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 3月29日にイギリス・ドニントンパークで実施されたこのオフ最初の公式プレシーズンテストに続き、4月6日のクロフトで2度目の公式テストを実施したBTCCイギリス・ツーリングカー選手権は、ふたたび名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)の4冠王者コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)が、共通ハイブリッド機構導入初年度をリードする展開に。

 また前回テストで正式契約発表前だったジェイソン・プラトのBTCレーシング加入もアナウンスされ、2022年はジョシュ・クックやジェイド・エドワーズらとともにFK8型ホンダ・シビック・タイプRをドライブすることが決定。同じく前回ドニントンで午後の最多ラップを記録していたリッキー・コラードは、スピードワークス・モータースポーツ(SWM)が運営するTOYOTA GAZOO Racing UK(TGR UK)のラインナップに加わり、トヨタ・カローラGRスポーツのステアリングを握ることとなった。

 先月のハイブリッド“インストール”テストに続いて、コスワース・エレクトロニクス社製のTOCAハイブリッドシステムを組み込んだ全22台が集結したノースヨークシャーのサーキットでは、ふたたびWSRが新しいシステムの「スピードアップ」を主眼にプログラムを消化し、BMW使いのターキントンが自身の持つラップレコードを順当に更新する速さを披露した。

 ターキントンのBMW 330e Mスポーツが記録した1分21秒497のタイムは、午前に周回した52周のうちに計時され、午後のセッションで最速をマークした僚友ステファン・ジェリー(Team BMW/BMW 330e Mスポーツ)に対し、0.172秒差を残してトップタイムを得るのに充分なスピードとなった。

 そのWSR勢の背後には、先日のテストでも総合4番手に入っていたダン・カミッシュ(フォード・フォーカスST/NAPAレーシングUK)が続き、前輪駆動モデルで最速をマーク。4番手に今季導入のMスポーツ製新型TOCA共通エンジンを搭載するジョシュ・クック(BTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)と、古豪チーム・ダイナミクスのゴードン・シェドン(ハルフォーズ・レーシング・ウィズ・キャタクリーン/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)と2台のホンダ勢がトップ5を堅守した。

■キャリア通算100勝が目前に迫るプラト、2022年を「最後のシーズン」に位置づける

先月のハイブリッド”インストール”テストに続いて、名門West Surrey Racingの4冠王者コリン・ターキントン(Team BMW/BMW 330e M-Sport)がレコード更新の最速タイムを記録
「結果は最高だが、このラップタイムは簡単に記録したものじゃない。他のことは知らないが、1日中バケツ1杯の汗をかいたさ」とターキントン
前回、今回と僚友ダン・カミッシュの後塵を拝する展開となった9番手の王者アシュリー・サットン(フォード・フォーカスST/NAPA Racing UK)

 さらに、こちらも2022年より新たにスウィンドン・パワートレイン社製のヒュンダイ・ベース新開発エンジンを搭載するトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプレイスカーズ.com/ヒュンダイi30ファストバック Nパフォーマンス)が、午後の周回がわずか10ラップに留まったジェイク・ヒル(MBモータースポーツ・パワード・バイ・ロキット/BMW 330e Mスポーツ)を抑えて6番手に入り、ルーキーのジョージ・ギャンブルとベテランのアダム・モーガンがドライブするカーゴッズ・ウィズ・シシリー・モータースポーツのBMW 330e Mスポーツが、フォード陣営への電撃移籍を決めたディフェンディングチャンピオン、アシュリー・サットン(フォード・フォーカスST/NAPAレーシングUK)を挟むかたちでトップ10入りを果たした。

 そんなテスト会期を前後して“BTCCの顔”とも言える大ベテランのプラトが、自身23年目のシーズンに向け新天地への移籍を決断。シリーズの歴史で他のどのドライバーよりも多くのポイントを獲得し、キャリア通算100勝が目前に迫る男は「これが最後のシーズン」と位置づけ、その大記録達成を目標に据えた。

「これまで外野の位置からBTCレーシングの進化を見届けてきたが、ジョシュ・クックと勝負した経験からホンダ・シビックがどこで速いか、そしてどこでそうでないかを知っている。ホンダはトラックの特定の領域で何年ものあいだ良い状態で、それは本当に強みとなるものだ」と、先週のドニントンパークで初めてBTCホンダのステアリングを握ったプラト。

