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達成感ありまくり!! 激レア車種を売ったセールスマン奮闘秘話

 期間限定や台数限定など、クルマにも希少性が高いモデルやグレードがある。また時に「誰が買うの? このクルマ」と思える個性豊かなクルマが発表される。こうしたクルマは極少数が販売され、すぐに生産終了し、後に希少車と呼ばれるクルマになるのだ。

 こうしたレアな車種は街中で見るだけでも難しい。ましてやそのクルマを売る機会に巡り合うのは、宝くじにでも当たったような気分になるものだ。自動車セールスの事情に詳しい筆者が、レア車種を売ったセールスマンの奮闘記を紹介していこう。

文/佐々木 亘、写真/TOYOTA、LEXUS、ベストカー編集部

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■激レア車種を売るセールスマンの共通点は「聴く力」

少数しか取り扱われない限定車や、一部のユーザー支持しか集めない不人気車。どちらも販売する機会は非常に少ないが、中にはそれらのレア車を何度も売るセールスマンもいる(画像はレース参戦車)

 少数しか取り扱われない限定車や、用途が限定され一部のユーザー支持しか集めない不人気車。どちらもレアなクルマであり、こうしたクルマを販売する機会は非常に少ない。

 しかし中には、何度も限定車や滅多に売れないレア車を売るセールスマンがいる。セールスマンの年齢、性別、性格などは様々だが、聴く力が高いという共通項があるのだ。

 クルマの営業にかかわらず、セールスマンにとって重要なのは「聴く力」(相手の要望や希望を聞き取る、想像する力)だろう。このスキルが高いセールスマンは、強めの営業をせずに、自然と商品が売れていく。

 不人気車や個性的なクルマたちを商談している間に、気が付いたら契約まで進んでいたということも多いそうだ。筆者の周りでレア車を売るセールスマンは、総じて聞き上手な人が多かった。

■超細かな仕様を間違えずに入力せよ! LFA販売の緻密な仕事

レクサス LFA。国内ではわずか165台が販売された希少車だ(画像はレース参戦車)

 ときに激レア車種の販売では、素早く正確に仕事をこなす技術が必要となる。筆者が見た、最高レベルに緻密な商談は、レクサスLFAだ。

 国内ではわずか165台の販売で、抽選により購入者が決められた国産スーパーカーである。3750万円(ニュルブルクリンクパッケージは4450万円)という車両本体価格にも驚くが、セールスマンとして閉口するのが、LFAの仕様の細かさだ。

 ボディカラーは標準色が10色で、オプション色が20色、ステアリンググリップやシート、ドアトリムやセンターコンソールは各12色、ホイールは3種類、ブレーキキャリパーは6色と、これだけで途方もないパターンになることがお分かりだろうか。

 これを一つ一つ注文書に手入力し、オーナーの要望と間違いないかを確認する。

 当時、旗艦店であったレクサス高輪には、LFAのミニカーが用意され、各種部品を取り外し、完成車と同じ仕様のミニカーを制作しながら商談を進めることができたが、これはレクサス高輪だけの話。

 その他の地方にあるレクサス販売店では、こうしたミニカーの用意はなく、カタログと一部のサンプル品だけを用いて商談を進めている。

 限定車の多くは、大まかな仕様があらかじめ決まっているものが多い。しかし、フルオーダーメイドに近いLFAでは、今までにない緻密な注文書の作成が必要となった。全国で約100回以上も、こうした細かい作業が行われていたかと思うと、想像しただけで胃が痛む。

 奮闘の結果、完成したLFAをオーナーと一緒に見る瞬間は、営業マンの感慨もひとしおだ。

■奇抜な限定車は売るのが怖い

いまだ記憶に新しいピンククラウン

 台数が限定されるレアなクルマには、高額車両が多い。例えばトヨタ・オリジンや記憶にも新しいピンクのクラウンがこれにあたる。

 こうした特別なクルマたちは、キャンセルを絶対に避けなければならない。筆者が思い出すのは、ピンククラウンの注文だ。台数限定ではなく期間限定で販売されたピンククラウンは、希望すれば誰でも購入できるクルマだった。

 クラウンでも色はピンク、誰もが気軽に乗れるものではない。また、ピンクという色から、数年後の査定金額もどうなるか分からなかった。ピンククラウンは各店で慎重に販売された限定車だ。

 bBのオープンデッキなども、慎重な注文を迫られたクルマだったという。

 当時このクルマを販売した先輩営業マンは、契約書を取り交わす際に、担当営業の自分、担当課長、副店長、店長など、上司が勢ぞろいして1人のお客様に対応した思い出を話してくれた。何度も注文していいのかと上司に確認され、最終的には上司が、その目で契約を確認しにきたという。

 最初は課長だけだったが、時間経過と比例して商談の席にはどんどんと上司が集まってくる。最終的にはお客様を囲むようになってしまい、お客様が裁判を受けている人のように見えて、なんだか申し訳なかったと語っていた。今もそのお客様はお得意様の一人で、当時の商談は笑い話の一つのようだ。

 筆者はクルマの販売現場で働き、様々なドラマを見てきた。その中に一つとして同じ商談は無い。中でも取り扱いが少ないクルマを売った記憶は、今でも鮮明に覚えているものだ。希少性の裏に隠れたリスクを背負いながら、激レア車種の商談は行われる。

 昨今はめっきりと減った激レア車種。こうしたクルマを販売する機会を与えられたセールスマンは、後にも先にも経験できない「貴重」な体験をさせてもらったのだろう。

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