世界の大半の国にとって、上場投資信託(ETF)は多くの銘柄にまとめて投資することを可能にする単純なツールにすぎない。
それが日本では、株式相場の下支えや物価の押し上げ、経済成長の加速、コーポレートガバナンス(企業統治)の改善、男女平等の推進など、さまざまな役割を託されている。
こうした幅広い目標の下、異次元緩和の導入以降10年足らずで日銀の保有残高は国内ETF市場全体の約8割を占め、国内株式市場の約7%相当にまで膨張した。
株式市場を通じて経済をてこ入れしようとする日銀の取り組みは、世界のどの中央銀行よりも踏み込んでいる。
世界で最も大胆な金融政策実験により、日銀は巨大なポートフォリオで身動きがとれず、そこから抜け出せないという衝撃的な結末を迎えるかもしれない。
日銀は2021年3月、原則年6兆円としてきたETF買い入れ方針を柔軟化し、市場をゆがめると批判されてきた異次元緩和の一部縮小への一歩を踏み出した。
この動きは一見すると日銀の国債に対する飽くなき購入姿勢とは対照的に映る。
今年3月末に日銀は10年国債を0.25%で無制限に買い入れる指し値オペを一定期間行う「連続指し値オペ制度」を初めて発動し、
長期金利の上昇を許容変動幅の範囲に抑える姿勢を示した。
ETF買い入れの緩やかな縮小はひっそり行ってきた。23年4月に任期満了を迎える黒田東彦総裁は、出口戦略について口を堅く閉ざしている。
株価の大幅下落を招かずに保有残高を縮小させるという非常に厄介な仕事は次期総裁に委ねられる。
日銀が抱える巨大な株式ポートフォリオを縮小するには、数世代とは言わないまでも、数十年かかるかもしれない。
(中略)
セゾン投信の瀬下哲雄マルチマネジャー運用部長は、相場が過熱している状況で売るのが理想的だったが、
「いまはもう売れない。売れば必ず下がる」と指摘。日銀が売るとなれば需給も変化し、「かなりネガティブな影響が出てくる」と語った。
(中略)
12年5月から16年5月まで日銀理事を務めた門間一夫氏(みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト)は、
「他の中央銀行が日銀のETF買い入れを採用する可能性は極めて低い」と指摘。
「日銀のETF買い入れの焦点は副作用をどうするかに変わってきている」と語った。
ETF購入について日銀は、市場が大きく不安定化した場合に、大規模な買い入れを行うことが効果的だと説明。
ETF購入を含む金融緩和策の出口戦略を議論するのは時期尚早との認識を示している。
黒田総裁の下で審議委員を務めていた白井さゆり慶応義塾大学教授は、
「日銀の大胆な行動を見せなければならなかったので、13年のETF買い入れの増額は必要だった」と当時を振り返る。
■出口戦略
買い入れ停止は一つの手段だが、日銀がこれまでに積み上げた50兆円余りの株式をどうするかの答えを見いだすこととは全く別の話だ。
債券なら償還日が来れば日銀のバランスシートから外れるが、ETFをバランスシートから外すには能動的に売却する必要がある。
日銀による保有資産売却には前例がある。20年ほど前に国内金融機関の経営不安が強まった際、金融機関から保有株式の買い入れを行い、その後売却を開始した。
日銀が市場の混乱を避けるために同程度のペースでETFを売却する場合、保有分全てを処分するのに150年かかるとJPモルガンのアナリストらは試算する。
日銀には保有するETFを売却する義務はなく、理論上は永遠に持ち続けることができる。
ただ将来ほとんど価値がなくなる恐れのある株式ファンドを単に保有し続ければ、日銀財務のリスクになりかねないと、事情に詳しい関係者は言う。
スイス国立銀行(SNB)のように外貨準備の運用以外で中銀が株式を購入しないのもそうした理由からだ。米連邦準備制度は法律で株式の保有が禁止されている。
株価が急落すれば日銀は含み損を抱えることになる。株価が下落し続ければより長期にわたって日銀財務にストレスがかかり、国庫納付金が減る可能性がある。
短期的にこうした事態が起こる可能性は小さいが、株価下落に対する最もてっとり早い対応策の一つはETFを買い増すことだろう。ただし出口戦略を阻害する要因となる。
全文
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-04-10/RA4RGQDWLU6A01
引用元: ・【アベノミクス】”異次元緩和”の日銀、ETFで身動き取れなくなる 市場を歪ませた大胆な政策実験は出口戦略なく衝撃的な末路へ [ramune★]
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