2022年3月31日から経産省のCEV補助金の受付けが始まったが、EVは85万円、軽EVも55万円と5万円増額になった。となると俄然、注目されるのは、アライアンス関係にある日産と三菱の両社から2022年度以降に発売予定の軽EVの日産サクラと、三菱軽EVの2台。
すでに両社からCEV補助金を差し引いた実質的な購入価格は約200万円から、とアナウンスがあった。さらに東京都(軽EV補助金は2021年度は最大60万円)をはじめとする地方自治体でも補助金が支給される。
政府のCEV補助金と合わせると、軽EVが一気に160万円以下で買える算段。これは、とっても買いやすくなるのではないだろうか。そこで今回は、補助金事情と、日産サクラ、三菱軽EVの概要や販売スケジュールはどうなっているのかを含め、徹底レポートする。
文/柳川洋、写真/日産、三菱、ベストカーweb編集部
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■日産・三菱のアライアンスによる新型軽EV登場!
日産と三菱から軽自動車のEVが発売になる。
去年の8月、アライアンス関係にある日産と三菱の両社から、「軽自動車EVを2022年度初頭に発売、補助金後の実質購入価格は約200万円から」との発表があった。
日産はリーフ、三菱はi-MiEVでEV生産・販売の先駆者としての実績があり、その両社がタッグを組んで日本での新車販売台数の約4割を占める軽自動車のEVを手に入れやすい価格で販売する、というのは大げさにいうと日本の自動車市場の将来を大きく変えるかもしれない、画期的な出来事だ。
国からの補助金を考慮すると約200万円から購入可能、ということだが、住む地域によってはさらに自治体からの補助金もあり、普通の軽自動車とさほど変わらない価格で買えるところも出てくる。
実際にどんなクルマが発売されるのか、気になる価格やスペックなどを調べてみた。
■日産の軽EVは「サクラ」その概要とは
日産の軽EVは、サクラという名前でデビューするようだ。
都内某販売店の営業マンの話だと、社内のPCでコンセプトカーではない実車の写真を見てはいるものの、発売時期や価格などはまだディーラーまで降りてきていないとのこと。
現時点の公式な情報は、バッテリー総量が20kwh、全長3395mm、全幅1475mm、全高1655mm、補助金後の実質価格が約200万円程度ということのみ。
しかし、別の日産関係者の話では、新型サクラは2022年4月21日に発表、5月13日に発売の予定でスケジュール調整をしているという。
サクラのサイズは、全長と全幅は日産の軽自動車デイズ・ルークスとまったく同じ、全高はデイズの2WD 1640mm、4WD 1660mmの間に収まり、ルークスの2WD 1780mm、4WD 1800mmより十数センチ低い。
車両総重量はデイズの1060〜1160kg、ルークスの1160〜1270kgからややプラスの1300kg程度になるものと思われる。
ルークスは、その安定感の高い走行性能も評価され2020-2021日本カー・オブ・ザ・イヤーの「K CARオブ・ザ・イヤー」を受賞している。
デイズ・ルークスとプラットフォームを共有していると考えられるサクラも、やや重くはなるものの、重量物であるバッテリーが床下に配置され重心が下がること、電動車特有の低速域の力強いトルクの立ち上がりから、キビキビした走りを期待していいはずだ。
サクラの一充電あたりの航続可能距離は170kmといわれており、兄弟車であるeKクロスEVの180kmよりもやや短くなるようだ。
また記者発表では、プロパイロットのような運転支援システムをはじめとする様々な先進技術が搭載すると明記されていた。
「お客さまの実質購入価格は約200万円からとなる見込み」とは、国の補助金後の価格。詳細は後ほど述べるが、これに加え、地方自治体からの補助金が数十万円受け取れる地域もある。
■三菱のeKクロスEVはどうなる?
