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<p>ショーン・ホワイト、スーパースターの涙 最後まで強く、優しく | 毎日新聞</p><p>ショーン・ホワイト、スーパースターの涙 最後まで強く、優しく</p><p>北京冬季オリンピックのスノーボード男子ハーフパイプは11日、河北省張家口の雲頂スキー公園で決勝があり、過去に3個の金メダルを獲得したショーン・ホワイト(35)=米国=は4位だった。</p><p>長年にわたり、スノーボード界をけん引してきたスーパースターが最後の瞬間を迎えた。男子ハーフパイプ(HP)決勝の3回目。今大会限りでの引退を表明したホワイトの現役ラストランだ。 一つ目、高さのあるジャンプからダブルコーク1440(斜め軸に縦2回転、横4回転)を決める。二つ目、逆スタンスから再び同じ技を狙ったが、転倒した。 「足が持たないのは分かっていたが、点数を上げるために何かしなければならなかった」。会場をため息が包み込む。ホワイトは一瞬、「こんなはずじゃなかったのにと思った」というが、ヘルメットとゴーグルを外すと、一転して温かい拍手が湧き起こった。 最後のオリンピックを終えて涙ぐむショーン・ホワイト=張家口・雲頂スキー公園で2022年2月11日、宮間俊樹撮影 滑り終えると、いとおしそうにボードを抱え込んだ。目には涙が光っていた。 13歳でプロになり、2006年トリノ五輪、10年バンクーバー五輪を連覇した。14年のソチ五輪こそ4位に終わったが、前回の平昌五輪では3個目の金メダルを手にした。この間、HPのレベルは上がった。トリノ五輪までは横回転が主流だったが、その後は縦回転も組み合わせるようになり、回転数自体も増えていった。その先頭に立って高度な技に挑戦してきたのが、ホワイトだった。 集大成と位置づけた今大会では、若い力の躍進とHPの進化を見せつけられた。「とても感慨深い。僕の後を追いかけてきた若いライダーたちが、僕を追い越すのを見ることは、心の底で望んでいた」。ホワイトは金メダルに輝いた平野歩夢の元に歩み寄ると、しっかりと肩を抱き寄せた。王者の意志は、平野歩へと受け継がれた。 北京入り後、今大会での引退を表明したホワイトは、最後までスーパースターだった。9日の予選では1回目でミスして滑り切れなかったものの、2回目に高得点をマークして決勝へ進出。競技後、氷点下10度近い寒さの中で、世界各国のテレビ、新聞などの取材を1時間以上にわたって受けた。明るく、丁寧に、質問がなくなるまで笑顔で対応した。その姿は、あと一歩でメダルを逃した決勝後も変わらなかった。 「この数カ月は、本当に大変だった。だが、周りの選手と一緒になって勝つこと、乗ることの喜びを感じられたことは、人生の中で最高の時間だった」とホワイト。最後までクールだった滑り、立ち居振る舞いを、決して忘れることはない。【角田直哉】</p>