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「ランボルギーニは内燃機関に乗っとけ!」と言える3つの理由

 ランボルギーニは近未来戦略において、2023年にプラグインハイブリッド車(PHEV)を市場投入し、2024年までに全ラインナップをPHEV化すると宣言した。

 しかし、2022年の今年も大人しくしている訳ではなく、むしろ盛大に内燃機関を送り出すつもりらしい! そこでスーパーカー事情に明るい西川氏に、この動きを考察してもらった。

文/西川 淳
写真/西川 淳、ベストカー編集部、ランボルギーニ

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■PHEV化の先陣を切るのはアヴェンタドール後継!?

 ランボルギーニが2021年に発表した近未来戦略「コル タウリを目指せ」プラン (Cor Tauri=牡牛座α星、もしくは牛の心臓の意。なんならレッドブルF1とも組めばよかったのに! ) の骨子はとてもシンプルだった。

 2023年にブランド初の量産プラグインハイブリッドモデルを発表し、2024年末までに全ラインナップをPHEVとする、という計画である (さらにその先にはBEVの2+2GTを出す予定ではいるが、まだまだ先の話、おそらくは2027年以降だ)。

 最新の情報によると2023年にブランドのプラグインハイブリッド化の先陣を切るのがアヴェンタドールの後継モデルだという。

写真はアヴェンタドール SVJ。「すべてのディテールが、闘牛をシンボルに掲げるランボルギーニのDNAを体現するもの」として掲げられている

 すでにカモフラージュされた開発車両がサンタガータ周辺で頻繁に目撃されており、フラッグシップにふさわしく新開発のV12 (おそらくは排気量をダウンサイズするはず) を積んだPHEVである。

 時を置かずにウルスPHEVも追加グレードとして発表され、2024年に予定されているウラカンのフルモデルチェンジでついに「アルデバラン」(牡牛座α星)へと到達、そんな段取りになるようだ。

 ウラカンのフルモデルチェンジ時期に関しては姉妹モデルであるアウディR8が2024年まで生産されるという情報とも合致する。この後継モデルに積まれるエンジンについてはさまざまな憶測が流れているが、V10でないことは確実。V8、ことによってはV6もあり得る。

 フェラーリとマクラーレンがこぞってV6 PHEVを採用するなか、昔のランボには+2気筒の意地があった。一説によるとまったく新しい高回転型専用エンジンを開発中というが、さてさて先のお楽しみは尽きない。

■内燃機関を讃える

 というわけなので、今年2022年は電動化までの猶予期間、受注ずみモデルをじっくり作っていればよさそうなものだが、のんびり構えるつもりなどさらさらないようだ。

 ランボルギーニは2022年を昨年と同様に、「ピュア内燃機関を讃え、盛大に送る」年にしたいらしい。

 昨年、ランボルギーニは3台のニューモデル (ウラカンSTO、アヴェンタドールウルティメ、カウンタックLPI800-4) を発表し、8405台という史上空前の販売台数を記録した。

昨年発表された3台の1台、ウラカン STO。0-100km/h加速は3.0秒、最高時速310km/h。搭載の5.2L V10エンジンは、最高出力470kW/8000rpmを発揮

 確かに2022年も同程度の台数を生産できる見込み (オーダーベース) がすでに立っている。けれども今年、さらに4台のニューモデルを発表するというから驚かされる (来年への仕込みだ)。アルデバランを目指す前から勢いをいっそう増しておきたいというわけか。

 と、ここまで読んだ目敏い読者諸兄にはすでにお気づきのことだろう。そう、今年登場する4モデルは、まだPHEVではない。

 モデルによっては来年以降でもピュアなエンジン車を買うことができるかもしれない。けれども派生や追加とはいえニューモデルという意味では、電気モーターを積んでいない最後のランボルギーニたちが今年発表されることになる。

■2022年に現れる4種のモデルとは

 では2022年にいったいどんなモデルが4種類も登場するというのだろうか。

 まず昨年来、ステファン・ヴィンケルマンCEOは2022年に登場するニューモデルはウラカンとウルスのバリエーションになる、と言っていた。

 ウラカンはSTOを出したばかりだから、前述したように後継モデルの登場は2024年。最低でも2023年いっぱいはウラカンを生産しなければならない。

 確かに何らかのニュース=カンフル剤が欲しいところで、おそらく今年中に2台のスペシャルバージョンを出すことになるのではないか。もちろんV10自然吸気エンジンで、だ。

 STOスパイダーだけは見たくない (馬鹿げている)。

 けれどもさらに馬鹿げたモデル、車高を上げた「ラリースペシャル」のステラート (コンセプトカー) の市販バージョンなら大いにウェルカムだ。テスト車両のスクープ写真も出回った。大いに期待できそうだ。

 そしてもう一台のウラカンは「大人しいSTO」ではないか。アヴェンタドールのSVJに対するウルティメのような位置づけ。

アヴェンタドール ウルティメのような、ウラカンSTOの「大人しい」派生に期待。ちなみにウルティメ、画像のように大人しい見た目だが、搭載の6.5L V12は574kWを発揮する

 派手なSVJもいいけれど大人しいSVJに乗りたいという要望は意外に多かったらしく、出したウルティメが望外にウケたものだから、大いにあり得る。高級車マーケットが「大人しいデザイン」方向へと向かっているのもまた事実なのだから。

■PHEV適性が高い「ウルス」の動向

 ウルスはどうか。グループではポルシェカイエンやベントレーベンテイガですでに実績もあるため、最もプラグインハイブリッド化の容易なモデルであることは明白。

ランボルギーニウルスのようなSUVは機関搭載の許容量も大きいので、一般的にはPHEV化が容易と言われている。ちなみにウルスの搭載エンジンはV8。「V8を讃えよ」である

