる。
そのフレッシュなデザインのなかに、現行型の特徴である前に押し出された大型ヘキサゴングリルと挟み込むように備わるコンパクトなヘッドライトなどを受け継ぐことで、正統な後継車であることを主張する。
アイコンとなるグリルデザインにはこだわりが強く、グレードに合わせて3タイプがあり、表情が異なっている。サイドビューはフェンダーアーチを角型とし、膨らみを強調することでマッチョなイメージを高めるとともに、傾斜したCピラーがスポーティなシルエットを強調する。
そのフォルムは、貫禄たっぷりのグラマラスな現行型ボディからアスリート系の新型ボディへと鍛え直されている。リアビューも、傾斜したリアガラスとコンパクトな横型テールランプによる引き締まったデザインにまとめられた。
このように全体的に若返りを図り、従来型にはないスポーティな雰囲気を漂わせて、アクティブな生活を楽しむユーザーが好むものを目指したようだ。
インテリアは、先進機能を取り入れたラグジュアリーな空間に仕上げつつ、プレーンな水平基調のダッシュボードデザインとすることで、快適な移動と運転空間に仕上げられている。
しかし、機能的ながら、デザイン性も高い。正直、ランクル300やレクサスLXのユーザーが嫉妬しそうなカッコよさだ。メーターパネルはデジタル化され、中央に備わるインフォメーションシステムのタッチスクリーンは、なんと14インチのド迫力。
これならば地図も見やすいし、車内でのDVD鑑賞も盛り上がりそう。最新の音声操作は、「Hey Totyota」で始められる対話式システムを採用する。
大型ボディの車内は3列シートを備え、2列目がキャプテンシートとなる7人乗りと、ベンチシートの8人乗りを用意する。
メカニズムも見どころ満載だ。新世代となったラダーフレームは、TNGA開発となるランドクルーザー300や先行して昨年11月にフルモデルチェンジを迎えたフルサイズトラック「タンドラ」と共有する。
■牽引力は9000ポンド(4081kg)
しかし、ランクル300とLX600のリアサスペンションがリジッド式とするのに対し、歴代モデル同様にマルチリンク式とするのが大きな特徴だ(新型よりタンドラも、マルチリンク式に改められている)。
この点が、オンロードでの快適性を重視したキャラクターに反映させている。このため、駆動方式も、後輪駆動式とパートタイム4WD式の2種類から選択可能だ。
最大のトピックは、最新式となったパワートレーンだ。現行型は5.7LのV8DOHCと6速ATから、ダウンサイジング+電動化を図った3.5L V6ツインターボのハイブリッド、「i-FORCE MAX」に変更。
組み合わされるトラスミッションは、さらなる多段化を図った10速ATとなる。この組み合わせを全グレードに搭載する。エンジン性能は、最高出力437hp、最大トルク583Lb-Ft.(790Nm)と刺激的なパワフルさ。
けん引能力は、最大9000ポンド(4081kg)を誇る。キャンピングトレーラーやボートなど趣味を楽しむアイテムをけん引する機会も多いアメリカらしいアピールポイントで、現行型よりも約22%も牽引力が高められている。
さらにけん引を多用するユーザー向けに、安全かつ快適な走行を可能とするロードレベリングリアハイトコントロールエアサスペンションとアダプティブバリアブルサスペンション(AVS)をオプションとして提供。
けん引車向けの機能パッケージも用意され、トレーラー付きの状態での後退を支援する「トレーラーバックアップガイド」やまっすぐな後退を支援するステアリングアシスト機能「ストレートパースアシスト」なども上位グレードで標準化するなど徹底している。
■ハイブリッドでより過激に?
注目される「i-FORCE MAX」ハイブリッドシステムは、エンジンとトランスミッションの間にあるベルハウジングにモータージェネレーターを搭載したもの。
ちなみにトラック「タンドラ」の同ハイブリッドシステムでは、駆動用バッテリーにニッケル水素を使い、電池容量が1.87kWh。モーターパワーは、48hp(36kW)/250Nmと記載されている。
時速18マイル以下(約29km/h)の低速域では、モーター主体の走行を行い、それ以上の領域はエンジンが主役となる。ただ、ドライブモードの選択での変化もあり、けん引モードではエンジンとモーターが同時に作動。
スポーツモードでは、電気モーターを加速力に使えたりするようだ。
グレード構成は、エントリーの「SR5」、装備を強化した「リミテッド」、豪華装備の「プラチナム」、TRD仕様の内外装に加え、オフロード機能を強化した4WD専用グレード「TRD PRO」、最上級の「キャップストーン」の5タイプを設定する。
トヨタでは、TRDブランドを積極的に展開しているが、今のランクル300のGR SPORT的な存在と言えるのがTRDチューンのFOXインターナルバイパスショックや1/4インチのアルミ製TRDフロントスキッドプレート、セレクタブルロック式リアデフなど本格的悪路仕様に仕上げられている点。
これはランクル300のGR SPORT以上かもしれない。
■果たして日本導入はあるのか?
北米市場では、ハイランダーや4ランナー(※和名:ハイラックサーフの後継)などの海外向けモデルを含め、多くのトヨタSUVが導入されている。そのなかには、ランクル200も含まれていたが、フルモデルチェンジモデルとなるランクル300は、北米市場には導入されていない。
すでに世界的なランクル人気による供給問題に加え、北米では、あまりランクル人気が高くない背景があるようだ。新セコイアでは、フラッグシップグレード「キャップストーン」が新設定されているが、トヨタの高級SUVのニーズも、セコイアが担うことになるようだ。
ただ、マルチリンクリアサスペンションやハイブリッドエンジンなどの違いが示すように、キャラクターの差も明確にあり、ランクルまでのヘビーデューティは求めず、快適性とオールマイティな走行性能を与えた大型SUVに仕上げられているようだ。
この点は、より生活に密接にSUVがかかわってきたアメリカらしい文化といえよう。
よりクールな装いとなっただけに日本でも購入したいという人もいるだろうが、現行型を含め、並行輸入されたセコイアやタンドラが存在し、マリンスポーツ愛好家などに愛用されているが、あまりにもボディサイズが大きいため、正規導入された実績はなく、残念ながら今後も期待するのは難しいのが現実だ。
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