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 イタリアの国民車として愛された2代目FIAT500(チンクエチェント)を現代に蘇らせ、大ヒットを記録したのが、現行型モデル。日本でも2008年より導入が開始され、アバルトを含め、6万台以上が販売されているという。その最新世代がいよいよ上陸を果たす。

 いよいよ日本でも販売が開始される次世代FIAT500となる「FIAT500e」は、どんな仕様が用意され、価格はいくらになるのか?最新情報をまとめてお伝えしよう!

文/大音 安弘、写真/大音 安弘、ステランティスジャパン

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全面刷新の新型500はEVのみに

 ステランティスジャパンは、2022年4月5日、FIAT初のEVとなる「FIAT 500e」の日本導入を正式に発表した。同年6月25日より発売を開始し、価格は450万円~495万円となる。

FIAT500の最新世代となる「FIAT500e」は、EV専用車となる

 日本でも熱烈なファンを持つイタリアンコンパクトカー「FIAT500」の次世代モデルとなるEV「500e」の導入がいよいよ開始される。その見た目は、2代目500をモチーフに生まれた現行型500の後継と直感的に理解できるもの。そのブランド力を高めるべく、よりキュートで大人に成長した。細部の質感も高く、価格も上昇しただけに、プレミアムコンパクトを意識した感もある。これがFIAT電気自動車の第一弾となるモデルだけに、潔くEVのみの一本化され、それを示すために名称も「500e(チンクエチェント・イー)」に改めた。

 少しふくよかになった印象だが、実際にボディサイズは、一回り大きくなった。それでも、全長3630mm×全幅1685mm×全高1530mmと、日本車のトヨタヤリスなどのBセグコンパクトカーよりも小さいため、イタリアの国民車として親しまれた500の機動性をしっかりと受け継いでいることが分かる。

ハードトップとキャンバストップを用意

 ボディバリエーションは、現行型同様に3ドアハッチバックを基本とし、ハードトップと開放感あふれるキャンバストップを用意。キャンバストップの構造や動作も、現行型「500C」と同様で、開閉は電動式で、リヤスクリーンは、視認性の優れるガラス仕様。ガラス部分の残したサンルーフモードとガラスまで折り畳むフルオープンモードが楽しめる。

500eにもキャンバストップ仕様を設定し、開放感溢れるドライブを楽しめる

シンプルかつモダンさを追求したインテリア

 インテリアにもイタリア文化が炸裂。2代目500のシンプルなコクピットを彷彿させる水平基調のダッシュボードは、懐かしさ溢れる2本スポークデザインのステアリングに丸形のデジタルメーターを装備する。最新モデルらしくワイドな10.25インチタッチスクリーンのインフォメーションシステムを与えられ、ボタンも最小限に。元々、ボタンの少ない500だけに、その点は同等と言えるかもしれないが、シフトボタンは、よりシンプルなデザインに改められた。

 シートデザインもお洒落で、上位グレードのシート地には、FIATロゴのモノグラム入りとなり、まるでイタリアンアパレルのよう。さらに室内側のドアトリムに2代目500のデザインが施されるなど遊び心にも溢れている。まさに小さなキャビンの中には、イタリアの魅力が凝縮されているといっても過言ではない。

シンプルだが、美しいコクピット。細やかな部分もしっかりとデザインされ、とても洒落ている

節度のある電動パワートレイン

 動力を供給する電気モーターは、フロントに搭載され、前輪のみを駆動。つまり、現行型500と同じ前輪駆動車となる。その性能は、最高出力87kW(118ps)、最大トルク220Nmを発揮。他のEVが電気モーターの存在を知らしめるべく、高出力のものを搭載するケースも多いが、500eは扱いやすさと効率を重視し、適切なパワーに留めている。実にクレバーな判断だ。

 キャビンフロア下に収まる駆動用リチウムイオン電池の容量は42kWhとし、航続距離は335km(WLTC)と短め。これは500eがシティコミューターとして設計されているため。充電方式は、200V普通充電に加え、CHAdeMO式急速充電にも対応するので、時には旅行の相棒として500eを連れ出すこともできる。またEVの接近を知らせる通知音も、イタリア人作曲家のニーノ・ロータ氏が手掛けるなど拘りを見せるのも、ユニーク。これも500eに関わる全ての人を楽しませたいと考えたFIATの心意気なのだろう。

モーターユニットをフロントに積む前輪駆動車。このため、ラゲッジスペースもしっかりと確保される

グレードは3タイプに集約

 グレード構成は、全部で3タイプが導入される。エントリーとなる「POP」が450万円(※受注生産車)。さらにLEDライト、エコレザーシート、17インチアルミホイール、シートヒーターなどを装備をアップデートした上位グレード「Icon」が485万円。「ICON」と装備レベルが同じで、キャンバストップのカブリオレとなる「OPEN」が495万円。現行のエンジン車の500と比べると高価だが、CEV補助金の対象となり、全グレードで65万円がサポートされる。

EV購入の際に国から補助が受けられるCEV補助金を使えば、65万円のサポートが受けられる

まずはリース販売のみでスタート

 販売方法でも新たな取り組みが行われ、リース契約のみに限定される。この決断の背景には、EV化による価格の上昇と厳しいEVの中古車価格がある。EVは、経過年数や使用環境により、バッテリーの劣化が異なる。特に便利な急速充電は、バッテリーに負担がかかるため、劣化を早める原因にもなるのが悩みどころだ。もし劣化による駆動バッテリーの交換が必要となれば、多額の費用が発生する。このため、駆動用バッテリーの様々なデータや経験が少ない今は、EVの中古車の評価も発展段階にあり、まだ市場が成熟してはいないのだ。

 そこでステランティスジャパンでは、500eを全てリースとし、最後に同社が引き取ることで、5年後の残価保証することを決断。現時点では、5年後の残価とする30%をを差し引いて、リース料を算定しているという。また若い人にも500eを選んで欲しいという考えから、任意保険料まで含んだ新サブスク「FIAT ECO PLAN」も用意。このサブスクならば、500e popを選んだ場合、月々53900円と年2回の11万円のボーナス払いのみで所有することが出来るという。リースの契約は5年間となるが、これはCEV補助金の対象が4年以上の保有と定められているのが理由だ。将来的には、顧客のニーズを考慮し、最適な期間やリース以外の販売方法も検討していくとしている。ただ初期導入台数も500台と絞られることから、ユーザーメリットを考慮したリース限定販売は、良心的な対応ともいえるだろう。

エンジン車の500の今後は!?

 FIAT500eの販売が始まり、現行型のエンジン車の500の今後について注目している人も多いはず。最新情報によれば、アバルトを含め、エンジン車の現行型500は併売していくとのこと。もちろん、いずれは500eに集約されることになるが、しばらくの期間は、エンジン車の500も購入できるという。

 但し、本国で用意されるマイルドハイブリッド仕様の導入予定はなく、本国でもエンジン車の仕様が絞られてきているため、今後、さらに日本のラインアップが縮小される可能性は高い。正直、これまでのような多彩な限定車を期待することも難しいのが正直なところ。そのため、中古車を含め、エンジン車の500が欲しいなら、今のうちに購入の準備を始めた方が良さそうだ。

現行型500はアバルトを含め、併売されることに。現時点では、無くなることに焦る必要はなさそうだ

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