富士スピードウェイで開幕した2022年シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権。4月9日に行われた第1戦決勝は平川亮(carenex TEAM IMPUL)が優勝し、ディフェンディングチャンピオンの野尻智紀(TEAM MUGEN)が2位で続くなど、2021年に強さをみせたふたりによる優勝争いが繰り広げられた。
一方、2021年に苦戦を強いられたKONDO RACINGも速さをみせ、サッシャ・フェネストラズが3位に入り、チームとしては2020年の第1戦もてぎ以来、2年ぶりの表彰台獲得となった。
2022年シーズンからスーパーGTに加え、スーパーフォーミュラでもリアライズコーポレーションがメインスポンサーとなり、マシンのカラーリングも深みのあるブルーに変わったKONDO RACING。心機一転の2022年シーズンは、開幕前の公式テストから好タイムを記録するなど、順調な仕上がりを見せていた。
開幕前の調子をそのまま維持して、第1戦の予選でも速さをみせたのがフェネストラズ。Q1のBグループで1分21秒744を叩き出しトップ通過を果たすと、Q2でも5番手に食い込み上位グリッドを手にした。決勝ではスタートで一気に2番手に上がると、6周目に平川を抜いてトップに浮上。そこからリードを広げにかかったが、スティント序盤にペースを上げたことが仇となったという。
「2022年はリヤタイヤが変わって、感覚的にはデグラデーションが2021年より早いという印象だった。最初にプッシュをしすぎてしまって、スティントの後半はマネジメントをするのが大変だったよ」
21周目にタイヤ交換を行ったフェネストラズは、前半スティントでの反省を活かし、タイヤマネジメントを意識しながらゴールを目指した。
「タイヤ交換をしたあとは、少し修正して安定した走りができたかなと思う。僕は昨年スーパーフォーミュラで、ほとんどレースができていなかったので、こういったことも勉強になったし、非常に良い経験になった」
2021年はコロナ禍による入国規制の影響を大きく受けたフェネストラズ。現在は水際対策も緩和され、今回は久しぶりに両親が来日して彼を間近で応援していた。両親の前で表彰台に立てたことにフェネストラズも嬉しい様子で「両親に見てもらう表彰台が、これで最後にならないようにしたい」と今後も好結果を狙っていく姿勢をみせた。
約2シーズンにわたって苦戦を強いられていたKONDO RACINGだが、今回の3位表彰台に近藤真彦監督も安堵した様子で「今日の結果に満足しているかというとそうではないですね。でも、昨年のことを考えれば、チームがよくやってくれたなと思います。今日の結果が良いということは、明日に向けて非常に良いデータがあるということ。チームとしてはすごく良い流れできているので、明日のレースがすごく楽しみですね」と、明日の第2戦に向けて期待を膨らませていた。
■「どうしようもない感じ」の山下健太
しかし、もう1台の山下健太に関しては、苦しいシーズン初戦となってしまった。開幕前のテストでは復調の兆しも見えていたが、金曜日に行われた占有走行から違和感を感じていたとのこと。第1戦の予選では自身のミスも重なりQ1のAグループ8番手でノックアウトという結果になった。
「金曜日の占有走行では、走り出しのタイムが1分22秒1で感触的に良いかなと思っていたのですけど、セッション途中でニュータイヤを入れたら、1分22秒7までしか出なくなってしまい……。クルマのセッティングも多少は変えたのですが『そこまでタイムが出なくなるのか?』という感じでした。もし(セッション序盤と)同じセッティングで走っていたとしても、タイムが下がっているのではないかなという印象を受けましたね」
そうして迎えた決勝では早めにタイヤ交換を済ませる作戦で上位進出を目指したが、山下は終始苦しい展開を強いられた。
「いろいろと修正を加えて臨みましたが、今日の予選では自分のミスもありました。ただ、決勝もぜんぜん速くなく、グリップがどんどん落ちてペースが遅くなり……どうしようもない感じです。サッシャ選手のデータも参考にさせてもらっているのですが、同じような状況にはなっていません。今週は運良く明日も予選・決勝とあるので、いろいろと試みて、上位で争えるようにしたいと思います」
「正直、第1戦はいけるかなと思っていたのですが……。スーパーフォーミュラではハマっていますね」と山下。テストで手応えがあっただけに、いつになく落胆した表情を見せた。
近藤監督も山下の結果には、悔しさを感じている様子。「健太は予選でちょっとしたミスもありましたし……すごく細かい話なのですが予選Q1でピットの出し方が、あと10秒早かったら、健太はもう1周アタックできたはずです。うちのチームはピットが入口側にあって、出口側のチームのように、すぐにはコースに出ていけません。そこも踏まえて準備は早めにしておくようにというのは、終わった後のチームのミーティングでも話しました」
「健太も今日は結果が悪かったですけど、速いデータはいっぱい持っているので、それが噛み合えば、彼も上位に浮上する可能性はあると思います」と、明日に向けて期待を寄せていた。
今回の結果をみると、彷徨っていたトンネルから脱出した感はあるのだが、細かい部分をみていくと課題はまだまだある様子のKONDO。実際にフェネストラズも「今回の結果が良かったからと言って、シーズン全体が良くなるかというと、まだ何とも言えない」と慎重な様子だった。
それでも、この週末では大量得点を狙っているのは確かで、「でも、良いスタートが切れたのは確かだから、この調子を維持していきたいし、少なくとも明日はチャンスがあると思ってる。クルマのバランスは良いけど、レースのペースが十分ではない。明日はそこを改善できるようにしたい」とフェネストラズは意気込みを語った。
第1戦はチームメイトで明暗わかれる結果となったが、明日10日に行われる第2戦はどういう展開が待ち構えているのか。その答えが翌日すぐ見られるというのも、2レース制の特徴のひとつなのかもしれない。