連日報道されている、ロシアのウクライナ侵攻。筆者も、一刻も早く平和で安全な世界が戻ることを願いながら、ウクライナ情勢を注視している。
ロシアへの経済制裁を、世界各国が強める中で、世界はもちろん、日本国内の経済情勢にも変化が見られてきた。関係者筋によると、なんと4年から5年待ちと言われていた、ランドクルーザー300(以下ランクル)の納期が、大幅に短縮する可能性があるという。
経済制裁の影響は、どこまで波及するのか。実際に、納期長期化に頭を悩ませる販売店を取材し、真偽を探ってきた。
文/佐々木 亘
写真/TOYOTA
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■ウクライナ侵攻により、ロシア・ウクライナの現地法人は営業停止
ランクルの世界販売台数のうち、約9割は中東やロシア、そしてオセアニア地域(メインはオーストラリア)が占める。日本向けに販売されるのは、残りの1割を案分した数だ。
国内向けランクルの、年間販売計画は約5000台。この数字の4倍を超える受注が、現在も集まっており、単純に年間5000台ずつ販売(納車)していくとなると、今注文しても、ユーザーの手元に届くのは、4年以上経過したあとということになるのだ。
ロシアのウクライナ侵攻が進み、世界各国が禁輸や、ロシア現地法人の営業停止などの、経済制裁を行った。
ロシアのサンクトペテルブルクに工場を持つトヨタも、工場の操業を3月4日から停止している。さらに、ウクライナとロシアの、販売・サービスを行う約200拠点の事業を停止した。
経済産業省は3月29日、ロシアへのぜいたく品の輸出禁止措置を発表している。クルマに関しては、600万を超えるものを禁輸としていることから、ロシアへ向けたランクルの輸出は、難しくなることが決定的だ(※トヨタは2022年3月初旬からロシアへの輸出を停止)。
こうした背景があり、ロシア向けランクルが、日本市場に一部割り当てられる可能性があるという。一部では、年単位で納期が短縮されるという声もあるが、実際にはどれほどの影響があるのだろうか。
■ランクル販売台数は世界第4位のロシア
世界各地域における、ランクルの販売台数を見ていこう。
日本では2019年に2700台、2021年には2500台という販売台数だ。
世界の中で、最も多いのは中近東地域で、2019年には9万5900台、2021年でも4万9700台を販売しており、その3分の1はU.A.Eが占めている。オセアニア地域も2020年には2万8700台を記録し、2021年は1万3700台、うち1万2700台がオーストラリアで販売された。
ロシアは、2021年に欧州地域で販売された5800台のうち、3600台を売る巨大市場だ。欧州向けランクルの半数以上をロシアで販売し、その台数は世界で4番目に多い。
ロシアへの禁輸と、現地法人の営業停止が決まったことで、他地域へランクルを融通する可能性が高まってきた。具体的な時期や、台数の規模は分かっていないが、もしもこうした動きが現実に起これば、超長納期となっているランクル300のデリバリーが、大きく前倒しされるのは間違いない。
■販売現場への通達は? 納期短縮可能性をどう見るか
ランクルは、レクサスLXと同じ愛知県豊田市の「吉原工場」で生産されている。吉原工場は、2022年3月、部品供給や福島県沖地震に伴う影響で、21日~25日まで稼働を停止した。4月の稼働停止予定は入っていないが、今後も、生産に対してどのような動きがあるかは読み切れない。
ロシアに対する禁輸措置については、トヨタ販売店内でも話題になっている。輸出予定だったランクルや、これから生産されるランクルの割り当てが変わり、納期が少しでも短縮することを期待しているようだ。
ただし、4月7日現在、販売店に対して、ランクルの納期が短くなるという通達は入っていないという。また、販売店とメーカー間で管理されている、受注車両の完成予定や配送予定を知らせるシステムでも、納期の大きな短縮は確認されていない。
いつまで禁輸措置が続くかは不透明な部分もあり、部品供給も安定せず生産工場の稼働停止もありうる。仮に、国内向けランクルへの割り当てが増え、納期が大幅に短縮されるとしても、大々的に納期短縮という発表を行わないのではないかと筆者は考える。
短縮できると公言したものの、大した変化が見られず、ユーザーや販売店をぬか喜びさせるのも酷だろう。
このまま4年という発表は続けながら、内部的に少しずつ納期を短縮させていく可能性はあるが、ロシア貿易が向こう10年程度出来ないという状況にでもならない限り、正式な納期目途短縮に対する発表は見送られると思う。
混沌とする世界情勢は、私たちの生活に様々な影響を与えてきた。ランクルの納期短縮に関しては、現状「可能性がある」という程度に収めたほうがよさそうだ。
手探り感の強い貿易事情に対して、トヨタが今後どのような判断を下すのか。その動向に注目していきたい。
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