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スペイン、イスラエル、マルタ、ドイツでシェアドマイクロモビリティやカーシェアリングの共有サービスを提供しているイスラエルのモビリティ企業GoTo Global(ゴートゥー・グローバル)が、シェルカンパニーNera Tech Media(ネラ・テック・メディア)との合併により、テルアビブ証券取引所(TASE)に上場する。GoToのCEOであるGil Laser(ジル・レイザー)氏によれば、この合併は4月上旬に完了する予定で、まずGoToは、Nera Techが保有する1200万ドル(約13億8000万円)の現金資産にアクセスできるようになり、GoToはこの資金を使って、ドイツでの事業拡大を目指すという。

13年前に設立されたGoToは、2021年秋にドイツのシェアード電動モペット事業者のEmmy(エミー)を買収し、ドイツ市場、特にハンブルグ、ベルリン、ミュンヘンへの参入を果たした。今回のIPOで得た資金は、GoToがドイツで提供している自動車や電動キックスクーター、電動バイクなどの乗り物の充実はもちろん、製品開発にも使われる予定だ。

スタートアップの世界には、未公開企業を合併し公開への道を加速させるための、特別買収目的会社(SPAC)という大きな流れがあるが、今回のNera Techとの取引はそれとは少し違うものだ。シェルカンパニーとの合併は、しばしば「リバースマージャー」と呼ばれ、アクティブな非公開企業が、休眠状態の公開企業(別名シェルカンパニー)の経営権を手に入れて、合併することを意味する。シェルカンパニーとは、通常、IPOプロセスを経たものの、その後事業を売却し、会社の構造(シェル=殻)だけを残した会社だ。

Nera Tech自体は、もともと上場企業であるSomoto(ソモト)が2つに分割された際に設立された。その際Somotoの株式の75%はエネルギーの貯蔵と管理を扱うNostromo(ノストロモ)にという会社に譲渡されている。その一方で、Somotoは映像と音声の広告事業を、Nera Tech Mediaに譲渡し、Nera Tech MediaはTASEに上場した。

いまでもNera Techは、Trinity Audio(トリニティ・オーディオ)というAIを利用したオーディオプラットフォームのスタートアップを所有しているが、レイザー氏は、このTrinity Audioを売却することで、GoToのIPOに向けてより多くの現金を得ることができるという。またTrinityが今後18カ月の間に約3000万ドル(約34億6000万円)で売却できると予想している。GoToが現在保有している1800万ドル(約20億8000万円)の現金資産、Nera Techからの1200万ドル(約13億8000万円)、そしてTrinity社の売却による3000万ドル(約34億6000万円)の見込みを考慮しても、GoToはプレIPOのためにさらに1800万ドル(約20億8000万円)から2000万ドル(約23億1000万円)をVC、エンジェル、ファミリーオフィスから調達する必要があるとレイザー氏は考えている。

新たに生まれる会社の時価総額は1億6300万ドル(約188億円)で、現在のGoToの株主は合併後の会社の株式の74%を取得し、残りの26%はNera Techの株主が手にすることになる。

レイザー氏はTechCrunchに「VCは主にSaaSやテクノロジーに特化したアーリーステージの企業や巨大企業を探しているので、結局現在はVCで資金を調達するよりも、株式公開することが最適だと考えたのです」と語った。「私たちは技術を持っていますが、オペレーションも持っているので、板挟みの状況でした。それでも公開企業になるという決断をしたのは、私たちには強力な製品があり、2年後には市場をリードしているという確信があり、優位性を保つためには速く走る必要があったからです」。

伝統的なIPOではなく、シェルカンパニーとの合併によって株式を公開することにしたのは、いわば良い取引だったからだ、とレイザー氏はいう。彼はGoToが今後2年間の目標をすべて達成し、ビジネスを利益の出るものにするための十分な資金を持っていることを指摘した。合併は、ただIPOへの近道でしかないと彼はいう。

GoToはグローバルではまだ利益を出していないが、イスラエルでは利益を出し、プラスのキャッシュフローを生み出しているとレイザー氏はいう。通常、シェアードビークルの企業が、利益につながる良好なユニットエコノミクス(顧客1人あたりの採算性)を実現するためには、より多くの資金を調達する必要があるが、GoToはそれとは少し異なるやり方をとっている。

5800台の車両を保有し、45万人以上の契約者がアクセスしている同社は、自社用の車両を購入するのではなく、Renault(ルノー)、Toyota(トヨタ)、Nio(ニオ)、Segway(セグウェイ)などの企業と、自動車やモペッドをリースするための覚書を交わしている。現在GoToはマイクロモビリティの車両の大半を所有しているものの、将来的にはそれらのリースも視野に入れている。期間と利用に伴って減価する資産を購入するのではなく、リースを行うことで会社は「さや取り」を行うことができる。つまり、2年間という期間で借り出した資産を、たとえば10分間だけユーザーにまた貸しした際の価格差を利用して利益を得るのだ。

GoToは、このビジネスモデルが収益化への道を加速させると考えており、年末までに3500万ドル(約40億4000万円)の収益を見込んでいる。これは、2021年の収益報告である2200万ドル(約25億4000万円)と比べて58%の増加となる。GoToは、来年末までに1億1600万ドル(約133億8000万円)を上回る年間収益を達成したいとTechCrunchに語ったが 、これは迅速なスケールアップを必要とする高い目標だ。

GoToが今後も拡大していきたいと考えている方向の1つがB2Bだ。現在の顧客のほとんどは、GoToのエコシステムに登録している日々の個人客だが、プラットフォームのユーザー数を倍増させるという目標を達成するために、同社はビジネスを呼び込みたいと考えている。多くの企業が従業員に、毎月旅費や通勤手当を支給しているが、GoToはそれを利用して、それらの企業や従業員のために専用車両を提供し、最終的にはあらゆる車両の長期レンタルを提供したいと考えている。

レイザー氏は「目標は、ターゲット層を増やし、商品の種類を増やすことです」と語る。

長期的には、GoToはエコシステム内のあらゆる種類の輸送を促進したいと考えている。同社は現在、ライドシェア企業とパイロットプロジェクトを行っており、統合のためのアプリを準備している。また、公共交通機関と協力して総合的なエコシステムを構築する方法を模索している。

画像クレジット:GoTo Global

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)