 PHEVを先陣切って出してもおかしくないと思っていたが、ブランドイメージとしてウルスから始まるランボの新時代史ではアピール力が物足りない、という判断もあったのだろう。

 それに慌てなくてもウルスはいまだにバカスカ売れている(4年でなんと1万6000台だ)。先日もディーラーで新車発表時と変わらぬコンフィグレーションのスタンダード仕様ウルスの登録前新車を見たほどだ。

 まずは今年中にウルスそのものをマイナーチェンジし、改めて2023年にPHEVグレードの追加となるだろう。それもベンテイガのようなV6ではなく、カイエンと同様にV8のPHEVになることが決まった。

 時間をおくことで、フェラーリ新SUVのスペックなども「気にする」時間が生まれるというものだ。

■「内燃機関への賛辞」の主役がウルスに任されている!?

 では残る1モデルは何だろうか。これもやはりウルスだ。ウラカンペルフォルマンテやアヴェンタドールSVJのウルス版というべき高性能限定バージョンを追加する可能性は大いにあると思うが、どうか。

 希望的観測をすれば、彼らが常に言及する「ヘリテージとの整合性」をそれこそウルスにも適用し、12気筒を積んでいた過去のSUV、LM002に倣ってベンテイガ用W12ツインターボを積んだスペシャルモデルに期待したいところ。

LM002はランボルギーニ版ランクルというようなクルマだ。搭載のV12エンジンもガソリンオクタン価が低い地域を考慮しながら、全幅2m、車重2.7tの巨体を206km/hまで加速させる

 ウラカン最終とは違って、ウルスはまだモデルライフ半ば、派手な仕様が出てきてもおかしくない。

 これぞウルスにおける「内燃機関への賛辞」となるではないか!

■「ランボルギーニは内燃機関に乗っとけ!」と言える3つの理由と内燃機関への賛辞

 というわけでラインナップの全電動化を前に、最後の最後までピュアな内燃機関モデルにこだわり、クルマ好きを盛り上げてくれそうなランボルギーニだが、彼らの作る「ピュアなエンジンカー」はエキサイティングな経験に満ちていると知っているだけに、それが「今年で最後」となるのは惜しいかぎり。

 できるならば今のうちに、否、全ラインナップがPHEVとなってからでも社会が許すかぎり、クラシックモデルでもいい、一度はランボ製ピュア内燃機関モデルを試してみて欲しいと思う。

 ウルスのV8ツインターボはグループ共有エンジンとはいえ最も過激であり、乗ればよくあるV8のイメージとはまるで違ってクルマ好きを虜にするエンジンフィールと力強さに満ちている。2.5トンの車重をまるで感じさせない加速性能の凄まじさに初体験では思わず身がすくんだ。

 それでいて普段の扱いはたやすく、ごく低速の走行も無難にこなす。そのオールマイティさも魅力だ。

 自動車史においておそらくは最後になるであろうV10自然吸気も味わっておくべきエンジンだ。ピエヒの愛した5気筒エンジン最後の縁者。サウンドは独特で、V8ともV12ともまるで異なっている。

 暴力的ではないが、中回転域から力強く回り、パワースペック以上のファストフィールをウラカンにもたらした。

 そして問答無用の12気筒だ。シアンには実はモーターがすでに付いているのだが、バッテリー駆動ではなくスーパーキャパシタを動力源とするもので、あくまでもシフトアップ時のトルク落ちをカバーしつつ加速をアシストするものだった。

 高速域では完全に自然吸気エンジン頼りとなるシアン (そして新型カウンタックも然り) の走りもまたV12 NAらしさに満ちていた。

■スーパーカーの乗り手も世代交代する

 おそらく次世代のPHEVとなっても12気筒エンジンの素晴らしさを味わうことはできるだろう。けれどもバッテリー搭載による重量増は避けられない。

 ヴィンケルマンCEOは「パワーウェイトレシオ(PWR)」信者だから、おそらく、システム総合出力を大幅に上げることでPWRを史上最強に「引き下げ」てくるに違いない。絶対性能でアヴェンタドール、否、シアンさえ上回ってくるはずだ。

筆者試乗時のシアンロードスター。ショーカーのような見た目だが、れっきとした市販車。機関はマイルドハイブリッドというべきものだが、モーターはあくまでもフィーリング改善用だ

 それでも重量増によって失われる物理的な魅力はあるだろう。

 それは、あたかも12気筒エンジン「のみ」を背負って自由自在に走っている、もっと言えば12気筒エンジンそのものにまたがって走っているような感覚、CFRPモノコックボディを得たアヴェンタドールに初めて試乗した時に感じた12気筒エンジンの精密な回転フィールとそれにシンクロする一体感と躍動感にあふれる走りだ。

 アヴェンタドール後継モデルの走りは、おそらくミニブガッティのようなフィールになるのではないか。それはそれでスーパーカーらしい。けれどもすでにエンジンそのものを味わうようなものではない可能性が高い。

 なぜならスーパーカー界はいち早く、環境騒音問題とカスタマーモティベーションの両方の理由からエンジンを捨てる可能性があるからだ。

 バッテリーを積むとはいえ、エンジンがメインの原動力であり続ける次世代モデル群にあっても、プラグインハイブリッド化は事実上、エンジンを捨てる第一歩となることは間違いないと思う。未来への扉が開くというわけだ。

 そしてそれは、スーパーカーの乗り手における世代交代をも意味する。

 つまり、V8、V10、V12という3つのピュアエンジン車が揃い踏みする現行ラインナップこそ、20世紀からのクルマ好きに最も響くスーパーカーたちというわけだった。


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