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北京冬季オリンピックは中盤を迎えたが、選手たちにあまりに気の毒なほど世間の反応が冷めている。大会前から、中国の人権問題が絡み、日本やアメリカなどが政府関係者の派遣を拒否する「外交的ボイコット」を決めて盛り下がっていた矢先、案の定、蓋を開けてみれば日本での開会式の視聴率は21・3%(ビデオリサーチ、関東地区)と、4年前の平昌オリンピックより10ポイント近くもダウンした。

よもやの失格判定に涙した高梨沙羅選手(写真:ロイター/アフロ)

競技本番でも異常なゴタゴタ続き。スキージャンプ混合での高梨沙羅選手の「失格」や、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手がリンク上の穴にハマって回転不足になる「不運」、さらには数々のドーピング問題で国としての参加を許されなかったロシアは、今度はフィギュアスケート女子選手に疑惑が浮上。日本の東京オリンピックも開会式直前までトラブルが続出したが、北京オリンピックの負の連鎖は大会中も止まらない。

懸案の人権問題でもIOCのバッハ会長自らがテニス選手の彭帥さんと仲良く観戦し、中国政府の宣伝に加担する「茶番劇」が繰り広げられるようでは、コロナ禍の厳寒を過ごす日本の人々との気持ちはかつてないほど冷え込ませるばかりだ。

莫大な放映権料が生じている日本のテレビ局としては、もはや視聴率低下の話は「タブー」に近い状態だが、欧米の活字メディアはすでに容赦なく話題にしている。

AP通信は、放映権を持つ米NBCが平昌より視聴率が半減したことから「テレビ史上最低視聴率へ突き進む」と突き放し、英フィナンシャルタイムズは「東京オリンピック以上にひどい」というアナリストの評価を紹介した上で、ネット放送に視聴トレンドが変わっていく中での地上波放送の限界も指摘。あまりの惨状を気の毒に思ったか。米NFLのスーパーボウル中継との相乗効果に期待を寄せるNBC側の「苦し紛れ」を伝えてフォローしている。

欧米メディアの動向を長年ウォッチングをしている日本の元全国紙記者は「商業五輪の曲がり角を示している」との見方を示していたが、オリンピックの意義が根底から揺らぎつつある。