三菱の軽EVのコンセプトカーは今年の「K-EV concept X Style」と呼ばれていたが、実際の販売にあたっては、「eKクロスEV」という名前になるとみられる。
三菱自動車の営業マンも、慎重な言い回しながらも現時点でわかっている情報を教えてくれた。
タイミングは5月発表、6月発売の予定で、価格などの詳細は発売日のしばらく前に発表になるとのこと。4月下旬ぐらいにある程度の情報はわかるそうだ。
価格について「日産の姉妹車の価格は、国からの補助金後で200万円からと言われていますが?」と水を向けると、「国の補助金も、申請が多いと予算がすぐになくなってしまう可能性もあるので……」とお茶を濁された。
ただ、「補助金後で、eKクロスの4駆のターボと同じぐらいですかね」とも教えてくれた。2022年東京オートサロンで、三菱自動車の加藤隆雄社長も慎重な言い回しをしていたことを思い出す。
ちなみにeKクロスT 4WDターボの価格は182万500円。
先進安全パッケージ(デジタルルームミラー、マルチアラウンドモニター)と先進快適パッケージ(マイパイロットそのほか)、ETC2.0付カーナビキットをつけると233万1824円となる。
コンセプトカー「K-EV concept X Style」の発表資料には、「先進の運転支援機能やコネクティッド機能」と書かれていたので、補助金なしの価格の目安はこれくらいなのだろう。
営業マンの手元資料に、「実質購入額約200万円」「20kWh大容量バッテリー」「非常時は家電などに電力供給(給電機能)」などと書かれていたのがチラリと見えた。
現時点では確認が取れていないが、上級グレードの「P」の車両本体価格が300万円、標準の「G」が230万円程度といわれている。
気になる航続可能距離は180km程度とのこと。「ファーストカーですと冬場に暖房とつけると、ヒートポンプエアコンなので電力消費が大きく、航続距離が結構減ってしまいますので、どこで充電するか計画を立ててドライブに行くことをおすすめします」とアドバイスされた。
販売マニュアルには「基本はセカンドカーを前提に」と書かれているのかもしれない。
パッケージングは、前方投影面積が増えて電費が悪くなることから、スーパーハイトワゴンではなくハイトワゴンとなっている。
サクラと全長3395mm、全幅1475mmは同じだが、全高は15mm高い1670mmとなる。
コンセプトカーではボディの運転席側のリアドアの後ろに充電用のリッドがついていた。おそらく実車でも同様となるだろう。
また、確認は取れていないが、充電器の価格は200Vコンセントで5万5000円、80%充電の所要時間は40分ということだ。
■国からの補助金はいくらなのか
国のEV補助金の額の決定方法は、軽自動車の場合、WLTCモード1充電あたり航続可能距離(km)×3000円+5万円、上限は外部給電機能がありの場合55万円、なしの場合45万円。
詳細は「次世代自動車振興センター」のホームページで「CEV補助金」のページを見ていただきたい。
日産サクラの場合、補助金の計算は170km×3000円+5万円=56万円となるので、上限の55万円となると予想される。
航続可能距離がサクラより長いeKクロスEVも同様に上限の55万円になる見込みだ。
したがって、実質購入価格200万円から、というサクラとeKクロスEVの価格を逆算すると、250万~260万円台となると思われる。
■地元の自治体からの補助金ももらえる地域も
さらに、EV購入に当たって国からの補助金だけでなく、都道府県・地方自治体レベルでの補助金が受けられる地域もある。
自分の住む自治体で補助金制度があるのかどうかを調べるには、「次世代自動車振興センター 全国の補助事業」で検索してみてほしい。
4月に入ったばかりなので、令和4年度の補助金詳細が自治体のホームページに書かれていないケースもあるが、前年度に補助金制度があった自治体の場合は「都道府県名 令和4年度予算案」で検索して「予算の概要」などを見てみると詳細が書かれているケースが多い。
たとえば東京都の場合、4月3日の時点で、補助金業務を担当する「東京都地球温暖化防止活動推進センター」のホームページには「令和3年度のEV・PHV車両への助成事業の受付を終了した」旨が書かれているので、「4月から補助金もらえなくなるのか?」と思うかもしれない。
だが、都議会で可決済みの令和4年度予算案では、「ZEV導入促進事業」の予算が令和3年度の60億円から8億円増額されており、また補助額も「EVは45万円」と書かれている。
したがって、しばらく待って令和4年度予算の現場での執行が進めば、45万円の補助金が受けられる可能性が高いことがわかる。
つまり、東京都に住む人がサクラ、eKクロスEVを買うと、ベーシックグレードの実質購入価格は155万円前後からになるということだ。
これを他のEVの実質購入価格と比較してみよう。テスラのモデル3のベーシックグレード、RWDは直近大幅に値上げされて549万円。国からの補助金65万円と東京都の補助金45万円を引くと、439万円となる。
日産リーフのSグレード(プロパイロット、アラウンドビューモニターなどは装着されていない)の価格は332万6400円、国の補助金78万6000円と東京都の補助金45万円を引くと209万400円となる。
また軽自動車と比較すると、日産のデイズ/ルークスのベーシックグレードSがそれぞれ13万7700円、141万5700円、三菱のeKクロスのベーシックグレードMが146万3000円の価格設定となっている。
つまり、EVや軽自動車との比較で見ても、日産と三菱の軽EVの実質価格の設定はかなりリーズナブルなことがわかる。軽自動車が新車販売台数の4割を占める日本でEVを普及させたい、という両社の気持ちが伝わってくる。
■軽のEVはアリ? ナシ?
