ワーグナーの「ローエングリン」は、作曲家の前半生の総決算となる名作である。澄んだ旋律美と暗い劇性のバランス、合唱の活躍が特徴だ。中世キリスト教的な禁忌に対し、古代の多神教が人間の生々しい感情を呼び覚ます(そしてそれは、近代の知的な懐疑の覚醒に通じる)という物語が、いかにもワーグナ…
ワーグナーの「ローエングリン」は、作曲家の前半生の総決算となる名作である。澄んだ旋律美と暗い劇性のバランス、合唱の活躍が特徴だ。中世キリスト教的な禁忌に対し、古代の多神教が人間の生々しい感情を呼び覚ます(そしてそれは、近代の知的な懐疑の覚醒に通じる)という物語が、いかにもワーグナ…