「チームとの初日にはとても感動した。非常に賢いメンバーが大勢いて、誰もが自分の役割を知っている。その全員が僕の待つエンジニアリングテーブルに何かを持ってきてくれたんだ」と、初テストを振り返ったプラト。

「僕はキャリアの大部分において、ワールドクラスのチームでドライブし、ワールドクラスの人々と仕事をすることができた幸運な男だ。正直なところBTCレーシングで午後を過ごした後、私は心から感銘を受けたよ。そこには明確な野心とモチベーションがあり、今は新しい1年を心から楽しみにしている」

 1997年にシリーズデビューを飾ったプラトは、過去2年間のパワー・マックスド・レーシング在籍中にキャリア通算600戦を迎えたが、このホンダ陣営とのチャンピオンシップを最後に、他の機会を模索するためBTCCから「引退する」意向を示した。

「まだレースに勝つことができると思うし、すべてがうまくいけばチャンピオンシップを獲ることもできると思う」と続けた54歳のプラト。「今年はたくさんのレースに勝ち、チャンピオンシップのために戦い、そして仕事場だったシリーズから離れたいと思う。それは僕を幸せな気分にし、BTCCから“サインオフ”するための優れた方法になるだろうね」

■25歳のリッキー・コラードがTGR UK入り

引き続き、速さを維持するジョシュ・クック(BTC Racing/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)にも新たな僚友が加わることに
現在、BTCCキャリア通算97勝を記録しているジェイソン・プラトのBTC Racing加入が発表された
「BTCホンダ・シビックで、彼は100勝目のマイルストーンに到達することができる。それを我々みんなが共有したい」とBTC代表のスティーブ・ダッドマン

 一方、そのプラトと2019年にはチームメイトを務めたロブ・コラードの息子で、2018年シーズン終盤には怪我を負った父の代役としてWSRのBMW 125i Mスポーツもドライブしたリッキー・コラードは、昨季までTGR UKに所属したサム・スメルトに代わり、新たにロリー・ブッチャーのチームメイトを務めることが決まった。

「先週のドニントンでのテストが、前輪駆動のレースカーを運転する初めての機会になった。まだ自分自身が望む領域には当然達していないけど、ラップタイム自体は僕がすでにトヨタのクルマをかなり快適に感じていることを示していた」と語った25歳のリッキー。

「カローラは実績のある“BTCCウイニング・パッケージ”であり、チームの全員が僕のスピードアップのため可能な限りのヘルプをしてくれた。実際、ラップごとに速くなったし、午後に78周を走破して元ドライバーである(代表のクリスチャン・)ディックにはフィードバックを適切に共有することもできた」

「ロリー(・ブッチャー)も本当に速いドライバーだし、彼のアドバイスがとても役に立った。関係は最初から良好で、これ以上のチームメイトを求めることはできないね。まだ勝利を挙げていないのはBTCCだけだし、今年は30回もチャンスがある。事実上のルーキーだけど、それを達成できなければ失望するだろうね!」

 一方、リッキーをテストで起用し、評価プログラムを実施したSWMのクリスチャン・ディック代表は、彼との契約を「うれしく思う」と述べた。

「先週はリッキーと一連の評価テストを実施したが、最終的に双方の当事者ともに新契約への署名にとても前向きで熱心な状態に至った。彼はシームレスにチームに参加し、父親のBTCCキャリアを見て育ったんだ。チャンピオンシップの表も裏も見て来たし、その点で順応に労力を割く必要はないね」とディック代表。

「2018年BTCCでの短いスティントでのパフォーマンスは、彼がかなりの才能と可能性を秘めていることを証明した。終盤のわずか4戦で、グリッド最前列で予選を通過してみせた。このBTCCでそれを達成するにはかなりのスキルが必要で、当時それは非常に印象的な成果だったよ」

Team Dynamicsのゴードン・シェドン(Halfords Racing with Cataclean/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)もつねにトップ10圏内を維持する
新たにリッキー・コラードを迎え入れたTGR UKのエース、ロリー・ブッチャーは、まだタイムを追う段階ではないか、速さは見せられず
Power Maxed Racingが、マイケル・クリースの僚友に新人のアシュリー・ハンド起用を発表し、全29台のシートが確定した