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尾崎富士雄という渋いボクサーがいた。マーク・ブリーランドに挑戦した試合を後楽園ホールで見て、郷里の青森県八戸を訪ねた。暮れの寒い頃だ。実家は漁師で、母親がぽつぽつと話すガラス窓の向こうでイカが白く揺れていた。塩辛を作る頃になると、尾崎が敗れ去った冬を思い出す。 勝鬨橋を渡った立ち…