4月9日、2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権の第1戦決勝レースが行われ、3番グリッドスタートの平川亮(carenex TEAM IMPUL)が優勝。6番手スタートからアンダーカットで一時トップに立った野尻智紀(TEAM MUGEN)からトップの座を奪い返し、最終的には5.6秒の差をつける快走で開幕勝利を飾った。
9日9時30分から行われた公式予選と変わらず、強い日差しと追い風に見舞われた富士スピードウェイ。気温23度、路面温度30度というコンディションのなか、14時30分にポールシッターの笹原右京(TEAM MUGEN)が後方に20台の車両を引き連れてフォーメーションラップに入った。
初ポールポジションからの動き出しに大きな注目が集まった笹原だったが、まさかのエンジンストール。さらに、横に並んでいた佐藤蓮(TEAM GOH)も出遅れ、TGRコーナー(1コーナー)にトップで入ったのは平川だった。その後ろでは、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)が、宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)をかわして2番手へ浮上。宮田は混戦の中で関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)の先行も許し、4番手へとドロップした。
このオープニングラップでは、スタート直後の集団のなか、トヨペット100Rコーナーで福住仁嶺(ThreeBond Drago CORSE)がスローダウン。他車との接触があったようで、そのままコースサイドにマシンを止めることとなった。また、スタートでの出遅れを取り返すべく力走していた佐藤がダンロップコーナーでスピンを喫し混乱。その間をすり抜けた大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)が、最後尾から14番手まで大きくジャンプアップを果たしている。
トップを争う平川とフェネストラズ。序盤は追いかけるフェネストラズがペースで勝り、6周目に入ったホームストレートでオーバーテイクシステム(OTS)を作動させると、TGRコーナーでアウト側から一気に平川をオーバーテイクする。しかし、平川も離されることなく、両者の差は1秒程度までしか開かない。そして、10周目、11周目と徐々にその差を削ってきた平川は14周目のTGRコーナーでフェネストラズからトップを奪い返した。フェネストラズもOTSを使いコカ・コーラコーナーまでは食らいつくが、平川はこれを振りきると、フェネストラズとの差をじわじわと広げていった。
熾烈なトップ争いの背後では、ピットウインドウの開いた10周目から中団の選手が次々とタイヤ交換へと向かった。まずは野尻がいち早くピットインし、牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、ジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)が続く。7秒ほどの作業時間でピットアウトした野尻は暫定13番手でコース復帰。その後、11周目には山下健太(KONDO RACING)、大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、三宅淳詞(TEAM GOH)、大嶋和也(docomo business ROOKIE)がピットインを済ませた。
14周目には、タイヤ交換を済ませていない7台に続いて野尻が実質のトップとなる8番手へポジションアップ。トップ平川との差は約42秒まで開いていたが、ハイペースでこの差を削り続ける野尻は、19周目に宮田、20周目には関口、そして21周目にはフェネストラズと、ピットに入ったドライバーたちを次々とTGRコーナーでかわし、アンダーカットを成功させて暫定4番手、実質の2番手まで追い上げを見せていった。
野尻のペースを見ながら、自身もセクターベストを連発させてマージンをキープする平川。25周目を終えるところではタイヤスモークが上がるほどのレイトブレーキでピットロードに入るというぎりぎりを攻めながらピットインし、7.2秒の停車時間でコースに復帰する。ピットアウトしたところではわずかに野尻の前にいた平川だったが、OTSで加速した野尻はTGRコーナーで平川の前へ。ピット作業を済ませていない坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)、佐藤を除き、ディフェンディングチャンピオンがその強さを発揮してついにトップにおどり出る。28周目に坪井が、29周目に佐藤がピットへ向かい、ついに野尻は名実ともに首位に立つが、わずか0.6秒背後には平川が虎視眈々と迫っていた。
ともにOTSの応酬で、TGRコーナーは野尻が守りきるが、コカ・コーラコーナーでは平川がアウト側から並びかけ、サイド・バイ・サイドに。そのまま2台の緊迫したバトルは続いていく。ダンロップコーナーではポジションを守りきった野尻だったが、平川は続く13コーナーでふたたび並びかけ、GRスープラコーナーまでの短い距離で一気に野尻を振りきる。戦略を駆使した野尻に明け渡したトップの座を、平川はコース上のバトルで奪い返すことに成功。これにはピットウォールのチームテントにいたTEAM IMPULの首脳陣も大きくガッツポーズを見せた。
30周目にトップに戻ってきた平川は、そのままフレッシュタイヤでペースアップ。32周目には1分22秒941のファステストラップを記録して野尻を突き放していった。最終的に、平川は5.6秒の差をつけて41周目にトップチェッカー。2021年は届かなかったドライバーズタイトル獲得に向け、幸先のいい開幕勝利を飾った。野尻に続いて3位に入ったのはフェネストラズ。以下、関口、宮田、牧野というトップ6になった。