補助金後の実質価格は比較的手に届きやすい水準なことがわかったが、実際に問題となるのは充電、バッテリー周り。
具体的には、クルマが必需品である地方部では170~180kmの航続可能距離が十分かどうか、都市部ではそれに加え、マンションのような集合住宅での充電インフラの整備状況となってくる。
ソニー損保による「2021年 全国カーライフ実態調査」によると、月に1回以上クルマを運転する18歳から59歳の男女1,000名の年間走行距離の平均は6186kmとのこと。1ヶ月にすると515.55km、1日あたりにすると17kmほどだ。
実際の航続可能距離がカタログスペックの80%だとしても、1回の充電で130km以上走れることを考えると、毎日クルマを使う人でも十分な航続可能距離と考えられるのではないだろうか。
特に地方部では家族で複数のクルマを所有しているケースが多く、そのうちの一台を軽のEVにするという選択肢は十分あり得るのではないか。
また日本人の4割が住む、マンションなどの集合住宅での充電設備の整備の問題もある。
マンションの所有者全員がEVを持っていれば、既存のマンションで全員平等に費用を負担して充電器を設置することも可能だろうが、どう考えても現実的ではない。
20戸のマンションで、一人だけEVを購入したいのでマンションの管理組合や大家さんの負担で充電設備を設置してほしい、と言ってもなかなか設置は厳しいだろう。
また充電設備の予約アプリなどを導入しないと、順番待ちなどでいさかいが起きたり無駄な待ち時間が発生したりしかねない。
だが最近、無料で既存のマンションの駐車場に四輪向け充電設備を設置して、アプリで管理を行い、利用者の充電量に応じて徴収する利用料金で設置費用を回収する、というビジネスモデルのベンチャー企業も現れた。
充電設備の拡充と、EVの普及はニワトリと卵のところがあるので、こういったベンチャー企業と自動車メーカーが手を組んで、インフラ整備を進めていってもらえると利用者としては嬉しい。
また、乗り続けてバッテリーの性能が当初よりも下がった状態での中古車としての価値が保たれるか、という問題もある。
軽EVでは、過去に10年のバッテリー保証期間終了後にバッテリーにトラブルが発生し、修理しようとしたら見積もりが100万円を超えた、というケースもあったと聞く。
実質購入価格が安くなっても、乗り換え時の下取り価格が大幅に低いと、保有期間あたりのコストは高くなってしまう。
サクラとeKクロスEVのバッテリーの保証内容がどのようなものになるのか、残価設定ローンで買えるのかなどにも注目したい。
EVというと、日本ではまだいわゆる「アーリーアダプター」、新しいモノ好きで多少高くても人が持っていないものを買いたい人、あるいは環境意識が高い人向け、というイメージがあるが、サクラとeKクロスEVは、普通の人がクルマを買うときに無理せず買える、現実的な選択肢の一つになりそうだ。
EVが普及すれば充電インフラも普及するし、充電インフラが普及すればさらにEVが普及する。
100万円台で購入できる日本独自の軽自動車規格EVのサクラとeKクロスEVの売れ行きは、今後の日本でのEV市場の成長の先行きを示すものとなるだろう。
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